嵐と平穏
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スッと背筋を伸ばし礼をする候爵夫人。
「流石は我が息子になる男だ、シエル・ファントムハイヴ卿。さあ、ゲームは終わりだ。帰るぞ」
早々に片付けをし、屋敷へ帰る事となった一行。
ゆっくりと歩く2頭の馬。
その先頭には木に縛ったクマを片腕で持ち二人の猟銃を運ぶセバスチャンと、その他の獲物を抱えるナマエ。
「……おい。おい、執事。忘れ物だ」
セバスチャンに声をかけた候爵夫人の手には一本のナイフがあった。
「……おや、私とした事が大切な銀食器(シルバー)を忘れるとは……」
「全くだ。熊の脳天に《忘れていた》ぞ。《それ》を倒したのはお前だな?私の弾丸は外れていた。娘の危機に手元を狂わすとは、私も歳をとったものだ。だが、主に華を持たせるのが執事の役目だろう?何故、私に勝たせる様なまねを?」
不思議に思った候爵夫人は、率直に疑問をぶつけた。
「坊っちゃんは突出したゲームの才能をお持ちです。それゆえに《負けるわけがない》と少々ご自身の力を過信していらっしゃる節がございます。しかし時には目標に向かい努力する、謙虚な姿勢も持って頂かなくてはなりません……そうでなくてはいずれ足元をすくわれるでしょう。坊っちゃんが目指す場所は生易しい場所ではないのですから。勝手を申す様ですが……」
「?」
「候爵夫人には、我が主の模範となって頂きたいのです」
「つまり私は利用されたということか。ふんっ」
「はは。決してその様なことは……我が主はまだ“子供”……それと同時に“当主”でもある。そんな坊っちゃんを戒めて下さる“大人”が、今の坊っちゃんには必要です」
「お前、いやらしい顔のわりにマトモなことを言うな」
「……そんなにいやらしいですかね」
「主人のためなら、主人を痛い目に遭わせて戒めるのも仕事のうちか?」
「私はあくまで執事ですから。主人の《ためになる》最良の事をさせて頂いたまでです」
食えない顔でそう告げるセバスチャン。それを候爵夫人は敢えて口にした。
「フン。食えない奴だ」
日も暮れて屋敷に戻って来た一行。
「狩りも盛況だった事ですし、私が腕によりをかけて……」
ドアを開けた途端、シエル達は後悔した。
「「「あ」」」
「ほっほっ」
「おかえりなさーいっ!!」
「お、お前達その格好は……!?」
「へっ」
出迎えたのはボロッボロな格好になっている使用人三人。
「みんなで作ったんですよ!!ほらっ!」
「!?ハァ?」
無垢な笑顔のフィニアンはケーキであろう物体をシエルに差し出した。
広間はそれはもう、酷い有様だった。
「ほらっ、バラで飾りつけもしたんですよ!」
「坊っちゃんの好物がいっぱいの丼もありますぜィ」
「テーブルセットはワタシがしたですだよ。セバスチャンさんをお手本に……」
「「「……」」」
あまりの惨状に絶句するシエル達三人。
その背後から異様な気配を感じ振り返ると、候爵夫人がいた。
「フン。先を越されたな。今日は《それ》を言うために来たんだが」
カツカツという靴音を鳴らしながら、伯爵夫人はシエルに近づき、彼の頭に手を置いた。
「13歳の誕生日おめでとう、シエル。そしてみんな、私の娘と息子をこれからも頼む」
柔らかい表情になった候爵夫人に、その場の雰囲気が明らかに変わった。
「ありがとう、ございます」
いつもは子供らしからぬ顔が多いシエルも、この時ばかりは歳相応の顔になっていた。
「セバスチャン、今日は世話になったな」
「流石は我が息子になる男だ、シエル・ファントムハイヴ卿。さあ、ゲームは終わりだ。帰るぞ」
早々に片付けをし、屋敷へ帰る事となった一行。
ゆっくりと歩く2頭の馬。
その先頭には木に縛ったクマを片腕で持ち二人の猟銃を運ぶセバスチャンと、その他の獲物を抱えるナマエ。
「……おい。おい、執事。忘れ物だ」
セバスチャンに声をかけた候爵夫人の手には一本のナイフがあった。
「……おや、私とした事が大切な銀食器(シルバー)を忘れるとは……」
「全くだ。熊の脳天に《忘れていた》ぞ。《それ》を倒したのはお前だな?私の弾丸は外れていた。娘の危機に手元を狂わすとは、私も歳をとったものだ。だが、主に華を持たせるのが執事の役目だろう?何故、私に勝たせる様なまねを?」
不思議に思った候爵夫人は、率直に疑問をぶつけた。
「坊っちゃんは突出したゲームの才能をお持ちです。それゆえに《負けるわけがない》と少々ご自身の力を過信していらっしゃる節がございます。しかし時には目標に向かい努力する、謙虚な姿勢も持って頂かなくてはなりません……そうでなくてはいずれ足元をすくわれるでしょう。坊っちゃんが目指す場所は生易しい場所ではないのですから。勝手を申す様ですが……」
「?」
「候爵夫人には、我が主の模範となって頂きたいのです」
「つまり私は利用されたということか。ふんっ」
「はは。決してその様なことは……我が主はまだ“子供”……それと同時に“当主”でもある。そんな坊っちゃんを戒めて下さる“大人”が、今の坊っちゃんには必要です」
「お前、いやらしい顔のわりにマトモなことを言うな」
「……そんなにいやらしいですかね」
「主人のためなら、主人を痛い目に遭わせて戒めるのも仕事のうちか?」
「私はあくまで執事ですから。主人の《ためになる》最良の事をさせて頂いたまでです」
食えない顔でそう告げるセバスチャン。それを候爵夫人は敢えて口にした。
「フン。食えない奴だ」
日も暮れて屋敷に戻って来た一行。
「狩りも盛況だった事ですし、私が腕によりをかけて……」
ドアを開けた途端、シエル達は後悔した。
「「「あ」」」
「ほっほっ」
「おかえりなさーいっ!!」
「お、お前達その格好は……!?」
「へっ」
出迎えたのはボロッボロな格好になっている使用人三人。
「みんなで作ったんですよ!!ほらっ!」
「!?ハァ?」
無垢な笑顔のフィニアンはケーキであろう物体をシエルに差し出した。
広間はそれはもう、酷い有様だった。
「ほらっ、バラで飾りつけもしたんですよ!」
「坊っちゃんの好物がいっぱいの丼もありますぜィ」
「テーブルセットはワタシがしたですだよ。セバスチャンさんをお手本に……」
「「「……」」」
あまりの惨状に絶句するシエル達三人。
その背後から異様な気配を感じ振り返ると、候爵夫人がいた。
「フン。先を越されたな。今日は《それ》を言うために来たんだが」
カツカツという靴音を鳴らしながら、伯爵夫人はシエルに近づき、彼の頭に手を置いた。
「13歳の誕生日おめでとう、シエル。そしてみんな、私の娘と息子をこれからも頼む」
柔らかい表情になった候爵夫人に、その場の雰囲気が明らかに変わった。
「ありがとう、ございます」
いつもは子供らしからぬ顔が多いシエルも、この時ばかりは歳相応の顔になっていた。
「セバスチャン、今日は世話になったな」