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「――で結局、お前の捜している女は何者だ?なんでハタ……?」
夕食(サバのグーズベリーソースがけとコーテージパイ)を前に、シエルは漸くソーマの捜し人について質問した。
「俺が生まれた時から俺の侍女だった女で、まぁ乳母みたいなモンだ。物心ついた頃からずっと一緒だった。親父様は俺なんか興味ないし、母上は親父様の気を引くのに必死で俺には見向きもしない。宮殿にいつも独りで……でもミーナはいつも俺の側にいてくれた。明るくて美人で、姉のように何でも教えてくれた。ミーナさえいれば俺は寂しくなかった。俺はミーナを愛して、ミーナも俺を愛してくれた。だけど……あいつが……英国貴族が来て、ミーナを英国へ連れ去った!」
怒りのあまり、ソーマはテーブルに拳を叩きつけた。
「どういうことだい?」
「ベンガル藩王国はインド皇帝であるヴィクトリア女王に内政権を認められてはいるが、実際は英国から派遣されてくる政治顧問がほとんど政治を牛耳ってる。実態は植民地と大差ない。そして3か月ほど前にその政治顧問の客として《そいつ》はやって来た!」
メインであるサバにフォークを突き立て、ソーマは怒りを露わにした。
「《そいつ》は俺の城でミーナに目をとめ……俺が街を視察に行っている間に、ミーナを無理矢理英国に連れ去ったんだ!!」
「つまり、英国には女を連れ戻しに来たという訳か」
「そうだ!絶対に取り戻して一緒に帰る」
「それにしても使用人の女ひとつで大ゲサな……」
英国訪問の理由を聞いて、シエルは呆れて溜息を吐いた。
「大ゲサじゃないッ。ミーナのいない城なんか中身のない箱と一緒だ!!お前にミーナと引き離された俺の絶望がわかるのか!?俺がどんなにっ」
ガタンッと席を立ち、シエルの肩をガッシリと掴みながら言うソーマ。
「わからんな」
「……ッ」
「その程度の事で感じることができる《たかがしれた》絶望など、僕には理解できないしする気もない。どんなに足掻いても取り戻せないものもある。抜け出せない絶望もある。お前には理解できないかもしれんがな」
そんなソーマを冷めた眼で見やりながら、シエルは言い切るとその手を振り払った。
「でも……それでも俺は……もう嫌だ。あの宮殿(あそこ)で独りになるのは……」
ソーマの悲壮な声を後ろに、シエルはそれ以上何も言わずにダイニングを後にした。
その夜、ソーマはアグニと共に外出し深夜まで戻ってこなかった。
シエルはその事もありイライラして眠りが浅かったと不機嫌極まりなかった。
「――ま、ぶっちゃけ最初からすごい怪しいよね、あの二人組。伯爵ったらモテモテだね~」
「それはそうなんだが、奴らに事件を起こすメリットが見あたらん。ロンドンに来ると毎日《コレ》だ……」
毎日届く大量の招待状を1通ずつ開封しながらシエルは続けた。
「植民地支配による怨恨の線は《あの様子》からして薄いだろう。たとえアングロ・インディアンが気に入らないとしても、無差別に襲うのはリスクが高すぎる。大体もし犯人なら、あんなにあからさまに僕の前から出掛けていくか?疑ってくれと言ってるようなものじゃないか。思い出しても腹の立つ!それに――」
「じゃさー、手っ取り早く夜ついてっちゃえばいいじゃない。ネッ」
劉の提案を飲むことにし、その日は何事もなかったかの様に振る舞った。
そしてまた日がとっぷりと暮れた頃。
「じゃあ俺達は出かけるからな。さっさと寝ろよ、チビシエル!」
そう言いながらソーマとアグニが玄関から出て行くと、シエルはソーマの言葉に苛立ちを隠さなかった。
そしてついに尾行開始。使用人達を残し、シエル含めた四人はソーマ達の後を追った。
ソーマとアグニの行き先は街中にあるパブやクラブばかり。
「なんか本当に人捜ししてるだけみたいだねぇ~」
「英国で人の情報を得るには、まずパブかクラブだ。別に不自然な行動はしていないな。さむい……」
「午前1時……そろそろ屋敷に戻りそうですね。私達も戻りましょう」
コンコンと雪が降る中、シエル達は先回りし屋敷へ帰った。
その後、ソーマとアグニが戻って来たがシエル達は何事もなかったかの様に振る舞った。
そして午前2時45分。ソーマを寝かしつけたアグニが動き出す。
