奇劇
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「そう仰らず……少し外へ」
セバスチャンが握ったウィリアムの手首はミキミキと嫌な音を立てている。
そんな攻防に負けたのはウィリアムだった。
「――まったく。ロンドン地区は只でさえ人員不足だというのに、回収課に1名欠員が出たせいで管理課の私が現場に駆り出される事になるとはとんだ災難です」
訓練場から出た3人は、辺りに人が居ないことを確認したうえで話しだした。
「それで、そんなお忙しい死神(あなた)が何故この様な処へ?」
「謹慎処分中のクズ派遣員の尻拭いですよ。特別手当もつかないのに、《アレ》と同期というだけでドサ回りをさせられるとは思いませんでした」
「死神がわざわざ潜入調査に来ているという事は、何か特別な事情でも?」
「魂に関する情報を悪魔に教えるわけがないでしょう。肉食獣の前に兎を放り出す行為に等しい」
デスサイズを持ち直しながら、ウィリアムはセバスチャンを見遣った。
「あいにくながら、私は安物の魂には興味がありませんので」
「飢えた悪魔がよく言うものだ。本当は腹が減ってしょうがないくせに」
「手当たり次第に喰い散らかす様な真似はとっくに飽きましたよ。空腹なら空腹な程、晩餐(ディナー)は美味しいものです」
「悪趣味な……」
「お宅のクズ派遣員には負けますよ。それに今の私は《首輪付き》ですからご安心下さい」
クスッと笑みを溢しながら、セバスチャンは左手の甲にある契約印を見せた。
「…………いいでしょう。一番の害悪が“仕事の前”に現れたんです。釘を刺しておくとしましょう」
持ち上げていたデスサイズを降ろすと、ウィリアムは話しだした。
「死神(われわれ)の仕事は配布された魂の回収リストに基づき、死亡予定者を審査する事。死神の鎌(デスサイズ)で一人一人の記憶……走馬灯(シネマティックレコード)をチェックし、死に値するかどうかを判断します。そんな我々の努力も知らずつまみ喰いする鴉が悪魔(あなたがた)です。はっきり言いましょう。近日中にこの近辺で大量の魂を審査します。今回は特別なケースですので、邪魔だけはご遠慮願います」
「!」
ウィリアムの言葉にセバスチャンは僅かに反応を示した。
「それはそれは、お一人では大変でしょう。しかし、大量の魂……悪魔(わたし)がお手伝いしてさしあげましょうか?」
セバスチャンの放った言葉に、ウィリアムはデスサイズを振るった。
しかし、セバスチャンはそれを難なく躱した。
「サービス残業は許せない。邪魔をするなら狩りますよ」
「私も好き好んで死神に関わりたい訳ではありませんから」
デスサイズに挟み取られた帽子を、縮んできたデスサイズの切っ先から受け取るセバスチャン。
「安物の魂には興味がありませんしね」
「そこら辺にしときなよ。でないと――」
ナマエの影が蠢きだした所で、3人を止める声が聞こえた。
「おい!」
声に振り返ると、そこには不機嫌になっているシエルがいた。
「あの煩いナイフ投げが呼んでる」
「そんな高級品には見えませんが……まったく悪魔というのは……」
「お前」
つかつかと歩み寄ってくるシエルは、ウィリアムに向かって言い放った。
「ここでその呼び方はよせ。サーカスの連中に不審がられたらどうしてくれる。さっきは冗談で済んだからいいようなものの……人間の中に溶けこめないとは、あの下品な死神以下だな。はッ」
「全くです。私共も貴方の仕事をお邪魔しませんので、こちらの仕事も邪魔しないで頂きましょうか」
「ありがたい。こちらとしては貴方がたなど視界に入れたくもないので」
「丁度いい。では、今後一切お互いに干渉しないということで決まりだな」
3人の間に火花が散った。
「いい加減に……しろッ!仲良くしろとは言わん!だけど、余計な諍いは起こすんじゃない!!」
ゆらり、と影を蠢かせながら言うナマエの言葉に3人は一瞬黙った。
「ではスマイル、飼い犬の手綱をしっかり握っているよう頼みます」
