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審査員は恐る恐るカリーパンを口に運んだ。
「口の中で爆ぜる!これは美味い!油で揚げたパンのサクサクの表面とフワフワの中身。そして最後のとろりとしたカリーが見事な食感のグラデーションを形成している。何より素晴らしいのは、パンの中にカリーを“閉じ込める”この構造だ。旨み・香り全てを文字通り閉じ込め、ナイフを入れた瞬間全てが開花する!!さらにカリーに入ったチキンが歯応えとボリューム感をプラスする。これは完全に料理だよ」
「おお……おおっ……夜会で出逢った可憐な美少女。昼間は子供っぽく囀る悪戯な駒鳥。でも夕暮れの君は真実の顔を覗かせる。仮面の下は蠱惑的な微笑。其処に居たのは一人の女(レディ)。私は……君を抱き締めてしまいたい!!斬新なアイディアと確かな品質。実にファントム社らしい革新的なカリーだ!!」
「ありがとうございます」
盛大に沸き立つ会場の中、シエルだけ鳥肌を立てていた。
「さあさあ、お待ちかねのご試食タイムです!お好きなカリーをお召し上がりください」
観客が気になるカリーを食し、審査員はどのカリーを優勝とするか話し合っていた。
「お待たせ致しました。話し合いを重ねた結果、此度の品評会の優勝者は……ハロルド・ウエスト社、ファントム社、両者の同着優勝とさ――」
司会者が同着優勝と言い切ろうとした時だった。
スパンッという音と共にムチでトロフィーが司会者の手から消えた。
「……あ?」
「お待ちを」
ムチの持ち主である青年がトロフィーを手に取り、勝負に待ったをかける。
突然の事態に会場は驚きを隠せなかった。
「その勝ぶ」
言葉を紡いでいる途中で、青年は馬に踏みつけられた。
その馬に乗っていたのは老女であった。
「誰だ?あのファンキーなバァさん」
「あれは……」
「本当に来るとはね……」
ナマエがポツリと呟き、老女の姿を見るなりシエルは駆け出していた。
「女王陛下!何故この様な場所へ!?」
「「「じょ……」」」
「ごきげんよう、皆さん」
「「「女王陛下ぁあ!?」」」
英国史上最も輝かしい時代を築いたヴィクトリア女王。世界中に植民地を広げ英国を“太陽の沈まない国”と呼ばれる程に発展させた政治的手腕だけではなく、服や行事・ダンスに至るまで様々な流行を発信させ国民に絶大な人気を誇っている。夫であるアルバート公が亡くなった今も彼を深く愛しており、シエルの大好きな“暴れん坊伯爵”のモデルになったとの噂もある。
「女王からお話があるそうです」
青年は馬に踏みつけられていたにもかかわらず、何事もなかったかのようにむくりと起き上がった。
「このカリー対決、とても素晴らしかった。ありがとうジョン」
馬から下りながら女王は続けた。
「会場に満ちる香りに、ワイト島でアルバートと食べたカリーを思い出しました……アルバートォオオ。このカリーも一緒に食べたかったぁああああああ」
「陛下、お気を確かに」
懐中時計に入れてあるアルバート公の写真を見て泣き崩れる女王。
「女王様って結構キャラ濃いんだね」
「言うな。だから出て来るなって言ったのに」
「ヴィクトリアゲンキダシテ、ボクアルバートダヨ」
棒読み+アルバート公の人形を使いジョンと呼ばれた青年が女王を慰めている。
「アルバートォそこにいるのねぇ」
「陛下、アルバート様がついてますよ」
「この勝負、審査員として招待状を頂いた私にも一票はあるのよね?」
涙を拭うと、女王は壇上へ歩き出した。
「私が選ぶのは――ファントム社の執事セバスチャン、貴方よ」
トロフィーをセバスチャンに渡しながら、女王は勝者を宣言した。
「な!!!?な、何故です!?あんなカリーを詰めたドーナツより、我が社のカリーが劣っていると!?」
「あれをご覧なさい」
ウエストの抗議は女王に聞き入れて貰えはしなかった。
