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ヤードを嘲るように言うシエルに、ランドルは言葉に詰まっていた。
「では僕は僕で動かせてもらう。さっさと屋敷(マナーハウス)に戻りたいんでね。セバスチャン、資料は覚えたな?」
「は」
全ての資料を短時間で記憶したセバスチャン。その事を確認すると、シエルは現場に用はないとでも言いたげに背を向けた。
「行くぞセバスチャン、ナマエ」
「はい。ありがとうございます」
「お邪魔しました」
ナマエは礼儀正しく頭を下げると、シエルの後を追いかけた。
セバスチャンに導かれながら歩き辿り着いたのは、とある建物の地下へ通じる階段の前。
「坊っちゃん、着きましたよ」
「――ここで間違いないな?」
「ええ」
薄暗い階段をゆっくりと降りていく三人。
「足元にお気をつけて。特にナマエは」
「はいはい」
螺旋状の階段を下って行くと、一つの扉が現れた。
セバスチャンがその扉を開ける。
「酷い匂いだ……ゴホッ」
「……とうとうここが見つかってしまったようだね、伯爵。こんな形で君と対峙しているなんて不思議だよ。だけど我(ワタシ)は、いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていたんだ」
「どんな日だ」
イラつくシエルとは正反対に、声の主は声音を上げた。
「やっ、いらっしゃい伯爵。久しぶり!元気だったかい?あ、こないだ誕生日だったんだって?おめでとー」
糸目の中国人:劉はたくさんの女性を侍らせて寛いでいた。
「そんなことはどうでもいい!!」
「なにテレてるんですか」
「まぁ……シエル様には目の毒かと思いますがねぇ」
劉の状態に顔を赤くするシエル。
「お前に一つ聞きたいことがある」
「ああ、伯爵が阿片窟(アナグラ)くんだりまでおでましになるってことは《アレ》だろ?」
「もう話が回ってきてるのか。耳が早いな」
「お兄さん達吸ってく?」
「私達は結構です。ね?ナマエ」
「うん。阿片に興味はない」
劉の取り巻きに阿片を勧められている間も会話は続いていた。
「例の事件について調べてる。東洋人ならこの辺りに縄張りを敷いてるお前に聞くのが一番早い。中国貿易会社《崑崙(コンロン)》英国支店長……いや、上海マフィア《青幇(チンパン)》幹部:劉」
「その呼び方はあまり好きじゃないんだけどなあ、堅苦しくてさ。ねぇ藍猫」
「はあ」
劉は膝に乗せている藍猫という女性の顎に手をかけた。
「東洋人の管理はお前に任せてある。この街の出入りの人数は把握しているんだろうな?阿片をやめて話を聞け!」
「これはただのハッカだよ。もちろん伯爵のご命令通りにやってるよ。この国の裏社会で“商売”させてもらうためのショバ代だからね」
「じゃあ」
「それより先に、我も伯爵に一つだけ聞きたいことがある」
「?」
「その事件ってなに?」
「お前……まずそこからか」
「適当に相槌打ってましたね、確実に」
「うん、そうだね」
項垂れているシエルには悪いが、劉がこういう人物だとナマエは知っているので適当に流した。
アナグラを出て劉の案内で街を歩く事になった一行。
「――なるほどねぇ。そのイタズラッ子を捕まえたいわけだ」
「まだ死人は出ていないが、ジェントリや軍人ばかり狙われるのでな」
「下々の者に示しがつかんってことか。伯爵もご苦労なことだ」
「下らん」
劉が溜息混じりに言うと、シエルは心底嫌そうに言った。
「ところで大分歩いてますが、インド人達が根城にしている宿はどのあたりで?」
辺りを見回しながらセバスチャンは劉に聞いた。
どう見ても普通の街並み。
「ん?あっ、ごめん。話に夢中で迷ったっぽい!はっはっはっ、ウッカリさん★」
「お前は~ッ」
シエルは劉の適当さに苛つきを見せ始めた。
「とりあえず一度戻って、つっ」
来た道を戻ろうと振り向いたシエルは、背後にいた肌の浅黒い男にぶつかってしまった。