「満足に潜入もできないメガネに言われたくないな」
「メガネではありません。スーツです」
セバスチャンが握ったウィリアムの手首はミキミキと嫌な音を立てている。
そんな攻防に負けたのはウィリアムだった。
「――まったく。ロンドン地区は只でさえ人員不足だというのに、回収課に1名欠員が出たせいで管理課の私が現場に駆り出される事になるとはとんだ災難です」
訓練場から出た3人は、辺りに人が居ないことを確認したうえで話しだした。
「それで、そんなお忙しい死神(あなた)が何故この様な処へ?」
「謹慎処分中のクズ派遣員の尻拭いですよ。特別手当もつかないのに、《アレ》と同期というだけでドサ回りをさせられるとは思いませんでした」
「死神がわざわざ潜入調査に来ているという事は、何か特別な事情でも?」
「魂に関する情報を悪魔に教えるわけがないでしょう。肉食獣の前に兎を放り出す行為に等しい」
デスサイズを持ち直しながら、ウィリアムはセバスチャンを見遣った。
「あいにくながら、私は安物の魂には興味がありませんので」
「飢えた悪魔がよく言うものだ。本当は腹が減ってしょうがないくせに」
「手当たり次第に喰い散らかす様な真似はとっくに飽きましたよ。空腹なら空腹な程、晩餐(ディナー)は美味しいものです」
「悪趣味な……」
「お宅のクズ派遣員には負けますよ。それに今の私は《首輪付き》ですからご安心下さい」
クスッと笑みを溢しながら、セバスチャンは左手の甲にある契約印を見せた。
「…………いいでしょう。一番の害悪が“仕事の前”に現れたんです。釘を刺しておくとしましょう」
持ち上げていたデスサイズを降ろすと、ウィリアムは話しだした。
「死神(われわれ)の仕事は配布された魂の回収リストに基づき、死亡予定者を審査する事。死神の鎌(デスサイズ)で一人一人の記憶……走馬灯(シネマティックレコード)をチェックし、死に値するかどうかを判断します。そんな我々の努力も知らずつまみ喰いする鴉が悪魔(あなたがた)です。はっきり言いましょう。近日中にこの近辺で大量の魂を審査します。今回は特別なケースですので、邪魔だけはご遠慮願います」
「!」
ウィリアムの言葉にセバスチャンは僅かに反応を示した。
「それはそれは、お一人では大変でしょう。しかし、大量の魂……悪魔(わたし)がお手伝いしてさしあげましょうか?」
セバスチャンの放った言葉に、ウィリアムはデスサイズを振るった。
しかし、セバスチャンはそれを難なく躱した。
「サービス残業は許せない。邪魔をするなら狩りますよ」
「私も好き好んで死神に関わりたい訳ではありませんから」
デスサイズに挟み取られた帽子を、縮んできたデスサイズの切っ先から受け取るセバスチャン。
「安物の魂には興味がありませんしね」
「そこら辺にしときなよ。でないと――」
ナマエの影が蠢きだした所で、3人を止める声が聞こえた。
「おい!」
声に振り返ると、そこには不機嫌になっているシエルがいた。
「あの煩いナイフ投げが呼んでる」
「そんな高級品には見えませんが……まったく悪魔というのは……」
「お前」
つかつかと歩み寄ってくるシエルは、ウィリアムに向かって言い放った。
「ここでその呼び方はよせ。サーカスの連中に不審がられたらどうしてくれる。さっきは冗談で済んだからいいようなものの……人間の中に溶けこめないとは、あの下品な死神以下だな。はッ」
「全くです。私共も貴方の仕事をお邪魔しませんので、こちらの仕事も邪魔しないで頂きましょうか」
「ありがたい。こちらとしては貴方がたなど視界に入れたくもないので」
「丁度いい。では、今後一切お互いに干渉しないということで決まりだな」
3人の間に火花が散った。
「いい加減に……しろッ!仲良くしろとは言わん!だけど、余計な諍いは起こすんじゃない!!」
ゆらり、と影を蠢かせながら言うナマエの言葉に3人は一瞬黙った。
「ではスマイル、飼い犬の手綱をしっかり握っているよう頼みます」
「満足に潜入もできないメガネに言われたくないな」
「メガネではありません。スーツです」