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いつの間に来たのか、声に振り返るとシエルがドアにもたれ掛かっていた。
「――あの1か月がなければ――」
「――シ、シエル……?」
疼く右目を触って黙りこむシエル。
そんなシエルに異常を感じるソーマ。
「……僕は家族を殺され、家を焼かれ、家畜にも劣る屈辱を味わわされた。僕は無力で、子供だった。だから僕は僕をそんな目に遭わせた奴らに同じ屈辱を味わわせるためにこの場所(ファントムハイヴ)に戻って来た。3年前に先代達を殺した連中にとってファントムハイヴが邪魔なんだとしたら、僕が当主の椅子に座り続ければまた狙ってくるだろう。僕は待ってる。そいつらが僕を殺しに此処へやって来るのを」
「なんで……そこまで……」
「悲観して嘆いて立ち止まって、それでなんになる?立ち止まることなら死人でもできる。だけど、僕は生きていて僕の力で立ってる。いつか死ぬのなら、思い残すことがない方がいいだろう。先代達の仇討なんて偉そうなことは言わない。全ては僕の気晴らしだ」
ソーマに歩み寄りながらもシエルは続ける。
「そいつらとファントムハイヴ伯爵(僕)、どっちが勝つかのゲームなんだよ。たとえ地獄の様な場所で絶望の淵に立たされたとしても、そこから這い上がれる蜘蛛の糸があるのなら諦めずにそれを掴む。僕ら(人間)はその強さを持ってる。掴むか掴まないかは本人次第だがな。下らん話は終わりだ。セバスチャン、ナマエ、ウエストの件で話がある。来い」
「は」
「りょーかい」
シエルに伴われ、ナマエはセバスチャンと共に階下へ向かう。
階段を降りきった所で、背後から声がした。
「シエル!」
振り向くと、そこには息を切らしたソーマがいた。
「俺はっ……恥ずかしい。俺は17にもなるのに、お前よりずっと馬鹿で世間知らずだ。親に与えられた温床に甘えてばかりで、他人のことなど知ろうともしなかった。アグニが悩んでいるのを気付いていたくせに、話も聞いてやらなかった。だけど今は知りたい。二人に直接あって、俺の傍から離れた理由を確かめたい」
「……覚悟は決まったみたいだね」
「ああ。だから頼む!俺も一緒に――」
「断る」
「……」
「お前のような世間知らずのお守りはごめんだ。じゃーな……まぁ、談話室のドアには最初から鍵はついてないがな」
「……シエル!!」
「うわッ」
ソーマに背を向け談話室に向かおうとしたシエルだったが、一瞬呆気にとられていたソーマに後ろから飛びつかれた。
「やっぱ言うんじゃなかった」
「そうだ。シエル、さっきは八つ当たりしてカップを割ってしまってすまなかった。許してくれ。それから――」
ソーマはシエルの後ろに隠れてナマエとセバスチャンを見た。
「お……お前達も……すまなかった」
「いえ……おもしろいですね」
「クソガキを躾けるのも大人の役目、ってやつだからね。気にしない気にしな~い」
にへらと笑って見せるナマエに、シエルとセバスチャンは目を見開いた。
「ナマエ……」
「貴女、一体いくつなんですか……?」
「へ?」
「どう見ても……」
「ソーマ様と同年代にしか……」
「なっ……失礼な!これでも成人してかなり経ってるっての!!」
顔を赤くして怒るナマエに対し、セバスチャンは一人納得していた。
「東洋の方は実年齢より幼く見えると言いますし……レディに年齢を尋ねるのは失礼でしたね」
「――さて、王子様に中断されちゃった話の続きをしようじゃないか」
談話室にて先程の話の続きが始まった。
「まず例の事件はウエストがアグニにやらせていると見て間違いないだろう。あいつの身体能力からして、一人で事件を起こすのはなんてことない。ウエストの話に出てきたのは、“3年がかりの計画”“計画の完成は1週間後”“アグニの右手が不可欠”ということだ。ここで一番重要なファクターは《1週間後》という日程だが」
