灰色
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ……」
「お前らの神といえば、舌を出した姿のカーリー女神だ。そしてこれを描いたアグニの“神(カーリー)”といえば?総ては神(お前)のため。祈りと謝罪の意をここに込めたんじゃないのか?」
「アグニさんは貴方から離れた後も貴方を信仰し貴方の為に生きている。良い執事を持たれましたね」
「アグニ……」
シエルとセバスチャンの言葉に、ソーマの瞳には涙が浮かんでいた。
「いや、めでたしめでたしだね。いい話だ。じゃあ我達は手を引くとしようか。この話をヤードに持ってって後はまかせたら?」
「ま、待ってくれ!それじゃあアグニは……ミーナはどうなる!?」
「さあ?」
「今回の事件は裏の住人(ぼくら)に関係ないことがわかった訳だしな。こっちも慈善事業でやってる訳じゃない」
「……っ。わかった……確かにこれは俺の問題だ。俺一人でなんとかする方法を考えてみる」
ソーマは貼り紙を握りしめて決意を固めた。
「いい心構えだ。じゃあ僕は僕で《仕事》をするとしよう。こんな下らない事件で冬のロンドンに呼び出されたんだ。駄賃くらい貰って帰ってもいいと思わないか?ロイヤルワラントは3年の無償奉仕と品評会での成績によって授けられる。品評会は1週間後。そして《幸運なことに》有力なライバルは出場が不可能な状態だ。つまり我がファントム社が出場してウエストに勝利すれば、ロイヤルワラントは我が社のものだ」
「あくどい事考えるねぇ、シエル」
「そうでもないだろ?製菓と玩具で御用達を得たら食品事業にも手を広げようと思っていたところだし、最初に品評会で御用達を頂けば話題になるのは間違いない」
「確かに。ファントム社の食品事業の旗揚げにはこれ以上ない首級になりそうだね。でも今から食品事業部を作るったって1週間しかないんだよ?カリーの専門家やら機材やら店舗やらは間に合うのかい?」
劉は至極当たり前の疑問を口にした。
「そんなもの必要ない。そうだろう?セバスチャン、ナマエ」
振り返りながら不敵に笑うシエル。答えはただ一つしかない。
「はいはい、やりゃ~いいんでしょ?やりゃー」
「ファントムハイヴ家の執事たる者、それ位出来なくでどうします?必ずやロイヤルワラントを――」
「それは無理だ!」
「「「ん?」」」
「ウエストにカリー勝負を挑むなんて、勝てる訳がない!」
「どうしてだい?」
「あっちにはアグニが、神の右手があるんだぞ」
「確かに“神の右手”の破壊力は驚異的だが、今回は格闘技じゃない。料理(カリー)勝負だ」
「だから言っている!今回はフェンシングのような格闘技じゃないんだ。カリー勝負だぞ!」
「すみません。話が見えないのですが……」
「お前達はアグニの力を知らない。本当のカリーを知らない」
「本物のカリーはスパイスで決まる。何百というスパイスから選択する種類と調合する分量で味・辛さ・香り……全てが変わってくる。選択肢は無限大。最高のカリーを作ること。それは宇宙から真実を見つけ出すようなものだ。しかしアグニの右手はそれができる。指先一つで無数のスパイスの中から最良の種類を最適な分量で調合し、奇跡のカリーを創り出す。無から世界を創造するその力は正に神の領域。だからアグニはこう呼ばれていた。神(カーリー)の右手と!俺はアグニのカリー以上に美味いカリーなんか食べたことがない。だからその右手は生涯俺に捧げるように言ったんだ」
「つまり“神の右手”は」
「神レベルの“強さ”じゃなくて神レベルの“カリー上手”ってこと?」
「だそうだが、セバスチャン?」
「それはそれは……手強そうですね」
笑みを漏らしながら言うセバスチャンはどこか楽しげだった。
翌日、朝早くからキッチンで作業をしていた。
「んお?セバスチャン、えらい早ぇーな」
「おはようございますだ」
「おはよーございまーす」
「はよー」
使用人達と共に、ナマエはキッチンへと入った。
「今朝は一体何作ってんだ?」
「カリーですよ」
「珍しいじゃねーか。何カリーだ?」
「ソーマ様もいらっしゃいますし、鶏肉(チキン)カリーにしようとおもってます。うちは坊っちゃんが辛い物をお好きではないのであまり作った事はありませんが……さて」
