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「セバスチャン、ロンドン市内で1週間後にある催し物は?」
「1週間後ですか。ふむ。坊っちゃん宛ての招待状では……ウエストミンスター寺院で聖ソフィア学院主催の聖歌隊コンサート。コヴェント・ガーデン歌劇場でワーグナーの上演。クリスタルパレスで帝国におけるインド文化とその繁栄展。大英博物館で世界の通貨博覧会」
「……インド?」
「坊っちゃん、ご自分に送られたお手紙は《どんな内容でも》きちんとお読みになるのが紳士というものですよ」
溜息を漏らすセバスチャンにシエルは苛ついた。
「うるさい。いいから早く詳細を話せ」
「来週クリスタルパレスで行われる《帝国におけるインド文化とその繁栄展》は植民地(インド)における英国(イギリス)の功績や産業についての展示をメインとした展覧会です。催し物の一環としてカリーの品評会が行われる予定です。坊っちゃんはその品評会の特別審査員として招待状が来ておりました。品評会は数社のカリーを競い合わせる趣向の様で、噂によればカリー好きと名高い女王もご見学にいらっしゃるとか。他にも個人主催のパーティー等をお調べしますか?」
「インド……カリー……《もう》十分だ」
シエルはセバスチャンの言った招待状の内容で漸く察した。
「気付いたようだね、伯爵」
「ああ。“3年”“品評会”、そしてブランド好きのウエストの考えそうなこととくれば答えは一つだろう。まさか本当にこんな下らない事件だったとはな。呆れてものも言えん……」
「あはは。本当に無駄足だったわけか」
「ちょっと待て!訳がわからん。一から説明しろ!!」
一人だけ状況を理解出来ていないソーマが、慌てて口を挟んだ。
「まぁ落ち着きなよ王子様。今、順序立てて説明するからさ。伯爵が!」
「お前また知ったかぶってたな?」
劉の知ったかぶりに怒りつつ、シエルは説明してやった。
「ウエストが経営するヒンドスターニー・コーヒーハウスのメインと言えばカリーだ。つまりウエストは“カリー”で“ロイヤルワラント”を獲ろうとしてるんだ」
「ああ、成程!」
「ろいやるわらんと?なんだそれは?」
「あ、そっか。王子様は知らないよね。英国には面白い制度があってね。王族が気に入ったお店に《お墨付き》の称号を与えることが出来るんだよ。それが《英国王室御用達(ロイヤルワラント)》。それが貰えた店は看板にその称号を掲げることができるってワケ」
「?」
「ロイヤルワラントは品質保証と同義語なんだよ」
劉が丁寧に説明してやっていた。
「店がロイヤルワラントの称号を得ることによって売り上げは確実に伸びる。うちもそろそろ製菓と玩具で申請しようかとおもっていたところだ」
「店によっては売り上げが3倍になる場合もあるようです。特にヴィクトリア女王はファッションから料理に至るまで流行を発信している御方ですからね」
「ハァ……カリーも一時期と違って下火だし、是が非でも称号が欲しいんだろう」
「ウエストがその“ろいやるわらんと”やらが欲しいのはわかった。だがそれと今回の事件が何故つながるんだ?」
ソーマの疑問はもっともであった。
「ロイヤルワラントを得るには二つの条件があります。一つ目は“品評会で品質を認められる事”。そして二つ目は“《3年間》の王室への無償奉仕”」
ここで漸くソーマも気がついた。
「つまり、3年間王室へ輸入品の無償奉仕を続けてきたウエストは、1週間後の品評会に出場するライバルを潰そうとしてあの事件を起こしたって訳だ。関係ない軍人なんかが襲われた例は、事件を英国に恨みを持つインド人の仕業に見せかけるためだな。多分アグニはミーナをダシにこの馬鹿げた計画の片棒を担がされているってコトだろう。自分の《神》のためにな」
「え?」
「まだ気づかない?」
「現場に残された貼り紙には偽装以外にも大きな意味があったんだ」
セバスチャンから事件現場に残されていた貼り紙を受け取り、シエルはある一点を指し示した。
「ここにな」
それは一番下に描かれている謎のマーク。
「ランドル卿は英国を侮辱しているマークだと怒鳴り散らしていたが、本当の意味は別にある。お前らが祈る《アレ》だろう?」