「彼の“神の右手”を使うんなら、何か大きなイベントでも襲っちゃうとか?まあ冬だし大きい催し物なんかは終わってるよね。女王の即位50周年も去年終わっちゃったしねぇ」
「――あの1か月がなければ――」
「――シ、シエル……?」
疼く右目を触って黙りこむシエル。
そんなシエルに異常を感じるソーマ。
「……僕は家族を殺され、家を焼かれ、家畜にも劣る屈辱を味わわされた。僕は無力で、子供だった。だから僕は僕をそんな目に遭わせた奴らに同じ屈辱を味わわせるためにこの場所(ファントムハイヴ)に戻って来た。3年前に先代達を殺した連中にとってファントムハイヴが邪魔なんだとしたら、僕が当主の椅子に座り続ければまた狙ってくるだろう。僕は待ってる。そいつらが僕を殺しに此処へやって来るのを」
「なんで……そこまで……」
「悲観して嘆いて立ち止まって、それでなんになる?立ち止まることなら死人でもできる。だけど、僕は生きていて僕の力で立ってる。いつか死ぬのなら、思い残すことがない方がいいだろう。先代達の仇討なんて偉そうなことは言わない。全ては僕の気晴らしだ」
ソーマに歩み寄りながらもシエルは続ける。
「そいつらとファントムハイヴ伯爵(僕)、どっちが勝つかのゲームなんだよ。たとえ地獄の様な場所で絶望の淵に立たされたとしても、そこから這い上がれる蜘蛛の糸があるのなら諦めずにそれを掴む。僕ら(人間)はその強さを持ってる。掴むか掴まないかは本人次第だがな。下らん話は終わりだ。セバスチャン、ナマエ、ウエストの件で話がある。来い」
「は」
「りょーかい」
シエルに伴われ、ナマエはセバスチャンと共に階下へ向かう。
階段を降りきった所で、背後から声がした。
「シエル!」
振り向くと、そこには息を切らしたソーマがいた。
「俺はっ……恥ずかしい。俺は17にもなるのに、お前よりずっと馬鹿で世間知らずだ。親に与えられた温床に甘えてばかりで、他人のことなど知ろうともしなかった。アグニが悩んでいるのを気付いていたくせに、話も聞いてやらなかった。だけど今は知りたい。二人に直接あって、俺の傍から離れた理由を確かめたい」
「……覚悟は決まったみたいだね」
「ああ。だから頼む!俺も一緒に――」
「断る」
「……」
「お前のような世間知らずのお守りはごめんだ。じゃーな……まぁ、談話室のドアには最初から鍵はついてないがな」
「……シエル!!」
「うわッ」
ソーマに背を向け談話室に向かおうとしたシエルだったが、一瞬呆気にとられていたソーマに後ろから飛びつかれた。
「やっぱ言うんじゃなかった」
「そうだ。シエル、さっきは八つ当たりしてカップを割ってしまってすまなかった。許してくれ。それから――」
ソーマはシエルの後ろに隠れてナマエとセバスチャンを見た。
「お……お前達も……すまなかった」
「いえ……おもしろいですね」
「クソガキを躾けるのも大人の役目、ってやつだからね。気にしない気にしな~い」
にへらと笑って見せるナマエに、シエルとセバスチャンは目を見開いた。
「ナマエ……」
「貴女、一体いくつなんですか……?」
「へ?」
「どう見ても……」
「ソーマ様と同年代にしか……」
「なっ……失礼な!これでも成人してかなり経ってるっての!!」
顔を赤くして怒るナマエに対し、セバスチャンは一人納得していた。
「東洋の方は実年齢より幼く見えると言いますし……レディに年齢を尋ねるのは失礼でしたね」
「――さて、王子様に中断されちゃった話の続きをしようじゃないか」
談話室にて先程の話の続きが始まった。
「まず例の事件はウエストがアグニにやらせていると見て間違いないだろう。あいつの身体能力からして、一人で事件を起こすのはなんてことない。ウエストの話に出てきたのは、“3年がかりの計画”“計画の完成は1週間後”“アグニの右手が不可欠”ということだ。ここで一番重要なファクターは《1週間後》という日程だが」
「彼の“神の右手”を使うんなら、何か大きなイベントでも襲っちゃうとか?まあ冬だし大きい催し物なんかは終わってるよね。女王の即位50周年も去年終わっちゃったしねぇ」