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その後もアグニはセバスチャン目掛けて攻撃をする。
セバスチャンが避ける度に、部屋にある物が破壊されていく。
「やめろッ。それはトーマス・グッジで買った一点モノのガレイのランプ」
「なんかヤバそうだね。先に脱出しよう、伯爵」
「だねぇ~」
「うわっ」
劉は軽々とシエルを抱えあげると走りだす。
「っ……おい!この騒ぎじゃ人目につく。お前もそいつを連れて脱出しろ」
「御意」
セバスチャンはソーマを抱えたまま、手近な窓を破って外に出た。
「すごかったね、さっきの彼。人間の範疇を超えてるよ」
屋敷に戻り、お茶を飲みながら劉は言った。
「あれは“精神集中(サマーディ)”だ。ああなると誰も手がつけられん」
「サマーディ?」
「宗教的なものですね。一種のトランス状態の事でしょう。人間という生物は、強烈な信仰という盲信によって強大な力を生み出す事の出来る稀な生き物です。かつてのヴァイキングは軍神(オーディン)の名のもと狂戦士(バーサーカー)となり、十字軍の聖騎士(パラディン)は神(ヤハウェ)の名のもと侵略という名の戦いを繰り返した。《彼》もまたその一人。ソーマ様という“神(あるじ)”への絶対的な信仰によって、人間(ヒト)には持ち得ない程の力を生み出している。《私達》には持ち得ない、誰かを信じ愛する事で生まれる“信仰”という力」
「ならば何故……俺を裏切る?何故俺を勝手に置いていく!?」
ソーマは目の前に置かれたティーセットを薙ぎ払った。
「っお前……」
「どうして!!どうして俺の周りの人間ばかりいなくなる!?何故だっ。なんで……」
ひとしきり暴れたソーマはリビングから駆け出していった。
「お二人共大丈夫ですか?」
「避けたから大丈夫だよ」
「嗚呼……せっかく坊っちゃんにお似合いだと思って取り寄せたアヴィランドのティーセットが……彼は、少し躾直して差し上げた方が良い様ですね」
「奇遇だね~、私も手伝うよ」
クスリと笑うと、ナマエはセバスチャンと共にリビングを後にした。
向かうはソーマの部屋。
ノックもせずに部屋へ入り、ソーマに向かって歩く二人。
「貴様ッ誰が入っていいと許し――っだっ!!?」
セバスチャンによりバサッとシーツを剥がれ、転げ落ちるソーマ。
「無礼もの――」
「無礼者はどちらです」
「!?」
「全く。好き勝手散らかして下さって……いい迷惑です」
「なっ……」
「ここは英国でファントムハイヴ伯爵のお屋敷です。貴方の国でも城でもない。ここでは貴方は私達に何一つ命令する権利を持たない、ただの餓鬼でしかない。アグニさんが居なければ何も出来ない無力な子供。その頼みの綱のアグニさんにも裏切られてしまいましたけどね」
「そうだ……俺にはもう何もない。みんな失ってしまった……」
「失う?呆れた被害妄想ですね。クスッ。貴方は失ったんじゃない。最初から何も持っていないじゃないですか」
「え……?」
「親から与えられた地位。親から与えられた城。親から与えられた使用人。初めから貴方のものなど何一つありはしない。そうでしょう?アグニさんの事も、本当は薄々感づいていたんでしょう?けれど一人で確かめる勇気もなかった」
「違うッ」
「違う?逃げるの?たかが《こんな事》で」
追い打ちをかけるナマエの言葉に駆け出すソーマの行く手を阻むように、セバスチャンはドアを塞いだ。
「違わないでしょう?いざ事実を突きつけられたら、今度は悲劇の主人公気取りですか?本当にどうしようもない餓鬼ですね」
「でも……でもっ……みんなずっと一緒にいてくれるって……」
「社交辞令(リップサービス)にきまっているでしょう。見返り無しに誰かに仕えたりするはずがない。スラム街でなら3才児でも知ってますよ。誰も貴方を愛してた訳じゃない」
「俺……俺はっ……」
「言ったでしょ?君にとって“大ダメージになる”ってさ。君はな~んにも解ってなかった。他人を思いやる気持ちもなく、自分の事しか考えてなかった。その思考・行動が招いた結果なんだから、受け入れたら?」
「そのへんにしてやれ」
