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その言葉にシエルは隠すことなく舌打ちした。
「すごいぞシエル!お前のカーンサマーはたった1週間で神のカリーに追いついた。こいつならもしかしてアグニに――」
「残念だが、このままでは奴らに勝てない。“追いつくこと”と“勝つこと”は違う。お前は今ようやく神のカリーと互角に戦える状況になっただけだ。そうだろう?セバスチャン」
「ええ。《現時点》ではそうなりますね」
焦ることなくシエルの言葉に答えるセバスチャン。その顔には余裕さえ伺い知れた。
「その顔は何か秘策があるんだね、執事君?」
「ええ」
「嘘はないな?」
「もちろん。私は嘘をつきません。ファントムハイヴ家執事の名にかけて、必ず我が社にロイヤルワラントを!」
「アグニのカリーに並んだだけでなく、さらに勝ってみせるだと……!?カーンサマー、お前には何か秘策があるっていうのか?」
「ええ」
品評会当日。
「うわーっ。あの大きな生き物はなんですか!?」
「あれはゾウといってな、神聖な生き物だ。俺の城でも飼ってるぞ、10頭くらい」
「スゲーな!!ペットかよ!」
「あんな大きいの家で飼ってるですだか!?」
シエルは使用人達も引き連れてクリスタルパレスに来ていた。
「貴方がたはあまり遠くに行かない様にして下さいよ」
溜息混じりのセバスチャン。
「やぁ伯爵。とうとう本番だね」
「《得意先》の前で女連れかお前は」
シエルが声の方に視線を送ると、藍猫を抱いた劉がいた。
「やだなー。藍猫は私の小妹(いもうと)だよ、小妹。血は繋がってないけどね。かわいいでしょー。今回の品評会は観客にもカリーがふるまわれるらしいから、この子にも食べさせてあげられるかなと思って。それにしても、王子様の執事君は本気かね?」
「神とまで思っている主人を裏切ったんだ。本気なんだろう」
「しかし王子様のためとはいえ、計画遂行後に女の子を返してもらえるなんて我は絶対ウソだと思うけどなあ」
「まあな。計画遂行後にアグニを開放すればせっかくロイヤルワラントを得ても自分の悪行が外に漏れる可能性が高くなる。僕なら……」
「殺す?」
突然物騒な事を言う劉には溜息しか出てこない。
「《これくらい》のことでいちいち殺すわけがないだろう」
「えー。我ならヤッちゃうけどなあ……ま、そんなことより我が気になってるのは今日の執事君の作戦なんだけど」
「それは――」
「これはこれは、ファントムハイヴ卿じゃありませんか!」
「……ああ、ウエスト殿」
「お久しぶりです!昨年のシーズン以来ですかね。またお目にかかれて光栄です!」
セバスチャンの発言を遮って現れたのは、諸悪の根源であるウエストだった。
ウエストの姿を確認するなり、ソーマは展示されている木陰に隠れてしまった。
「相変わらず仕立ての良いコートをお召しだ。伯爵ほどの地位の方がお召しになるのはどのブランドですかな?」
「服は執事にまかせきりでブランドにはあまり興味がなくてね」
「またまたそんな!はっはっは!そういえば、今日の品評会に御社も出場なさるとか?」
「ああ……今度食品事業にも手を広げようと思っててな」
「カリー品評会にご出席なさるとは驚きましたよ。腕のいいシェフでもヘッドハントされたんですか?」
厭味ったらしい言い方をするウエストをナマエは好きになれない。
(早く《始末》しちゃいたい……でも……まずは思い知らせなくちゃ……)
「我が社も負けていられません。凄腕のシェフを雇っているんです」
「へえ……」
「ここだけの話、この間なんかライバル社のスパイが入りましてね。一点物のガレイのランプは割られるわ、ジェネラル・トレーディングのチェストは壊されるわで大変だったんですよ!」
シエルに耳打ちしながら、ウエストは震えた。
「思い出しても恐ろしい!秘伝のカリーは死守しましたが、この会場に犯人がいると思うと寒気がしますよ。それより、今日は女王陛下がいらっしゃると小耳に挟んだのですが……」
妙にそわそわしながら、ウエストは事の真偽をシエルに聞いた。