シエルが振り向き指差したところには、一体の神像。
「1週間後ですか。ふむ。坊っちゃん宛ての招待状では……ウエストミンスター寺院で聖ソフィア学院主催の聖歌隊コンサート。コヴェント・ガーデン歌劇場でワーグナーの上演。クリスタルパレスで帝国におけるインド文化とその繁栄展。大英博物館で世界の通貨博覧会」
「……インド?」
「坊っちゃん、ご自分に送られたお手紙は《どんな内容でも》きちんとお読みになるのが紳士というものですよ」
溜息を漏らすセバスチャンにシエルは苛ついた。
「うるさい。いいから早く詳細を話せ」
「来週クリスタルパレスで行われる《帝国におけるインド文化とその繁栄展》は植民地(インド)における英国(イギリス)の功績や産業についての展示をメインとした展覧会です。催し物の一環としてカリーの品評会が行われる予定です。坊っちゃんはその品評会の特別審査員として招待状が来ておりました。品評会は数社のカリーを競い合わせる趣向の様で、噂によればカリー好きと名高い女王もご見学にいらっしゃるとか。他にも個人主催のパーティー等をお調べしますか?」
「インド……カリー……《もう》十分だ」
シエルはセバスチャンの言った招待状の内容で漸く察した。
「気付いたようだね、伯爵」
「ああ。“3年”“品評会”、そしてブランド好きのウエストの考えそうなこととくれば答えは一つだろう。まさか本当にこんな下らない事件だったとはな。呆れてものも言えん……」
「あはは。本当に無駄足だったわけか」
「ちょっと待て!訳がわからん。一から説明しろ!!」
一人だけ状況を理解出来ていないソーマが、慌てて口を挟んだ。
「まぁ落ち着きなよ王子様。今、順序立てて説明するからさ。伯爵が!」
「お前また知ったかぶってたな?」
劉の知ったかぶりに怒りつつ、シエルは説明してやった。
「ウエストが経営するヒンドスターニー・コーヒーハウスのメインと言えばカリーだ。つまりウエストは“カリー”で“ロイヤルワラント”を獲ろうとしてるんだ」
「ああ、成程!」
「ろいやるわらんと?なんだそれは?」
「あ、そっか。王子様は知らないよね。英国には面白い制度があってね。王族が気に入ったお店に《お墨付き》の称号を与えることが出来るんだよ。それが《英国王室御用達(ロイヤルワラント)》。それが貰えた店は看板にその称号を掲げることができるってワケ」
「?」
「ロイヤルワラントは品質保証と同義語なんだよ」
劉が丁寧に説明してやっていた。
「店がロイヤルワラントの称号を得ることによって売り上げは確実に伸びる。うちもそろそろ製菓と玩具で申請しようかとおもっていたところだ」
「店によっては売り上げが3倍になる場合もあるようです。特にヴィクトリア女王はファッションから料理に至るまで流行を発信している御方ですからね」
「ハァ……カリーも一時期と違って下火だし、是が非でも称号が欲しいんだろう」
「ウエストがその“ろいやるわらんと”やらが欲しいのはわかった。だがそれと今回の事件が何故つながるんだ?」
ソーマの疑問はもっともであった。
「ロイヤルワラントを得るには二つの条件があります。一つ目は“品評会で品質を認められる事”。そして二つ目は“《3年間》の王室への無償奉仕”」
ここで漸くソーマも気がついた。
「つまり、3年間王室へ輸入品の無償奉仕を続けてきたウエストは、1週間後の品評会に出場するライバルを潰そうとしてあの事件を起こしたって訳だ。関係ない軍人なんかが襲われた例は、事件を英国に恨みを持つインド人の仕業に見せかけるためだな。多分アグニはミーナをダシにこの馬鹿げた計画の片棒を担がされているってコトだろう。自分の《神》のためにな」
「え?」
「まだ気づかない?」
「現場に残された貼り紙には偽装以外にも大きな意味があったんだ」
セバスチャンから事件現場に残されていた貼り紙を受け取り、シエルはある一点を指し示した。
「ここにな」
それは一番下に描かれている謎のマーク。
「ランドル卿は英国を侮辱しているマークだと怒鳴り散らしていたが、本当の意味は別にある。お前らが祈る《アレ》だろう?」
シエルが振り向き指差したところには、一体の神像。