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「わかりますか?ナイフとフォークを使わないファントム社のカリーは誰にでも食べ易く……そう、子供でも食べ易いように配慮されているのです。誰でも気軽に……富める者も貧しい者も、大人も子供も平等に。その優しさこそが新世紀を目前に控えた英国には必要なのです。子供(未来)を大切にするファントム社の精神を私は評価したい。よって、この品評会の優勝者はファントム社といたします!」
「そ……そんな……」
女王の決定にウエストは膝を崩し項垂れるしかなかった。
「でかしたぜセバスチャン!」
「さすがですだ~!」
「坊っちゃんとナマエさんもどうぞ!一緒に食べましょうよ!」
「ありがと、フィニ。ね?言ったでしょ、シエル。セバスチャンが負けるわけないって」
したり顔で言うナマエにシエルは舌打ちした。
「おめでとうございます、セバスチャンシェフ!何かお言葉を!!」
「私はシェフではありません。あくまで執事ですから」
クスリと笑いながらセバスチャンは答えていた。
「私が……負け……た……」
「アグニさん……だったかしら?貴方のカリーも決して味では負けていませんでした。ワイト島の宮殿でゆっくりと頂きたいカリーでした」
「勿体ない……お言葉です」
アグニはセバスチャンに負けたことにかなりのショックを受けていた。
「俺の計画が……ロイヤルワラントが……」
「だんな様!」
あまりのショックにふらつくウエストに駆け寄る女性が一人。
その女性を見るなり、ソーマは叫んだ。
「ミーナ!!?」
「え……?」
いきなり名を呼ばれ、女性は振り返った。アグニはその事に焦っていた。
「ソーマ……様……?」
「やっと……やっと見つけた……!!ミーナ……!!」
ソーマはミーナを抱き締め、涙を浮かべた。
「捜したんだぞ!ずっとずっと。お前が英国に連れ去られてどれだけ心配したか。やっと……やっと会えた。もう心配いらない。一緒に城に帰ろう!」
「王子……っ」
感動の再会、と誰もが思っていただろう。
しかし、ミーナの次の一言によってその思いは崩れ去った。
「馬っ鹿じゃないの?」
「え……?」
時間が止まる、とは正にこの事を言うのだろう。ソーマとミーナの間で一瞬時が止まった。
「こんな所まで追ってきて人の邪魔して、何様のつもり!?一緒に帰る?笑わせないでよ。誰があんな所に帰るもんですか」
「あ……ああ……」
ミーナの言葉に崩れ落ちるアグニ。
「……貴方は……《これ》を隠したかったのですね」
セバスチャンは全てを悟った。アグニが主人から離れてまでウエストに加担していた理由を。
「一生を身分階級に縛られて生きていくなんてごめんよ。せっかくインドから抜け出せたっていうのに!」
「じゃあお前は望んでウエストと……」
「そうよ。ただの召使いと金持ちの妻、どっちがいいかなんて子供でもわかる。それにね、我が侭なアンタの面倒を見るのはもうたくさん!」
シエル達は黙って成り行きを見守っている。唯一人、アグニだけが蹲って泣いていた。
「――そうか。悪かった。あんなに一緒だったのに、俺は少しもミーナの気持ちをわかってなかったんだな。ミーナの迷惑も考えず英国まで追いかけて来てすまなかった。それから……今までありがとう」
ソーマは泣きじゃくるわけでもなく、悲しそうに笑うとミーナから離れた。
「俺は今まで他人(ヒト)のせいにばかりしてきた。宮殿に独りなのは親父様と母上のせい。ミーナがいなくなったのはウエストのせい。だけど違ったんだ」
ソーマはそのまま歩き、言葉を紡いだ。