「さあ?陛下はアルバート公が亡くなられてから、あまり公の場にいらっしゃらないから」
「すごいぞシエル!お前のカーンサマーはたった1週間で神のカリーに追いついた。こいつならもしかしてアグニに――」
「残念だが、このままでは奴らに勝てない。“追いつくこと”と“勝つこと”は違う。お前は今ようやく神のカリーと互角に戦える状況になっただけだ。そうだろう?セバスチャン」
「ええ。《現時点》ではそうなりますね」
焦ることなくシエルの言葉に答えるセバスチャン。その顔には余裕さえ伺い知れた。
「その顔は何か秘策があるんだね、執事君?」
「ええ」
「嘘はないな?」
「もちろん。私は嘘をつきません。ファントムハイヴ家執事の名にかけて、必ず我が社にロイヤルワラントを!」
「アグニのカリーに並んだだけでなく、さらに勝ってみせるだと……!?カーンサマー、お前には何か秘策があるっていうのか?」
「ええ」
品評会当日。
「うわーっ。あの大きな生き物はなんですか!?」
「あれはゾウといってな、神聖な生き物だ。俺の城でも飼ってるぞ、10頭くらい」
「スゲーな!!ペットかよ!」
「あんな大きいの家で飼ってるですだか!?」
シエルは使用人達も引き連れてクリスタルパレスに来ていた。
「貴方がたはあまり遠くに行かない様にして下さいよ」
溜息混じりのセバスチャン。
「やぁ伯爵。とうとう本番だね」
「《得意先》の前で女連れかお前は」
シエルが声の方に視線を送ると、藍猫を抱いた劉がいた。
「やだなー。藍猫は私の小妹(いもうと)だよ、小妹。血は繋がってないけどね。かわいいでしょー。今回の品評会は観客にもカリーがふるまわれるらしいから、この子にも食べさせてあげられるかなと思って。それにしても、王子様の執事君は本気かね?」
「神とまで思っている主人を裏切ったんだ。本気なんだろう」
「しかし王子様のためとはいえ、計画遂行後に女の子を返してもらえるなんて我は絶対ウソだと思うけどなあ」
「まあな。計画遂行後にアグニを開放すればせっかくロイヤルワラントを得ても自分の悪行が外に漏れる可能性が高くなる。僕なら……」
「殺す?」
突然物騒な事を言う劉には溜息しか出てこない。
「《これくらい》のことでいちいち殺すわけがないだろう」
「えー。我ならヤッちゃうけどなあ……ま、そんなことより我が気になってるのは今日の執事君の作戦なんだけど」
「それは――」
「これはこれは、ファントムハイヴ卿じゃありませんか!」
「……ああ、ウエスト殿」
「お久しぶりです!昨年のシーズン以来ですかね。またお目にかかれて光栄です!」
セバスチャンの発言を遮って現れたのは、諸悪の根源であるウエストだった。
ウエストの姿を確認するなり、ソーマは展示されている木陰に隠れてしまった。
「相変わらず仕立ての良いコートをお召しだ。伯爵ほどの地位の方がお召しになるのはどのブランドですかな?」
「服は執事にまかせきりでブランドにはあまり興味がなくてね」
「またまたそんな!はっはっは!そういえば、今日の品評会に御社も出場なさるとか?」
「ああ……今度食品事業にも手を広げようと思っててな」
「カリー品評会にご出席なさるとは驚きましたよ。腕のいいシェフでもヘッドハントされたんですか?」
厭味ったらしい言い方をするウエストをナマエは好きになれない。
(早く《始末》しちゃいたい……でも……まずは思い知らせなくちゃ……)
「我が社も負けていられません。凄腕のシェフを雇っているんです」
「へえ……」
「ここだけの話、この間なんかライバル社のスパイが入りましてね。一点物のガレイのランプは割られるわ、ジェネラル・トレーディングのチェストは壊されるわで大変だったんですよ!」
シエルに耳打ちしながら、ウエストは震えた。
「思い出しても恐ろしい!秘伝のカリーは死守しましたが、この会場に犯人がいると思うと寒気がしますよ。それより、今日は女王陛下がいらっしゃると小耳に挟んだのですが……」
妙にそわそわしながら、ウエストは事の真偽をシエルに聞いた。
「さあ?陛下はアルバート公が亡くなられてから、あまり公の場にいらっしゃらないから」