「す……」
「イッテェー!!肋骨にヒビが入ったあーッ」
「なっ」
「では僕は僕で動かせてもらう。さっさと屋敷(マナーハウス)に戻りたいんでね。セバスチャン、資料は覚えたな?」
「は」
全ての資料を短時間で記憶したセバスチャン。その事を確認すると、シエルは現場に用はないとでも言いたげに背を向けた。
「行くぞセバスチャン、ナマエ」
「はい。ありがとうございます」
「お邪魔しました」
ナマエは礼儀正しく頭を下げると、シエルの後を追いかけた。
セバスチャンに導かれながら歩き辿り着いたのは、とある建物の地下へ通じる階段の前。
「坊っちゃん、着きましたよ」
「――ここで間違いないな?」
「ええ」
薄暗い階段をゆっくりと降りていく三人。
「足元にお気をつけて。特にナマエは」
「はいはい」
螺旋状の階段を下って行くと、一つの扉が現れた。
セバスチャンがその扉を開ける。
「酷い匂いだ……ゴホッ」
「……とうとうここが見つかってしまったようだね、伯爵。こんな形で君と対峙しているなんて不思議だよ。だけど我(ワタシ)は、いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていたんだ」
「どんな日だ」
イラつくシエルとは正反対に、声の主は声音を上げた。
「やっ、いらっしゃい伯爵。久しぶり!元気だったかい?あ、こないだ誕生日だったんだって?おめでとー」
糸目の中国人:劉はたくさんの女性を侍らせて寛いでいた。
「そんなことはどうでもいい!!」
「なにテレてるんですか」
「まぁ……シエル様には目の毒かと思いますがねぇ」
劉の状態に顔を赤くするシエル。
「お前に一つ聞きたいことがある」
「ああ、伯爵が阿片窟(アナグラ)くんだりまでおでましになるってことは《アレ》だろ?」
「もう話が回ってきてるのか。耳が早いな」
「お兄さん達吸ってく?」
「私達は結構です。ね?ナマエ」
「うん。阿片に興味はない」
劉の取り巻きに阿片を勧められている間も会話は続いていた。
「例の事件について調べてる。東洋人ならこの辺りに縄張りを敷いてるお前に聞くのが一番早い。中国貿易会社《崑崙(コンロン)》英国支店長……いや、上海マフィア《青幇(チンパン)》幹部:劉」
「その呼び方はあまり好きじゃないんだけどなあ、堅苦しくてさ。ねぇ藍猫」
「はあ」
劉は膝に乗せている藍猫という女性の顎に手をかけた。
「東洋人の管理はお前に任せてある。この街の出入りの人数は把握しているんだろうな?阿片をやめて話を聞け!」
「これはただのハッカだよ。もちろん伯爵のご命令通りにやってるよ。この国の裏社会で“商売”させてもらうためのショバ代だからね」
「じゃあ」
「それより先に、我も伯爵に一つだけ聞きたいことがある」
「?」
「その事件ってなに?」
「お前……まずそこからか」
「適当に相槌打ってましたね、確実に」
「うん、そうだね」
項垂れているシエルには悪いが、劉がこういう人物だとナマエは知っているので適当に流した。
アナグラを出て劉の案内で街を歩く事になった一行。
「――なるほどねぇ。そのイタズラッ子を捕まえたいわけだ」
「まだ死人は出ていないが、ジェントリや軍人ばかり狙われるのでな」
「下々の者に示しがつかんってことか。伯爵もご苦労なことだ」
「下らん」
劉が溜息混じりに言うと、シエルは心底嫌そうに言った。
「ところで大分歩いてますが、インド人達が根城にしている宿はどのあたりで?」
辺りを見回しながらセバスチャンは劉に聞いた。
どう見ても普通の街並み。
「ん?あっ、ごめん。話に夢中で迷ったっぽい!はっはっはっ、ウッカリさん★」
「お前は~ッ」
シエルは劉の適当さに苛つきを見せ始めた。
「とりあえず一度戻って、つっ」
来た道を戻ろうと振り向いたシエルは、背後にいた肌の浅黒い男にぶつかってしまった。
「す……」
「イッテェー!!肋骨にヒビが入ったあーッ」
「なっ」