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序章 ハジマリの刻:綾芽(アヤメ)

あの日も、嫌な朝だった。
梅雨はとっくに過ぎたはずなのに、その日は朝から雷雨だった。
私は、雷の轟音と稲光で目が覚めた。時計の針はまだ5時ちょっと過ぎ。目覚ましが鳴るまで、1時間以上ある。二度寝するにも、雷が気になって仕方がない。
ピカッ!――また窓の外が明るく光る。1……2……3…………ゴロゴロと鈍い音と共に、雷は空から地上に落ちる。
結構近かったなぁ~……
私は空が光ると、無意識のうちに数えてしまう。それも、必ずと言っていいほどだ。雷が好きなわけではない。ただ、あの神秘的な稲光に惹かれているのだ。
ピロピロ……ピロピロ……携帯が鳴っている。この着メロはEメールだ。こんな朝早くに、一体誰だろう……?そう思いながらもメールを開いてみた。
それは、見覚えのないアドレスからのメールだった。私のアドレスを知っている人間は少ない。もともと人付き合いが苦手だから、友達も両手で数えきれるほどしかいないのだ。
チェーンメールか??それにしても、内容が普通のチェーンメールとは少し違っていた。大抵は、出会い系サイトのお知らせみたいな物や、同じ内容のメールを24時間以内に5人に送らなければならないという不幸の手紙モドキが主流のハズ。
しかし、私のところに来たメールには、そういったものとは明らかに違っていた。

『警告 今から1週間以内に、あなたの大切な人を殺します。これは私とあなたで行うゲームです。私が勝つかあなたが勝つかのね……早く私を見つけ出さないと、あなたの大切な人が次々死んでいきますよ?それでは、健闘を祈ります(笑)』

悪戯好きの友達が私をからかう為に送ってきたのだろうと、その時は思った。これから起こる悲惨な事件など、その時は知る由もなかったのだから……

「綾芽、おはよ~!」
教室に入るなり、数少ない友人が声をかけてきた。私はいつもより寝てないせいか、いつになく頭がボ~っとしていた。
「あれ?綾芽さんや~い!?起きてる??」
「ん?あぁ、おはよ、咲羅(サクラ)、眞葵(マキ)」
同じクラスで、唯一私が弱味を見せれる幼馴じみの2人。幼稚園からの15年間、ずっと同じ学校に通っている。
「どうかしたの?綾芽、なんか機嫌悪そうだけど……」
「え?!そう見える?咲羅??」
「かなり機嫌悪い時の顔になってるよ……」
さすがに、今朝のメールには私も機嫌を悪くせずにはいられなかったらしい。
「悪人面になってますゼ、綾芽さん」
悪人面って……そりゃ~、私は咲羅みたいにいつもニコニコしてないし、どっちかというと無愛想だろう。けど、悪人面ではないと思っていたのに……
「元はと言えば、眞葵!アンタが朝早くに変なメールを送ってこなければ、私だって朝からこんな顔――」
「へ?なんのことスか??」
「なんのことって、とぼけんなよ!!」
私は眞葵に軽く肘鉄を食らわせてやった。
「イテテテテ……とぼけてないって!第一、俺今日はまだ一度も綾芽さんにメール送ってないって」
「あくまでもシラをきるつもりかい……眞葵君や」
「だ~か~ら、俺は綾芽さんにメールなんか送ってないよ」
「ねぇ綾芽、どんなメールがきたの?」
咲羅が興味津津とでもいった顔で聞いてきた。
「ん、これだけど……」
私は、二人に今朝着たあのメールを見せた。
「ヤダ……なにこれ……」
「随分とまた恨みを買ってるみたいスね、綾芽さん」
私は他人から恨みを買うようなことをした覚えはない。それに、私よりは眞葵のほうが喧嘩っ早いし、喧嘩相手とか眞葵に惚れた彼女にふられた男に恨みを買ってるハズだ。
「アンタよかマシなハズだよ……」
「眞葵、本当に綾芽に送ってないの?」
「当たり前だろ!いくら俺でも、ここまで悪質ないたずらはしないよ。第一、アドレスだって俺のと違うじゃん?」
「私に送る時に変えて、また元に戻したんじゃね~のか??」
「あのねぇ綾芽さん、俺の携帯はそんな簡単にアドレス変えれないようになってんの!ストーカーとかでもない限り、携帯会社が変えてくれないよ」
「本当かなぁ~?」
「本当だってば……」
「あ……そうだ!綾芽、そのアドレスにメール返信してみたら?」
「ん~……」
「相手のアドレスは携帯のだよね?」
+++++@***.ne.jp――確かに、今一番売れてる携帯会社のアドレスのようだ。
「ということは、ショップに行けば、犯人調べて教えてくれるんじゃないかな?」
「無理だよ、咲羅ちゃん。プライバシーの保護とか言って教えてくれないよ。俺の知り合いがそこのショップで働いてるけど、出会い系の迷惑メールが流行った時に聞いたら、今のこの国の法律じゃ無理だって言われたからね」
「ってことは、結局返信してみるしかないってことか……」
「そ~ゆ~こと」
「随分楽しそうだねぇ~、眞葵は」
「え?だってさ、犯人探しって楽しくない??」
こいつは人の不幸を心底楽しむ奴だ……
「じゃあ、アンタがメール送りなよ……」
「いいよ。綾芽さんの携帯貸して?」
「なんでさ!?」
「だってさ、メアド入れんのめんどいっしょ?」
「ハァ~……」
溜め息を吐きつつ、私は眞葵に携帯を渡した。眞葵はなにやらカタカタ文字を打っている。しかも、かなり楽しそうな顔をしている。
「よし、送るぞ!」
「なんて書いたの?」
「返事がくればわかるよ」
眞葵は送信をし、どんな答えが返ってくるのかとワクワクしている。と、その時私の携帯が鳴った。すかさず眞葵から携帯を取り返した私は、メールを開いて落胆した。
「綾芽、なんてきたの??」
「それが――」
「どれどれ?」
眞葵が私の手から携帯を取り、メールを見て小さな声でクソッと呟いた。
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