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厚く重い雲に覆われた灰色の季節、冬を迎えたロンドン。
切り裂きジャック騒動も収まり落ち着きを取り戻したかと思われていたが、新たな事件がロンドンを騒がせていた。
ポートマンスクエア付近に軒を連ねたヒンドスターニー・コーヒーハウス(インド料理を出すパブ)にたむろするインド帰りの英国人(アングロ・インディアン)が身ぐるみを剥がされた状態で天井から逆さ吊りにされるという、なんとも奇妙な事件が次々と起こっていた。
インドから帰国した貴族や軍人がこういった被害に見舞われ、その全ての被害者には同じ紙が貼られていた。
“こいつは頭のいかれた堕落と怠惰の申し子である。英国は全てを奪い去り、傲慢にも腐った文化を押しつける悪魔の国だ。アバズレの支配する国の馬鹿共に天罰を!”
「まただ!これで20件目だぞ!!まだ犯人を捕まえられんのか!アバーライン!!」
「申し訳ございません!!」
初老の男性:ランドルは、被害者に貼られていた紙を握り潰しながらアバーラインと呼んだ若い男性を怒鳴りつけていた。
握り潰された紙の一番下には意味ありげなマークが描かれている。
「切り裂きジャックも捕まえられず、《あんなガキ》に手柄を横取りされて……」
「ガキで悪かったな」
「ファントムハイヴ伯爵!」
ランドルが振り向くと、そこにはシエル・ファントムハイヴが従者を連れて立っていた。
「君!どこからここへ入った!」
叱責されていたアバーラインは、シエルの事を知らない。その為“どこかから迷い込んだ子供とその従者”にしか見えていなかった。
「ファントムハイヴ伯爵……何をしに来た!」
アバーラインを手で制止し、ランドルはシエルに問うた。
「はっ、決まってる。モタモタしている猟犬の尻拭いをしに来てやったんだ」
「なっ……」
アバーラインがランドルの言葉に疑問符を浮かべていると、彼の手からシエルは調査書類を奪い取った。
「なるほど。アングロ・インディアンばかりが狙われる事件か。死人はまだ出ていないようだな」
「!勝手に……」
ランドルが怒鳴りつけようとした瞬間、シエルは一通の手紙を見せつけた。
「ただの追い剥ぎなら僕が出てくるまでもないが、王室が侮辱され続けたのでは黙っているわけにもいかなくてな」
手紙の封蝋を見て、ランドルは黙り込んだ。
「ふん。犯人も“堕落と怠惰の申し子”とはなかなか的確な表現だ。僕もインド成金はいなくなった方がこの国も多少はマシになると思うがね」
インドはイギリスの植民地であり、大量のイギリス人が住み着いていた。
インドでは《貴族》のような優雅な暮らしが出来ていた富裕層の人間。
インドから帰国した者は《アングロ・インディアン》と呼ばれ、インドでの贅沢かつ怠惰な生活から抜け出せない者も多い。
その為、アングロ・インディアンは《インド成金》とも呼ばれていた。
「たとえインドで下らない遊びに耽り浪費にかまけた腑抜けだとしても、多くはこの大英帝国(グレート・ブリテン)の上流階級(ジェントリ)だ。守らないわけにはいかない!」
「ジェントリね……下らないな。それにしてもこのマークは……?」
舌を出しながら次々と資料に目を通していくシエル。
そんなシエルから手渡された資料を黙々と記憶していくセバスチャン。ナマエはいまだに読み書きが出来ない為、シエルの近くで黙って話を聞くしか出来ない。
「我ら英国人と女王陛下を馬鹿にしておるのだ!ふざけおって……!!インド帰りばかり狙われるということは、犯人は下劣なインド人に違いない。野蛮人め!!」
「ランドル総督落ちついて下さ……」
「人種差別はんたーい」
ナマエは聞こえるかどうかのラインの声音で呟いた。
「はーん。それで僕が呼ばれたわけか。密航したインド人の大半はイーストエンドを根城にしている。市警(シティヤード)もイーストエンドの暗黒街には手を焼いているとみえる。密航者の正確な数もルートも、特定するのが難しいんだろう?」
切り裂きジャック騒動も収まり落ち着きを取り戻したかと思われていたが、新たな事件がロンドンを騒がせていた。
ポートマンスクエア付近に軒を連ねたヒンドスターニー・コーヒーハウス(インド料理を出すパブ)にたむろするインド帰りの英国人(アングロ・インディアン)が身ぐるみを剥がされた状態で天井から逆さ吊りにされるという、なんとも奇妙な事件が次々と起こっていた。
インドから帰国した貴族や軍人がこういった被害に見舞われ、その全ての被害者には同じ紙が貼られていた。
“こいつは頭のいかれた堕落と怠惰の申し子である。英国は全てを奪い去り、傲慢にも腐った文化を押しつける悪魔の国だ。アバズレの支配する国の馬鹿共に天罰を!”