「親のスネかじりのクセに文句ばかりの俺のせいだったんだ。そんなガキ、誰も愛するわけがない。だけど、だけどお前はこんな俺の傍に居てくれたんだな。俺から離れてもずっと。今まで苦労ばかりかけてすまなかった。また俺の傍で俺のカーンサマーでいてくれるか?アグニ」
ソーマは蹲り泣いているアグニの目の前まで行き、申し訳なさそうに聞いた。
「ジョー・アーギャー……」
「そ……そんな……」
女王の決定にウエストは膝を崩し項垂れるしかなかった。
「でかしたぜセバスチャン!」
「さすがですだ~!」
「坊っちゃんとナマエさんもどうぞ!一緒に食べましょうよ!」
「ありがと、フィニ。ね?言ったでしょ、シエル。セバスチャンが負けるわけないって」
したり顔で言うナマエにシエルは舌打ちした。
「おめでとうございます、セバスチャンシェフ!何かお言葉を!!」
「私はシェフではありません。あくまで執事ですから」
クスリと笑いながらセバスチャンは答えていた。
「私が……負け……た……」
「アグニさん……だったかしら?貴方のカリーも決して味では負けていませんでした。ワイト島の宮殿でゆっくりと頂きたいカリーでした」
「勿体ない……お言葉です」
アグニはセバスチャンに負けたことにかなりのショックを受けていた。
「俺の計画が……ロイヤルワラントが……」
「だんな様!」
あまりのショックにふらつくウエストに駆け寄る女性が一人。
その女性を見るなり、ソーマは叫んだ。
「ミーナ!!?」
「え……?」
いきなり名を呼ばれ、女性は振り返った。アグニはその事に焦っていた。
「ソーマ……様……?」
「やっと……やっと見つけた……!!ミーナ……!!」
ソーマはミーナを抱き締め、涙を浮かべた。
「捜したんだぞ!ずっとずっと。お前が英国に連れ去られてどれだけ心配したか。やっと……やっと会えた。もう心配いらない。一緒に城に帰ろう!」
「王子……っ」
感動の再会、と誰もが思っていただろう。
しかし、ミーナの次の一言によってその思いは崩れ去った。
「馬っ鹿じゃないの?」
「え……?」
時間が止まる、とは正にこの事を言うのだろう。ソーマとミーナの間で一瞬時が止まった。
「こんな所まで追ってきて人の邪魔して、何様のつもり!?一緒に帰る?笑わせないでよ。誰があんな所に帰るもんですか」
「あ……ああ……」
ミーナの言葉に崩れ落ちるアグニ。
「……貴方は……《これ》を隠したかったのですね」
セバスチャンは全てを悟った。アグニが主人から離れてまでウエストに加担していた理由を。
「一生を身分階級に縛られて生きていくなんてごめんよ。せっかくインドから抜け出せたっていうのに!」
「じゃあお前は望んでウエストと……」
「そうよ。ただの召使いと金持ちの妻、どっちがいいかなんて子供でもわかる。それにね、我が侭なアンタの面倒を見るのはもうたくさん!」
シエル達は黙って成り行きを見守っている。唯一人、アグニだけが蹲って泣いていた。
「――そうか。悪かった。あんなに一緒だったのに、俺は少しもミーナの気持ちをわかってなかったんだな。ミーナの迷惑も考えず英国まで追いかけて来てすまなかった。それから……今までありがとう」
ソーマは泣きじゃくるわけでもなく、悲しそうに笑うとミーナから離れた。
「俺は今まで他人(ヒト)のせいにばかりしてきた。宮殿に独りなのは親父様と母上のせい。ミーナがいなくなったのはウエストのせい。だけど違ったんだ」
ソーマはそのまま歩き、言葉を紡いだ。
「親のスネかじりのクセに文句ばかりの俺のせいだったんだ。そんなガキ、誰も愛するわけがない。だけど、だけどお前はこんな俺の傍に居てくれたんだな。俺から離れてもずっと。今まで苦労ばかりかけてすまなかった。また俺の傍で俺のカーンサマーでいてくれるか?アグニ」
ソーマは蹲り泣いているアグニの目の前まで行き、申し訳なさそうに聞いた。
「ジョー・アーギャー……」