嵐と平穏
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「は」
「一つだけ言っておこうと思っていたことがある」
「!?」
候爵夫人の言葉にセバスチャンはドキッとした。
「滅茶苦茶になった食器と、ボロボロの庭と、黒コゲのキッチンの後始末もしっかりな」
「はい。ばれてましたか」
苦笑しているセバスチャンに、候爵夫人は追い打ちをかけた。
「ああ、それと……」
「?」
「私はナマエが気に入った。もし泣かせるような事をしてみろ。その時は有無を言わさず我が屋敷に引き取らせて貰うからな」
真剣な表情の候爵夫人に言われ、セバスチャンはクスリと笑った。
「ご心配にはおよびません。私が彼女を泣かせるなど……ありえませんから」
「今日はパーティーだー!!」
「タダ酒!!タダ酒!!」
盛り上がり始めた広間から、セバスチャンは何も言わず音も立てずにキッチンへと消えた。
「やれやれ」
キッチンの戸棚からトレイを取り出し作業台の上に置くと、トレイから蓋を外した。
「どうやら《コレ》は無駄になってしまった様ですね」
蓋の中から出てきたのはシエルの誕生日を祝うために作られたホールケーキ。
「嗚呼……人間という生物は本当に理解しがたい」
左手の手袋をおもむろに外すと、そのままケーキに飾ってあるシエルを象徴するであろう帽子の飾りに指をつけた。
「《こんなもの》が美味しい、なんて」
掬い取った飾りを舐めながら呟くセバスチャン。
「ん~?美味しいよ、ケーキは」
「!?」
「特にセバスチャンの作るお菓子はね」
「……ナマエ」
声に振り向くと、そこには出入り口に寄りかかっているナマエがいた。
「驚かせないで下さい」
「勝手に驚いたのはそっちでしょうが。にしても……勿体ないね、そのケーキ」
カツン、カツンと靴音を響かせながら、暗闇の中をまっすぐ近づいて来るナマエ。
「パーティーはどうしたんです?」
「ん?私はあくまで“家庭教師”だから。裏方に徹しようかと、ね」
「フフッ。バルド達にも見習って欲しいですね、その心得を」
「えー!?そんなの面白くなくなるから却下っ!」
「貴女は私の苦労を理解していないんですか?」
溜息混じりに呆れているセバスチャンに、ナマエはケラケラと笑った。
「苦労人の執事、それが私の知ってるセバスチャンだから」
「まったく、貴女って人は……」
「あっ!雪!!寒いと思ったら降ってきたね~」
「あぁ、もうそんな時期ですか」
セバスチャンの横を通り抜けて窓に近づいたナマエ。
指に絡めついていたモノを全て舐めとると、セバスチャンは後ろからナマエを抱きしめた。
「ん?どした??」
「女性が身体を冷やすのは良くありませんよ」
「……だからって抱きつかれる理由になってないんだけど」
「では……私がこうしたいから、と言えば貴女は許して下さるのですか?」
「ん~……今日だけは許してあげる。シエル様の誕生日だし」
「はぁ……何ですか、その理由は」
「嫌なら離れろ。今すぐ離れろ!」
「……今日だけは坊っちゃんに感謝、ですね」
セバスチャンは腕の中にいるナマエの存在を確かめるかの様に、抱き締める腕に力を込めた。
「一つだけ言っておこうと思っていたことがある」
「!?」
候爵夫人の言葉にセバスチャンはドキッとした。
「滅茶苦茶になった食器と、ボロボロの庭と、黒コゲのキッチンの後始末もしっかりな」
「はい。ばれてましたか」
苦笑しているセバスチャンに、候爵夫人は追い打ちをかけた。
「ああ、それと……」
「?」
「私はナマエが気に入った。もし泣かせるような事をしてみろ。その時は有無を言わさず我が屋敷に引き取らせて貰うからな」
真剣な表情の候爵夫人に言われ、セバスチャンはクスリと笑った。
「ご心配にはおよびません。私が彼女を泣かせるなど……ありえませんから」
「今日はパーティーだー!!」
「タダ酒!!タダ酒!!」
盛り上がり始めた広間から、セバスチャンは何も言わず音も立てずにキッチンへと消えた。
「やれやれ」
キッチンの戸棚からトレイを取り出し作業台の上に置くと、トレイから蓋を外した。
「どうやら《コレ》は無駄になってしまった様ですね」
蓋の中から出てきたのはシエルの誕生日を祝うために作られたホールケーキ。
「嗚呼……人間という生物は本当に理解しがたい」
左手の手袋をおもむろに外すと、そのままケーキに飾ってあるシエルを象徴するであろう帽子の飾りに指をつけた。
「《こんなもの》が美味しい、なんて」
掬い取った飾りを舐めながら呟くセバスチャン。
「ん~?美味しいよ、ケーキは」
「!?」
「特にセバスチャンの作るお菓子はね」
「……ナマエ」
声に振り向くと、そこには出入り口に寄りかかっているナマエがいた。
「驚かせないで下さい」
「勝手に驚いたのはそっちでしょうが。にしても……勿体ないね、そのケーキ」
カツン、カツンと靴音を響かせながら、暗闇の中をまっすぐ近づいて来るナマエ。
「パーティーはどうしたんです?」
「ん?私はあくまで“家庭教師”だから。裏方に徹しようかと、ね」
「フフッ。バルド達にも見習って欲しいですね、その心得を」
「えー!?そんなの面白くなくなるから却下っ!」
「貴女は私の苦労を理解していないんですか?」
溜息混じりに呆れているセバスチャンに、ナマエはケラケラと笑った。
「苦労人の執事、それが私の知ってるセバスチャンだから」
「まったく、貴女って人は……」
「あっ!雪!!寒いと思ったら降ってきたね~」
「あぁ、もうそんな時期ですか」
セバスチャンの横を通り抜けて窓に近づいたナマエ。
指に絡めついていたモノを全て舐めとると、セバスチャンは後ろからナマエを抱きしめた。
「ん?どした??」
「女性が身体を冷やすのは良くありませんよ」
「……だからって抱きつかれる理由になってないんだけど」
「では……私がこうしたいから、と言えば貴女は許して下さるのですか?」
「ん~……今日だけは許してあげる。シエル様の誕生日だし」
「はぁ……何ですか、その理由は」
「嫌なら離れろ。今すぐ離れろ!」
「……今日だけは坊っちゃんに感謝、ですね」
セバスチャンは腕の中にいるナマエの存在を確かめるかの様に、抱き締める腕に力を込めた。