「ぎゃっ」
「ぐっ」
トランプが人間の体に刺さる音が聞こえる。その音を聞きながら、ヒソカは目を細めていた。
実力のある者は避けるか、己の武器でヒソカのトランプを弾いているが、大多数の者が命を落としていく。
「ってえー！！！」
「ひいいいーっ」
「うわあああー！！」
逃げ出していく者がいる中、ヒソカはトランプ攻撃で命を落とさなかった者達へと興味を移した。
「てめェ！！何をしやがる！！」
「くくく♦試験官ごっこ♥二次試験位までは大人しくしてようかと思ったけど、一次試験があまりにタルいんでさ♣選考作業を手伝ってやろうと思ってね♦ボクがキミ達を判定してやるよ♣」
「……」
ヒソカの言葉に、周りの受験生は息を呑んだ。
ナマエは近くの岩に腰を掛けて、黙ってその様子を見ていた。
「判定？くくく、バカめ。この霧だぜ、一度試験官と逸れたら最期。何処に向かったか分からない本隊を見つけ出すなんて不可能だ！！つまり、お前もオレ達も取り残された不合格者なんだよ！！」
叫んだ男の額に、ヒソカのトランプが突き刺さる。
「失礼だな♠」
「お」
「キミとボクを一緒にするなよ♦冥土の土産に覚えときな♣奇術師に不可能はないの♥」
ヒソカが残された受験生の神経を逆撫でした。そのヒソカの発言に触発された受験生達は、各々の武器を構えてヒソカを取り囲んだ。
「ったく……自ら寿命を縮めるとはね」
ナマエの呟きは受験生の耳に届くこと無く、空に消えた。
「殺人狂め。貴様などハンターになる資格なんてねーぜ！」
「二度と試験を受けれない様にしてやる……！！」
「そうだなァ～……キミ達纏めて、これ1枚で十分かな♣」
ヒソカは1枚のトランプを囲んでいる受験生達に見せて挑発した。
「「「ほざけェエー！！」」」
攻撃をしてくる受験生達を華麗に避け、ヒソカは確実にその生命を奪っていく。
「♠」
あまりのスピードに、襲いかかる受験生達は何が起こっているのか理解出来ずにいた。
「「…………」」
「くっくっく、あっはっははァーァ♥」
「チッ……変態に火が点いたか…………」
その様子に、ナマエはうんざりしていた。そして、ヤり過ぎるなと言わなかった事を後悔した。
「うわぁあー！！」
逃げ惑う受験生達もそのトランプで仕留め、残るは輪に加わらなかった者3人のみ。
「残りはキミ達3人だけ♥」
生き残った3人に近づくヒソカは、楽しそうだった。
「ヒソカ、その辺にしときなよ」
呆れたナマエが声を掛けると、ヒソカはそちらに気を取られ隙が出来た。
「今だ！！」
残った3人は、その隙にヒソカへ背を向けるとバラバラに駆け出した。
「なる程、好判断だ♥ご褒美に10秒待ってやるよ♣いーち、にー……」
ヒソカはゆっくりと時間を数えていく。
「きゅーう、じゅーう――さーて、誰と遊ぼうかな……♠」
ヒソカが逃げた3人の誰を追おうか考えていると、霧の向こうから近づいて来る人影が現れた。
「やっぱ駄目だわな。こちとらやられっぱなしで我慢出来る程……気ィ長くねーんだよォオー！！」
「ん～、いい顔だ♦」
「うおおおおお」
殴りかかってきた逃げたはずの青年を素早く避け、その背後に回るヒソカ。
「……」
青年にはいきなりヒソカが消えた様に思えただろう。
ヒソカが青年の後ろからその首を掴もうとしたその時、顔面に何かが大きな音を立てて激突する。
「！？」
青年は何かが飛んで来た方へと視線を移した。
ナマエもその方向へと視線を向けると、黒髪の少年が釣り竿を構えて立っていた。
「ゴン！？」
息を切らしているゴンと呼ばれた少年。ヒソカの興味は、青年からゴンへと移った。
「やるね、ボウヤ♣」
ヒソカに見られ、ゴンは後退った。
ナマエは漸く重い腰を上げて、ヒソカへ近づく。
「釣り竿？面白い武器だね♥ちょっと見せてよ♦」
青年はゴンを守ろうと、ヒソカの背後から殴りかかろうとしていた。
「てめェの相手はオレだ！！」