あまり深く考えず、ナマエはヒソカの後を追った。
駐車場に着くと、ヒソカは１台の車の前で止まった。
「さ、これで行くよ♠」
助手席のドアを開け、ナマエに乗る様に促すヒソカ。
黙って助手席に乗り込むと、ヒソカは優しくドアを閉めて運転席へと乗り込んだ。
「コレ、持っててね♥」
ナマエにG・Iの入ったゲーム機を渡すと、エンジンを掛け車を発進させた。

空港の駐車場を出て暫くした所で、ナマエは不思議そうにヒソカを見た。
「なんだい？」
前を向いたまま、ナマエの視線に気付いたヒソカは問いかけた。
「ボクの顔に何か付いてるのかい？」
「いや……そうじゃなくてさ」
「ん？」
「ヒソカって、高級外車のイメージだったから」
「あぁ、コレはあくまでも一時的なモノだからね♦それに、今から行く所にボクが普段乗る様な車は不自然なんだ♣」
『普段はもっと良い車に乗ってるよ♥』と、何でもない事の様にヒソカは答えた。
今回ヒソカが選んだ車は、どこにでもある様な中古車然りといった見た目の車だった。
「本当なら、ちゃんとした車でナマエとドライブしたいんだけどね♠今回は仕方が無い♣乗り心地悪いけど、我慢してね♦」
ナマエにとっては乗り心地が悪いとは感じないが、ヒソカは違った様だ。
車で走る事3時間。ナマエが乗った車は、市街地を抜けて寂れた廃墟群へと到着した。
「……こんな所にクロロさんがいるの？」
「あぁ♠移動したって連絡もないし、ここにいるハズだよ♦」
ゲーム機を抱き抱えたナマエの手を取り、ヒソカは迷わず廃墟の1つへと足を踏み入れた。
地元の若者が描いたであろう、古びた落書きが壁にあるその様は、ナマエにはどこか時代錯誤の様にも感じられた。
ナマエが落書きに気を取られていると、ヒソカは携帯を取り出していた。
「うん、ボク♥今着いたよ♠……解った♦すぐ行く♣」
通話を終えると、いまだに落書きに見入っているナマエを促し、ヒソカは階段を登っていく。
「足元、気をつけてね♣」
「うん」
ナマエを気遣いながらも、ヒソカの足取りに迷いはなかった。
階段を登り終えると、1つの部屋であった空間へと入る。
「クロロさん！？」
「久しぶりだな、ナマエ」
部屋の隅にある瓦礫の上に、懐かしい男の姿を確認したナマエはヒソカの後ろから駆け出していた。
「久しぶり！って、何でこんな廃墟にいるのさ？」
「一応A級賞金首だからな。普通の宿屋だと落ち着かないんだ」
ナマエの頭を撫でてやりながら、クロロは柔らかく微笑んだ。
「それに、こっちの方が何かあった時に動きやすい」
「なる程……クロロさんも大変なんだね」
『納得』と言いながら、ナマエは頷いていた。
「クロロ、あまりボクのナマエと馴れ馴れしくしないでくれないかい？」
「くくくっ。男の嫉妬は見苦しい、と以前言ったハズだが？」
「見苦しくても構わない♦ボクのナマエから離れてくれ♣」
敵意を剥き出しているヒソカに苦笑しながら、クロロはナマエの頭から手を退けた。
「で、【除念】方法が見つかったと言うのは本当か？」
「あァ♠明日から早速取り掛かるよ♥」
「それにしても……よく見つけたな、【除念】方法なんて」
「ボクの勘が正しければ、キミの【除念】が出来る【除念師】はこのゲームの中にいる♦」
「ゲームの……中？」
ヒソカの言葉に、クロロの近くに立っていたナマエはその胸に抱いているゲーム機に視線を落とした。
「クロロから聞いた話から察するに、このゲームは現実世界にそのフィールドがある♣」
「そんな事って、有り得るの？」
「念能力を使えば、出来なくはないな」
「ナマエだって、やろうと思えば出来ると思うよ♥キミの能力は【チート】だし♠」
「ほぅ……興味があるな」
「いやいや、興味持たないで」
ヒソカの言葉に、クロロは興味津々といった表情でナマエを見た。