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AM10時。
「――さて、ロンドン滞在中は家庭教師(ガヴァネス)のマダム達に代わり、私が家庭教師(チューター)を務めさせて頂きます。まずは“無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番”を練習致しましょう」
「げっ、バッハのシャコンヌ……こんな難易度の高い曲なんか弾けるわけ……!」
シエルが指定された曲に文句を述べていると、セバスチャンがその顎をヴァイオリンの弓でクイッと持ち上げた。
「難しいものからこなしていけば自信も付くというものです。ここでは教師(わたし)がルールですよ。基本的に私はスパルタですから。私の教育方針に何か問題でも?」
「……」
にっこりと威圧的に言うセバスチャンにシエルは何も言えなかった。
「よろしい。さあ弓を構えて。ニ短調に大切なのは厳粛さや敬虔さを音色で表現する事です」
弾けるわけがないと言いながらも、シエルは弾いている。
「そう上手ですよ。音色の表現を感情豊かに」
ベンベンという弦楽器の音がヴァイオリンの音色に混ざり始めた。
「時には怒りを表現した音で」
今度はズンドコズンドコと打楽器も入り始める。
「そう……って何をしてるんです?」
「ん?」
謎の弦楽器と打楽器はソーマとアグニの仕業だった。
「今日1日くらいシエルに付き合うのもいいかと思ってな。俺も弦楽器は得意だし」
「珍しい楽器だねぇ」
「出てけッ」
呑気に笑う劉を無視し、シエルはソーマとアグニを部屋から追い出した。
AM11時。
「次は絵画のお時間です。しっかりとバランスと奥行きを出して下さい」
ワインボトルとフルーツの盛られた台を指してセバスチャンは言った。
「なんだ?こんなビンなんか描いててもつまらん!」
声にシエルが振り向けば、いつの間にか戻って来ていたソーマが椅子に座っており、後ろにはアグニが控えていた。
「絵画といえば裸婦だろう。というわけで女!脱げ!」
「あ、脱がす?」
「ワッワタシ、心に決めた人の前でしか脱がねぇですだ」
指名されたメイリンは慌てて拒否した。
「なら、そっちの女。お前が脱げ!」
「は?」
「何度も言わせるな。脱げ」
「……いくら王子だからって、誰もが自分の言う事聞くとでも思ってんの?」
「当たり前だろう。なんたって俺は王子だからな!」
ソーマの返答にナマエの影がゆらり、と蠢き瞳の色が琥珀色へと変わり始めていた。
「やっ……ヤバい……出てけッ!!」
またしてもソーマ達はシエルによって部屋から追い出された。
「落ちつけ、ナマエ!」
「至って冷静ですが?」
「なら――《ソレ》をどうにかしろ!!」
シエルが指差した先、自身の影を見ると鵺が顔を覗かせていた。
「あぁ……出てきてたの?鵺」
[我が主に屈辱を与えるモノ……何人たりとも許すまじ……]
「屈辱って……アレ位、口で黙らすこと出来るから大丈夫だよ。だから――戻りなさい」
[だが……]
「戻りなさい」
[……御意]
有無を言わせぬ声音でナマエが命じると、鵺は渋々影の中へとその顔を沈めて消えていった。
PM1時。
「ヨークシャーの工場からクリスマス限定品のサンプルが届いております」
「ん。作り直させただけあって手触りがいいな」
ビターラビットを抱き締めながら満足そうに言うシエルは可愛かった。
微笑ましくそれを眺めていると、ふとシエルと目が合った。
「ナマエ」
「なーに?」
「お前にコレをやる」
そう言いながら、先程まで抱いていたビターラビットをポンッとナマエに手渡した。
「へ?え??」
「好きなんだろ?こういうの」
ニヤリと意地の悪い笑みでナマエの顔を覗き込むシエル。
「なっ……」
「僕からのプレゼントだ」
「……ありがと」
もふもふのビターラビットを抱き締め、ナマエは嬉しそうに笑った。