「坊っちゃん」
「シエル?」
「僕だってそいつと同じだったかもしれない」
セバスチャンが避ける度に、部屋にある物が破壊されていく。
「やめろッ。それはトーマス・グッジで買った一点モノのガレイのランプ」
「なんかヤバそうだね。先に脱出しよう、伯爵」
「だねぇ~」
「うわっ」
劉は軽々とシエルを抱えあげると走りだす。
「っ……おい!この騒ぎじゃ人目につく。お前もそいつを連れて脱出しろ」
「御意」
セバスチャンはソーマを抱えたまま、手近な窓を破って外に出た。
「すごかったね、さっきの彼。人間の範疇を超えてるよ」
屋敷に戻り、お茶を飲みながら劉は言った。
「あれは“精神集中(サマーディ)”だ。ああなると誰も手がつけられん」
「サマーディ?」
「宗教的なものですね。一種のトランス状態の事でしょう。人間という生物は、強烈な信仰という盲信によって強大な力を生み出す事の出来る稀な生き物です。かつてのヴァイキングは軍神(オーディン)の名のもと狂戦士(バーサーカー)となり、十字軍の聖騎士(パラディン)は神(ヤハウェ)の名のもと侵略という名の戦いを繰り返した。《彼》もまたその一人。ソーマ様という“神(あるじ)”への絶対的な信仰によって、人間(ヒト)には持ち得ない程の力を生み出している。《私達》には持ち得ない、誰かを信じ愛する事で生まれる“信仰”という力」
「ならば何故……俺を裏切る?何故俺を勝手に置いていく!?」
ソーマは目の前に置かれたティーセットを薙ぎ払った。
「っお前……」
「どうして!!どうして俺の周りの人間ばかりいなくなる!?何故だっ。なんで……」
ひとしきり暴れたソーマはリビングから駆け出していった。
「お二人共大丈夫ですか?」
「避けたから大丈夫だよ」
「嗚呼……せっかく坊っちゃんにお似合いだと思って取り寄せたアヴィランドのティーセットが……彼は、少し躾直して差し上げた方が良い様ですね」
「奇遇だね~、私も手伝うよ」
クスリと笑うと、ナマエはセバスチャンと共にリビングを後にした。
向かうはソーマの部屋。
ノックもせずに部屋へ入り、ソーマに向かって歩く二人。
「貴様ッ誰が入っていいと許し――っだっ!!?」
セバスチャンによりバサッとシーツを剥がれ、転げ落ちるソーマ。
「無礼もの――」
「無礼者はどちらです」
「!?」
「全く。好き勝手散らかして下さって……いい迷惑です」
「なっ……」
「ここは英国でファントムハイヴ伯爵のお屋敷です。貴方の国でも城でもない。ここでは貴方は私達に何一つ命令する権利を持たない、ただの餓鬼でしかない。アグニさんが居なければ何も出来ない無力な子供。その頼みの綱のアグニさんにも裏切られてしまいましたけどね」
「そうだ……俺にはもう何もない。みんな失ってしまった……」
「失う?呆れた被害妄想ですね。クスッ。貴方は失ったんじゃない。最初から何も持っていないじゃないですか」
「え……?」
「親から与えられた地位。親から与えられた城。親から与えられた使用人。初めから貴方のものなど何一つありはしない。そうでしょう?アグニさんの事も、本当は薄々感づいていたんでしょう?けれど一人で確かめる勇気もなかった」
「違うッ」
「違う?逃げるの?たかが《こんな事》で」
追い打ちをかけるナマエの言葉に駆け出すソーマの行く手を阻むように、セバスチャンはドアを塞いだ。
「違わないでしょう?いざ事実を突きつけられたら、今度は悲劇の主人公気取りですか?本当にどうしようもない餓鬼ですね」
「でも……でもっ……みんなずっと一緒にいてくれるって……」
「社交辞令(リップサービス)にきまっているでしょう。見返り無しに誰かに仕えたりするはずがない。スラム街でなら3才児でも知ってますよ。誰も貴方を愛してた訳じゃない」
「俺……俺はっ……」
「言ったでしょ?君にとって“大ダメージになる”ってさ。君はな~んにも解ってなかった。他人を思いやる気持ちもなく、自分の事しか考えてなかった。その思考・行動が招いた結果なんだから、受け入れたら?」
「そのへんにしてやれ」
「坊っちゃん」
「シエル?」
「僕だってそいつと同じだったかもしれない」