ナマエが独り呆気に取られていると、ヒソカは目当ての品が見つかったのか店員と楽しそうに会話していた。
やがてヒソカがショップの袋を片手に戻ってきた時、ナマエは漸く意識をヒソカに戻した。
「お待たせ♠」
「あ……うん。何買ったの？」
「ナマエへのプレゼント♥」
「プレゼント？」
「うん♥」
ヒソカは嬉しそうに笑うと、ナマエの手を取って歩き出した。

その日の夜、ナマエはヒソカの選んだ服に着替えさせられ、高級レストランへと来ていた。
注文は全てヒソカに任せ、ナマエは辺りを見回していた。
場違いな雰囲気。それが第一印象だった。
「乾杯♠」
「……乾杯」
シャンパンのグラスを傾けながら、何故自分が此処にいるのか？と疑問に思うナマエ。
そんなナマエをヒソカは黙って見つめていた。
「何？」
「いや♦相変わらずナマエは可愛いと思ってね♠」
両手を組み、その上に顎を乗せて熱い視線をナマエに送るヒソカ。その姿はどこか魅惑的だった。
「今日のヒソカは……いつも以上に変だね」
「酷いなァ♣」
「思っても無い癖に」
「くくくっ♠」
ヒソカは笑いながら、ナマエの左手を取った。そのまま優しく撫でると、ナマエは薬指に違和感を感じた。
違和感の元を辿ろうと視線を自身の左手に向けるナマエ。
するとそこには、銀色に光り輝くリングが嵌められていた。
「へ？いつの間に……」
「ショッピングに行った時に買ったのさ♥」
「あー……ヒソカがアクセサリーショップで買ってたのって、コレなの？」
「うん♥気に入って貰えたかな？」
ナマエは暫しヒソカと嵌められた指輪を交互に見ると、その表情は次第と驚いたものへと変わっていった。
「気に入るかどうかの前に……どうして？」
「何がだい？」
「指輪……ヒソカがこういうの気にすると思ってなかったから」
「ああ、なる程♠ボクだって気にするさ♣で、どうなの？」
「…………有難う」
「どういたしまして♥」
そのまま指輪を嵌めたナマエの指先に、ヒソカはキスを落とした。
「ヒソカってさ……」
「ん？」
「やる事がいちいちキザだよね」
「そうかい？」
「うん。普通、指にキスはしないでしょ」
「指先へのキスにはちゃんと意味があるんだよ♦」
「へぇ……どんな？」
「“賞賛”だよ♠ボクとって、ナマエは“賞賛”に値する人物だって事♥」
「またそういう事言って……」
呆れ返るナマエを、ヒソカはニコニコとしながら見つめ続けた。

そうしている内に食事も終わり、またナマエはヒソカに手を引かれてホテルへと帰ってきた。
「美味しかったかい？」
「美味しかったけど、あぁいう高いお店は肩が凝る……」
「そう♣ボクにはナマエの作った料理の方が美味しいから、これからはキミにご飯作って貰おうかな♠」
「それって、今までと変わらないじゃない」
「そうだね♥」
「ハァ……ま、いっか」
溜息を零しながらも了承したナマエをヒソカは抱き寄せ、優しく頭を撫でた。
「やっぱり今日のヒソカは変……」
「そうかい？」
「うん」
ヒソカに凭れ掛かりながら、ナマエは呟いていた。
「何かあったの？」
ふと気になっていた疑問を口にするナマエに対し、ヒソカは真面目な顔に変わった。
「これから起こるかもしれないんだ。団長にキミが気に入られたりしたら、堪ったものじゃない」
「あぁ、幻影旅団の？」
「そう。ナマエの【能力】を知られたら、必ずと言っていい程キミに興味を抱くはずだ」
「それは御免被りたいね……」
「だろ？だから護身用の武器を持って欲しかったんだ。ちょっと厄介な団員もいるしね」
「厄介？」
「うん。まず間違いなく、ナマエに攻撃を仕掛けてくるだろう団員が１人いる」
「……マジ？」
「マジ」
どこまでも表情を崩さないヒソカに、ナマエは不安に駆られていく。そんなナマエの表情を読み取って、ヒソカは続けた。