レシピ本に一通り目を通すと、セバスチャンは慣れた手つきでカリーを作り始めた。
「お前らの神といえば、舌を出した姿のカーリー女神だ。そしてこれを描いたアグニの“神(カーリー)”といえば?総ては神(お前)のため。祈りと謝罪の意をここに込めたんじゃないのか?」
「アグニさんは貴方から離れた後も貴方を信仰し貴方の為に生きている。良い執事を持たれましたね」
「アグニ……」
シエルとセバスチャンの言葉に、ソーマの瞳には涙が浮かんでいた。
「いや、めでたしめでたしだね。いい話だ。じゃあ我達は手を引くとしようか。この話をヤードに持ってって後はまかせたら?」
「ま、待ってくれ!それじゃあアグニは……ミーナはどうなる!?」
「さあ?」
「今回の事件は裏の住人(ぼくら)に関係ないことがわかった訳だしな。こっちも慈善事業でやってる訳じゃない」
「……っ。わかった……確かにこれは俺の問題だ。俺一人でなんとかする方法を考えてみる」
ソーマは貼り紙を握りしめて決意を固めた。
「いい心構えだ。じゃあ僕は僕で《仕事》をするとしよう。こんな下らない事件で冬のロンドンに呼び出されたんだ。駄賃くらい貰って帰ってもいいと思わないか?ロイヤルワラントは3年の無償奉仕と品評会での成績によって授けられる。品評会は1週間後。そして《幸運なことに》有力なライバルは出場が不可能な状態だ。つまり我がファントム社が出場してウエストに勝利すれば、ロイヤルワラントは我が社のものだ」
「あくどい事考えるねぇ、シエル」
「そうでもないだろ?製菓と玩具で御用達を得たら食品事業にも手を広げようと思っていたところだし、最初に品評会で御用達を頂けば話題になるのは間違いない」
「確かに。ファントム社の食品事業の旗揚げにはこれ以上ない首級になりそうだね。でも今から食品事業部を作るったって1週間しかないんだよ?カリーの専門家やら機材やら店舗やらは間に合うのかい?」
劉は至極当たり前の疑問を口にした。
「そんなもの必要ない。そうだろう?セバスチャン、ナマエ」
振り返りながら不敵に笑うシエル。答えはただ一つしかない。
「はいはい、やりゃ~いいんでしょ?やりゃー」
「ファントムハイヴ家の執事たる者、それ位出来なくでどうします?必ずやロイヤルワラントを――」
「それは無理だ!」
「「「ん?」」」
「ウエストにカリー勝負を挑むなんて、勝てる訳がない!」
「どうしてだい?」
「あっちにはアグニが、神の右手があるんだぞ」
「確かに“神の右手”の破壊力は驚異的だが、今回は格闘技じゃない。料理(カリー)勝負だ」
「だから言っている!今回はフェンシングのような格闘技じゃないんだ。カリー勝負だぞ!」
「すみません。話が見えないのですが……」
「お前達はアグニの力を知らない。本当のカリーを知らない」
「本物のカリーはスパイスで決まる。何百というスパイスから選択する種類と調合する分量で味・辛さ・香り……全てが変わってくる。選択肢は無限大。最高のカリーを作ること。それは宇宙から真実を見つけ出すようなものだ。しかしアグニの右手はそれができる。指先一つで無数のスパイスの中から最良の種類を最適な分量で調合し、奇跡のカリーを創り出す。無から世界を創造するその力は正に神の領域。だからアグニはこう呼ばれていた。神(カーリー)の右手と!俺はアグニのカリー以上に美味いカリーなんか食べたことがない。だからその右手は生涯俺に捧げるように言ったんだ」
「つまり“神の右手”は」
「神レベルの“強さ”じゃなくて神レベルの“カリー上手”ってこと?」
「だそうだが、セバスチャン?」
「それはそれは……手強そうですね」
笑みを漏らしながら言うセバスチャンはどこか楽しげだった。
翌日、朝早くからキッチンで作業をしていた。
「んお?セバスチャン、えらい早ぇーな」
「おはようございますだ」
「おはよーございまーす」
「はよー」
使用人達と共に、ナマエはキッチンへと入った。
「今朝は一体何作ってんだ?」
「カリーですよ」
「珍しいじゃねーか。何カリーだ?」
「ソーマ様もいらっしゃいますし、鶏肉(チキン)カリーにしようとおもってます。うちは坊っちゃんが辛い物をお好きではないのであまり作った事はありませんが……さて」
レシピ本に一通り目を通すと、セバスチャンは慣れた手つきでカリーを作り始めた。