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そして2時間後。
「お待たせ致しました。スパイスと玉葱の旨みでやわらかく鶏肉を煮込んだカリーです。コリアンダーとヨーグルトでさっぱり仕上げました」
出来上がったムルギール・カリ(チキンのカリー)を出すと、ソーマが一瞬固まった。
「もうできたのか!?あれからまだ2時間くらいしか」
「ええ。2時間もかかってしまいました。お待たせして申し訳ありません」
セバスチャンは2時間かかったという事に溜息を吐いた。
「それにこの香りは、すごくアグニのカリーに近い。一体どうやってこの短時間で」
「簡単な事です。ただ全てのスパイスを味見した《だけ》ですよ」
「全種類を!?全部?」
「ええ。それを元に先日アグニさんが朝食に作っていらっしゃったカリーの香りに近くなるようスパイスを調合してみました」
「香りって、たったあれだけで」
「私、《人》よりも少々鼻が良いんです」
「まあまあ王子様。案ずるより生むが易しだよ。まずは食べてみたら?」
「あ……ああ、いただきます」
「香りがさっきと全然違うね。スパイスのいい香りだ。これは……おいしい!!挽きたてのスパイスの風味が食欲をそそるし、よく煮こまれた鶏肉が口の中でとろけるように柔らかい」
どうやら劉のお気に召すカリーになったようだ。
「ソーマ様はいかがですか?」
「だめだ。香りは良いが味が全然別ものだ」
一口食べただけで、ソーマは首を横に振った。
「そうですか……では似た香りで別の味になる調合を試してみましょう」
「俺がアグニのカリーの作り方のひとつも知っていれば良かったんだが、本当に何も知らないな、俺は……何かしたいのに何もできない。結局、俺はまたお前らに頼るしかない。俺はなんて――」
グッと拳を握りしめるソーマの肩に手を置き、セバスチャンは微笑んだ。
「そうご自分を責めないで下さい。ソーマ様だからこそお出来になる事もございます」
そう言うと、セバスチャンは短時間で大量のカリーを作り上げた。
「香りを似せたもので味が違うものを作ってみました。ご賞味頂いて、一番味が近いものをお選び下さい」
ソーマの目の前には様々なカリーの入った寸胴が並べられている。
「全部お前が作ったのか!?一人で!?」
「ええ。ファントムハイヴ家の執事たる者、これ位出来なくてどうします?」
「し……しかし、こんな数一人じゃ食い切れないと思――」
「ソーマ様。一刻も早く神のカリーに近づける様、ご協力をお願い致します」
「う゛……わ、わかった!!俺がカリーを食うのがお前らの役に立つなら、何杯でも食おう!!」
「ではまず先程のものに塩とターメリックとコリアンダーを足したものです」
「味がしつこいし辛すぎる」
「では次にココナッツミルクとヨーグルトでまろやかさをプラスしました」
「味は良くなったが香りが遠のいたな」
「次はクミンとシナモンでスパイシーに仕上げました」
「今度は辛さが足りない、気がする」
「お待たせ致しました。レッドペッパーとクローブを加えて味を整えました」
「味が濃すぎ……で……重い……」
何度も違うカリーの味見をさせられ続け、ソーマはグッタリしている。
「ノドまでカリーが詰まってる気がする……」
そんなソーマを無視し、セバスチャンは新たなカリーを出す。
「さあ次のカリーが準備できましたよ。カルダモンとにんにくをプラス致しました」
ソーマの前にカリーを置くと、ソーマが今までと違う反応を見せた。
「こ、このカリーは――今までとは違う……」
「?」
恐る恐る口に運ぶソーマ。
ソーマはそのカリーに故郷の宮殿を思い出した。
「アグ……」
「ソーマ様……?」
「これは、このカリーは……俺が食べていたアグニのカリーにすごく近い味がする!!」
「やったあ、セバスチャンさん!」
「流石ウチの執事だぜ」
「ふむ。それにしてもここまで複雑な配合をするとは……」
喜ぶ使用人達とは別にセバスチャンは考え出した。
「だが違うんだ」
「「「え?」」」
「味・香り・辛さ……確かにアグニと同じだ。だけど、何かが……何かが足りない!」
「“何か”……とは?」
「うーん……そう聞かれるとどう答えればいいのか……アグニのカリーはもっと旨みと味わいが深いというか……そうだ、コクだ!コクが足りないんだ」