「……面白くないですね」
「え?」
「――さて、ロンドン滞在中は家庭教師(ガヴァネス)のマダム達に代わり、私が家庭教師(チューター)を務めさせて頂きます。まずは“無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番”を練習致しましょう」
「げっ、バッハのシャコンヌ……こんな難易度の高い曲なんか弾けるわけ……!」
シエルが指定された曲に文句を述べていると、セバスチャンがその顎をヴァイオリンの弓でクイッと持ち上げた。
「難しいものからこなしていけば自信も付くというものです。ここでは教師(わたし)がルールですよ。基本的に私はスパルタですから。私の教育方針に何か問題でも?」
「……」
にっこりと威圧的に言うセバスチャンにシエルは何も言えなかった。
「よろしい。さあ弓を構えて。ニ短調に大切なのは厳粛さや敬虔さを音色で表現する事です」
弾けるわけがないと言いながらも、シエルは弾いている。
「そう上手ですよ。音色の表現を感情豊かに」
ベンベンという弦楽器の音がヴァイオリンの音色に混ざり始めた。
「時には怒りを表現した音で」
今度はズンドコズンドコと打楽器も入り始める。
「そう……って何をしてるんです?」
「ん?」
謎の弦楽器と打楽器はソーマとアグニの仕業だった。
「今日1日くらいシエルに付き合うのもいいかと思ってな。俺も弦楽器は得意だし」
「珍しい楽器だねぇ」
「出てけッ」
呑気に笑う劉を無視し、シエルはソーマとアグニを部屋から追い出した。
AM11時。
「次は絵画のお時間です。しっかりとバランスと奥行きを出して下さい」
ワインボトルとフルーツの盛られた台を指してセバスチャンは言った。
「なんだ?こんなビンなんか描いててもつまらん!」
声にシエルが振り向けば、いつの間にか戻って来ていたソーマが椅子に座っており、後ろにはアグニが控えていた。
「絵画といえば裸婦だろう。というわけで女!脱げ!」
「あ、脱がす?」
「ワッワタシ、心に決めた人の前でしか脱がねぇですだ」
指名されたメイリンは慌てて拒否した。
「なら、そっちの女。お前が脱げ!」
「は?」
「何度も言わせるな。脱げ」
「……いくら王子だからって、誰もが自分の言う事聞くとでも思ってんの?」
「当たり前だろう。なんたって俺は王子だからな!」
ソーマの返答にナマエの影がゆらり、と蠢き瞳の色が琥珀色へと変わり始めていた。
「やっ……ヤバい……出てけッ!!」
またしてもソーマ達はシエルによって部屋から追い出された。
「落ちつけ、ナマエ!」
「至って冷静ですが?」
「なら――《ソレ》をどうにかしろ!!」
シエルが指差した先、自身の影を見ると鵺が顔を覗かせていた。
「あぁ……出てきてたの?鵺」
[我が主に屈辱を与えるモノ……何人たりとも許すまじ……]
「屈辱って……アレ位、口で黙らすこと出来るから大丈夫だよ。だから――戻りなさい」
[だが……]
「戻りなさい」
[……御意]
有無を言わせぬ声音でナマエが命じると、鵺は渋々影の中へとその顔を沈めて消えていった。
PM1時。
「ヨークシャーの工場からクリスマス限定品のサンプルが届いております」
「ん。作り直させただけあって手触りがいいな」
ビターラビットを抱き締めながら満足そうに言うシエルは可愛かった。
微笑ましくそれを眺めていると、ふとシエルと目が合った。
「ナマエ」
「なーに?」
「お前にコレをやる」
そう言いながら、先程まで抱いていたビターラビットをポンッとナマエに手渡した。
「へ?え??」
「好きなんだろ?こういうの」
ニヤリと意地の悪い笑みでナマエの顔を覗き込むシエル。
「なっ……」
「僕からのプレゼントだ」
「……ありがと」
もふもふのビターラビットを抱き締め、ナマエは嬉しそうに笑った。
「……面白くないですね」
「え?」