何故なら、女王の指差した先に答えがあったからだ。
「口の中で爆ぜる!これは美味い!油で揚げたパンのサクサクの表面とフワフワの中身。そして最後のとろりとしたカリーが見事な食感のグラデーションを形成している。何より素晴らしいのは、パンの中にカリーを“閉じ込める”この構造だ。旨み・香り全てを文字通り閉じ込め、ナイフを入れた瞬間全てが開花する!!さらにカリーに入ったチキンが歯応えとボリューム感をプラスする。これは完全に料理だよ」
「おお……おおっ……夜会で出逢った可憐な美少女。昼間は子供っぽく囀る悪戯な駒鳥。でも夕暮れの君は真実の顔を覗かせる。仮面の下は蠱惑的な微笑。其処に居たのは一人の女(レディ)。私は……君を抱き締めてしまいたい!!斬新なアイディアと確かな品質。実にファントム社らしい革新的なカリーだ!!」
「ありがとうございます」
盛大に沸き立つ会場の中、シエルだけ鳥肌を立てていた。
「さあさあ、お待ちかねのご試食タイムです!お好きなカリーをお召し上がりください」
観客が気になるカリーを食し、審査員はどのカリーを優勝とするか話し合っていた。
「お待たせ致しました。話し合いを重ねた結果、此度の品評会の優勝者は……ハロルド・ウエスト社、ファントム社、両者の同着優勝とさ――」
司会者が同着優勝と言い切ろうとした時だった。
スパンッという音と共にムチでトロフィーが司会者の手から消えた。
「……あ?」
「お待ちを」
ムチの持ち主である青年がトロフィーを手に取り、勝負に待ったをかける。
突然の事態に会場は驚きを隠せなかった。
「その勝ぶ」
言葉を紡いでいる途中で、青年は馬に踏みつけられた。
その馬に乗っていたのは老女であった。
「誰だ?あのファンキーなバァさん」
「あれは……」
「本当に来るとはね……」
ナマエがポツリと呟き、老女の姿を見るなりシエルは駆け出していた。
「女王陛下!何故この様な場所へ!?」
「「「じょ……」」」
「ごきげんよう、皆さん」
「「「女王陛下ぁあ!?」」」
英国史上最も輝かしい時代を築いたヴィクトリア女王。世界中に植民地を広げ英国を“太陽の沈まない国”と呼ばれる程に発展させた政治的手腕だけではなく、服や行事・ダンスに至るまで様々な流行を発信させ国民に絶大な人気を誇っている。夫であるアルバート公が亡くなった今も彼を深く愛しており、シエルの大好きな“暴れん坊伯爵”のモデルになったとの噂もある。
「女王からお話があるそうです」
青年は馬に踏みつけられていたにもかかわらず、何事もなかったかのようにむくりと起き上がった。
「このカリー対決、とても素晴らしかった。ありがとうジョン」
馬から下りながら女王は続けた。
「会場に満ちる香りに、ワイト島でアルバートと食べたカリーを思い出しました……アルバートォオオ。このカリーも一緒に食べたかったぁああああああ」
「陛下、お気を確かに」
懐中時計に入れてあるアルバート公の写真を見て泣き崩れる女王。
「女王様って結構キャラ濃いんだね」
「言うな。だから出て来るなって言ったのに」
「ヴィクトリアゲンキダシテ、ボクアルバートダヨ」
棒読み+アルバート公の人形を使いジョンと呼ばれた青年が女王を慰めている。
「アルバートォそこにいるのねぇ」
「陛下、アルバート様がついてますよ」
「この勝負、審査員として招待状を頂いた私にも一票はあるのよね?」
涙を拭うと、女王は壇上へ歩き出した。
「私が選ぶのは――ファントム社の執事セバスチャン、貴方よ」
トロフィーをセバスチャンに渡しながら、女王は勝者を宣言した。
「な!!!?な、何故です!?あんなカリーを詰めたドーナツより、我が社のカリーが劣っていると!?」
「あれをご覧なさい」
ウエストの抗議は女王に聞き入れて貰えはしなかった。
何故なら、女王の指差した先に答えがあったからだ。