「やはり動きましたね」
屋根の上からそれを確認したセバスチャン。
夕食(サバのグーズベリーソースがけとコーテージパイ)を前に、シエルは漸くソーマの捜し人について質問した。
「俺が生まれた時から俺の侍女だった女で、まぁ乳母みたいなモンだ。物心ついた頃からずっと一緒だった。親父様は俺なんか興味ないし、母上は親父様の気を引くのに必死で俺には見向きもしない。宮殿にいつも独りで……でもミーナはいつも俺の側にいてくれた。明るくて美人で、姉のように何でも教えてくれた。ミーナさえいれば俺は寂しくなかった。俺はミーナを愛して、ミーナも俺を愛してくれた。だけど……あいつが……英国貴族が来て、ミーナを英国へ連れ去った!」
怒りのあまり、ソーマはテーブルに拳を叩きつけた。
「どういうことだい?」
「ベンガル藩王国はインド皇帝であるヴィクトリア女王に内政権を認められてはいるが、実際は英国から派遣されてくる政治顧問がほとんど政治を牛耳ってる。実態は植民地と大差ない。そして3か月ほど前にその政治顧問の客として《そいつ》はやって来た!」
メインであるサバにフォークを突き立て、ソーマは怒りを露わにした。
「《そいつ》は俺の城でミーナに目をとめ……俺が街を視察に行っている間に、ミーナを無理矢理英国に連れ去ったんだ!!」
「つまり、英国には女を連れ戻しに来たという訳か」
「そうだ!絶対に取り戻して一緒に帰る」
「それにしても使用人の女ひとつで大ゲサな……」
英国訪問の理由を聞いて、シエルは呆れて溜息を吐いた。
「大ゲサじゃないッ。ミーナのいない城なんか中身のない箱と一緒だ!!お前にミーナと引き離された俺の絶望がわかるのか!?俺がどんなにっ」
ガタンッと席を立ち、シエルの肩をガッシリと掴みながら言うソーマ。
「わからんな」
「……ッ」
「その程度の事で感じることができる《たかがしれた》絶望など、僕には理解できないしする気もない。どんなに足掻いても取り戻せないものもある。抜け出せない絶望もある。お前には理解できないかもしれんがな」
そんなソーマを冷めた眼で見やりながら、シエルは言い切るとその手を振り払った。
「でも……それでも俺は……もう嫌だ。あの宮殿(あそこ)で独りになるのは……」
ソーマの悲壮な声を後ろに、シエルはそれ以上何も言わずにダイニングを後にした。
その夜、ソーマはアグニと共に外出し深夜まで戻ってこなかった。
シエルはその事もありイライラして眠りが浅かったと不機嫌極まりなかった。
「――ま、ぶっちゃけ最初からすごい怪しいよね、あの二人組。伯爵ったらモテモテだね~」
「それはそうなんだが、奴らに事件を起こすメリットが見あたらん。ロンドンに来ると毎日《コレ》だ……」
毎日届く大量の招待状を1通ずつ開封しながらシエルは続けた。
「植民地支配による怨恨の線は《あの様子》からして薄いだろう。たとえアングロ・インディアンが気に入らないとしても、無差別に襲うのはリスクが高すぎる。大体もし犯人なら、あんなにあからさまに僕の前から出掛けていくか?疑ってくれと言ってるようなものじゃないか。思い出しても腹の立つ!それに――」
「じゃさー、手っ取り早く夜ついてっちゃえばいいじゃない。ネッ」
劉の提案を飲むことにし、その日は何事もなかったかの様に振る舞った。
そしてまた日がとっぷりと暮れた頃。
「じゃあ俺達は出かけるからな。さっさと寝ろよ、チビシエル!」
そう言いながらソーマとアグニが玄関から出て行くと、シエルはソーマの言葉に苛立ちを隠さなかった。
そしてついに尾行開始。使用人達を残し、シエル含めた四人はソーマ達の後を追った。
ソーマとアグニの行き先は街中にあるパブやクラブばかり。
「なんか本当に人捜ししてるだけみたいだねぇ~」
「英国で人の情報を得るには、まずパブかクラブだ。別に不自然な行動はしていないな。さむい……」
「午前1時……そろそろ屋敷に戻りそうですね。私達も戻りましょう」
コンコンと雪が降る中、シエル達は先回りし屋敷へ帰った。
その後、ソーマとアグニが戻って来たがシエル達は何事もなかったかの様に振る舞った。
そして午前2時45分。ソーマを寝かしつけたアグニが動き出す。
「やはり動きましたね」
屋根の上からそれを確認したセバスチャン。