「まただ!これで20件目だぞ!!まだ犯人を捕まえられんのか!アバーライン!!」
「申し訳ございません!!」
初老の男性:ランドルは、被害者に貼られていた紙を握り潰しながらアバーラインと呼んだ若い男性を怒鳴りつけていた。
握り潰された紙の一番下には意味ありげなマークが描かれている。
「切り裂きジャックも捕まえられず、《あんなガキ》に手柄を横取りされて……」
「ガキで悪かったな」
「ファントムハイヴ伯爵!」
ランドルが振り向くと、そこにはシエル・ファントムハイヴが従者を連れて立っていた。
「君!どこからここへ入った!」
叱責されていたアバーラインは、シエルの事を知らない。その為“どこかから迷い込んだ子供とその従者”にしか見えていなかった。
「ファントムハイヴ伯爵……何をしに来た!」
アバーラインを手で制止し、ランドルはシエルに問うた。
「はっ、決まってる。モタモタしている猟犬の尻拭いをしに来てやったんだ」
「なっ……」
アバーラインがランドルの言葉に疑問符を浮かべていると、彼の手からシエルは調査書類を奪い取った。
「なるほど。アングロ・インディアンばかりが狙われる事件か。死人はまだ出ていないようだな」
「!勝手に……」
ランドルが怒鳴りつけようとした瞬間、シエルは一通の手紙を見せつけた。
「ただの追い剥ぎなら僕が出てくるまでもないが、王室が侮辱され続けたのでは黙っているわけにもいかなくてな」
手紙の封蝋を見て、ランドルは黙り込んだ。
「ふん。犯人も“堕落と怠惰の申し子”とはなかなか的確な表現だ。僕もインド成金はいなくなった方がこの国も多少はマシになると思うがね」
インドはイギリスの植民地であり、大量のイギリス人が住み着いていた。
インドでは《貴族》のような優雅な暮らしが出来ていた富裕層の人間。
インドから帰国した者は《アングロ・インディアン》と呼ばれ、インドでの贅沢かつ怠惰な生活から抜け出せない者も多い。
その為、アングロ・インディアンは《インド成金》とも呼ばれていた。
「たとえインドで下らない遊びに耽り浪費にかまけた腑抜けだとしても、多くはこの大英帝国(グレート・ブリテン)の上流階級(ジェントリ)だ。守らないわけにはいかない!」
「ジェントリね……下らないな。それにしてもこのマークは……?」
舌を出しながら次々と資料に目を通していくシエル。
そんなシエルから手渡された資料を黙々と記憶していくセバスチャン。ナマエはいまだに読み書きが出来ない為、シエルの近くで黙って話を聞くしか出来ない。
「我ら英国人と女王陛下を馬鹿にしておるのだ!ふざけおって……!!インド帰りばかり狙われるということは、犯人は下劣なインド人に違いない。野蛮人め!!」
「ランドル総督落ちついて下さ……」
「人種差別はんたーい」
ナマエは聞こえるかどうかのラインの声音で呟いた。
「はーん。それで僕が呼ばれたわけか。密航したインド人の大半はイーストエンドを根城にしている。市警(シティヤード)もイーストエンドの暗黒街には手を焼いているとみえる。密航者の正確な数もルートも、特定するのが難しいんだろう?」