「コク?ですか?」
「あ……ああ」
「お待たせ致しました。スパイスと玉葱の旨みでやわらかく鶏肉を煮込んだカリーです。コリアンダーとヨーグルトでさっぱり仕上げました」
出来上がったムルギール・カリ(チキンのカリー)を出すと、ソーマが一瞬固まった。
「もうできたのか!?あれからまだ2時間くらいしか」
「ええ。2時間もかかってしまいました。お待たせして申し訳ありません」
セバスチャンは2時間かかったという事に溜息を吐いた。
「それにこの香りは、すごくアグニのカリーに近い。一体どうやってこの短時間で」
「簡単な事です。ただ全てのスパイスを味見した《だけ》ですよ」
「全種類を!?全部?」
「ええ。それを元に先日アグニさんが朝食に作っていらっしゃったカリーの香りに近くなるようスパイスを調合してみました」
「香りって、たったあれだけで」
「私、《人》よりも少々鼻が良いんです」
「まあまあ王子様。案ずるより生むが易しだよ。まずは食べてみたら?」
「あ……ああ、いただきます」
「香りがさっきと全然違うね。スパイスのいい香りだ。これは……おいしい!!挽きたてのスパイスの風味が食欲をそそるし、よく煮こまれた鶏肉が口の中でとろけるように柔らかい」
どうやら劉のお気に召すカリーになったようだ。
「ソーマ様はいかがですか?」
「だめだ。香りは良いが味が全然別ものだ」
一口食べただけで、ソーマは首を横に振った。
「そうですか……では似た香りで別の味になる調合を試してみましょう」
「俺がアグニのカリーの作り方のひとつも知っていれば良かったんだが、本当に何も知らないな、俺は……何かしたいのに何もできない。結局、俺はまたお前らに頼るしかない。俺はなんて――」
グッと拳を握りしめるソーマの肩に手を置き、セバスチャンは微笑んだ。
「そうご自分を責めないで下さい。ソーマ様だからこそお出来になる事もございます」
そう言うと、セバスチャンは短時間で大量のカリーを作り上げた。
「香りを似せたもので味が違うものを作ってみました。ご賞味頂いて、一番味が近いものをお選び下さい」
ソーマの目の前には様々なカリーの入った寸胴が並べられている。
「全部お前が作ったのか!?一人で!?」
「ええ。ファントムハイヴ家の執事たる者、これ位出来なくてどうします?」
「し……しかし、こんな数一人じゃ食い切れないと思――」
「ソーマ様。一刻も早く神のカリーに近づける様、ご協力をお願い致します」
「う゛……わ、わかった!!俺がカリーを食うのがお前らの役に立つなら、何杯でも食おう!!」
「ではまず先程のものに塩とターメリックとコリアンダーを足したものです」
「味がしつこいし辛すぎる」
「では次にココナッツミルクとヨーグルトでまろやかさをプラスしました」
「味は良くなったが香りが遠のいたな」
「次はクミンとシナモンでスパイシーに仕上げました」
「今度は辛さが足りない、気がする」
「お待たせ致しました。レッドペッパーとクローブを加えて味を整えました」
「味が濃すぎ……で……重い……」
何度も違うカリーの味見をさせられ続け、ソーマはグッタリしている。
「ノドまでカリーが詰まってる気がする……」
そんなソーマを無視し、セバスチャンは新たなカリーを出す。
「さあ次のカリーが準備できましたよ。カルダモンとにんにくをプラス致しました」
ソーマの前にカリーを置くと、ソーマが今までと違う反応を見せた。
「こ、このカリーは――今までとは違う……」
「?」
恐る恐る口に運ぶソーマ。
ソーマはそのカリーに故郷の宮殿を思い出した。
「アグ……」
「ソーマ様……?」
「これは、このカリーは……俺が食べていたアグニのカリーにすごく近い味がする!!」
「やったあ、セバスチャンさん!」
「流石ウチの執事だぜ」
「ふむ。それにしてもここまで複雑な配合をするとは……」
喜ぶ使用人達とは別にセバスチャンは考え出した。
「だが違うんだ」
「「「え?」」」
「味・香り・辛さ……確かにアグニと同じだ。だけど、何かが……何かが足りない!」
「“何か”……とは?」
「うーん……そう聞かれるとどう答えればいいのか……アグニのカリーはもっと旨みと味わいが深いというか……そうだ、コクだ!コクが足りないんだ」
「コク?ですか?」
「あ……ああ」