聚合
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「――で、このレディをどうするおつもりですか?坊っちゃん」
「知るか。お前が対処しろ」
クラウスが去った後、何故かナマエはファントムハイヴ邸へと残されていた。
シエルはそんなナマエを一瞥すると、セバスチャンに言い放ち何処かへ行ってしまった。
(さて……どうしようか……)
シエルの言葉に悶々と思考に耽っていると、背後から声をかけられた。
「レディ、森で倒れられていたとの事ですが……坊っちゃんに何か御用があったのでしょうか?」
紅茶色の双眼が冷たく光る。
「お宅のご主人様に用事があったわけじゃない……です」
「なら――何故敷地内に?」
「……気付いたらクラウス様の車に乗っていました。それ以前の記憶は――」
「無い、といったところですか?」
(言えるわけがない……自分は《死んでいる》はずで、気がついたら【黒執事】の世界に居たなんて――信じて貰えるはずがない……)
悲しそうに眉を落としていると、頭上からは深い溜息が漏れ聞こえた。
「仕方がありませんね。このまま放り出してはファントムハイヴ家の名に傷が付きます。行く宛が見つかるまでは誠心誠意、お世話をさせて頂くとしましょう」
「ありがとうございます。でも……」
「記憶がない以上、《外》で衣食住をまかなえるとは到底思えません。それに――ちょうど日本に関しての家庭教師(ガヴァネス)を探していたんです」
セバスチャンはナマエの唇に指をあてがいながら目配せをした。
その日からナマエの日常は変わった。
拙い言葉でシエルに日本語や日本文化を教える日々。唯一の楽しみはタナカとのお茶を飲む時間。日本語で話せる唯一の時間だった。
『やっぱり緑茶は落ち着く……』
『ほっほっほっ』
一方的に話している事が多い。しかし、それでもナマエにとっては唯一日本語が通じる相手だと思っていた。
『シエル様はすぐにサボろうとするし、セバスチャンさんは厳しいし……私って一体何でこんな事してんだろ……』
小さく呟いたナマエに、タナカは笑いながら答えた。
『坊っちゃんはまだ子供なのです。勉強と仕事に追われ、同年代の子供の様に遊ぶ事も許されない。そんな坊っちゃんでも、貴女との時間は楽しいようですよ?』
『でも……』
『坊っちゃんがどうかなさいましたか?』
不意にタナカではない声で日本語で話し掛けられたナマエは、肩をビクつかせながら声の方向へと視線を移した。
『えっ……』
「これはこれはセバスチャン」
「セバスチャン……さん!?」
『坊っちゃんが何か致しましたか?ナマエさん』
そこには、確かに流暢な日本語で話すセバスチャンがいた。
「えっと……その……」
『日本語で結構ですよ?私も話せますから』
光の灯らない眼でナマエを見据えるセバスチャン。その視線に耐えられずにナマエは俯いた。
『日本語で話せるんなら……最初から日本語で話して下さい』
『そんな事していたら、貴女の為になりませんよ。この英国(くに)で生きていくには、それなりの言葉を紡げなくては話になりません。それに――』
「貴女の反応は退屈せずに済みますから」
耳元で今度は英語で囁くセバスチャン。
いきなりの出来事に固まっていると、クスクスと笑う声が降りかかってきた。
『悪魔……』
「えぇ。私はあくまで執事ですよ?」
ポツリと呟いたナマエの言葉を聞き逃さず、セバスチャンは綺麗に微笑んだ。
「それで?坊っちゃんがどうしたというのです?」
「別に……その……」
口籠るナマエの目から視線を外す事無く、セバスチャンは屈んで目線を合わせた。
「英語で言い難いのであれば、日本語で結構ですよ?」
「……なんでもないです」
ぷいっとセバスチャンから視線を逸らし、ナマエは湯のみをテーブルに置くとその場から走り去った。
「タナカさん、ナマエさんから何か伺っているのでは?」
「ほっほっほっ。彼女は彼女なりに奮闘している、といったところでしょうな」
「なる程……」
ナマエが走り去った方向へ目を向けると、セバスチャンは何かを思いついたかのように手をパンッと鳴らした。
「知るか。お前が対処しろ」
クラウスが去った後、何故かナマエはファントムハイヴ邸へと残されていた。
シエルはそんなナマエを一瞥すると、セバスチャンに言い放ち何処かへ行ってしまった。
(さて……どうしようか……)
シエルの言葉に悶々と思考に耽っていると、背後から声をかけられた。
「レディ、森で倒れられていたとの事ですが……坊っちゃんに何か御用があったのでしょうか?」
紅茶色の双眼が冷たく光る。
「お宅のご主人様に用事があったわけじゃない……です」
「なら――何故敷地内に?」
「……気付いたらクラウス様の車に乗っていました。それ以前の記憶は――」
「無い、といったところですか?」
(言えるわけがない……自分は《死んでいる》はずで、気がついたら【黒執事】の世界に居たなんて――信じて貰えるはずがない……)
悲しそうに眉を落としていると、頭上からは深い溜息が漏れ聞こえた。
「仕方がありませんね。このまま放り出してはファントムハイヴ家の名に傷が付きます。行く宛が見つかるまでは誠心誠意、お世話をさせて頂くとしましょう」
「ありがとうございます。でも……」
「記憶がない以上、《外》で衣食住をまかなえるとは到底思えません。それに――ちょうど日本に関しての家庭教師(ガヴァネス)を探していたんです」
セバスチャンはナマエの唇に指をあてがいながら目配せをした。
その日からナマエの日常は変わった。
拙い言葉でシエルに日本語や日本文化を教える日々。唯一の楽しみはタナカとのお茶を飲む時間。日本語で話せる唯一の時間だった。
『やっぱり緑茶は落ち着く……』
『ほっほっほっ』
一方的に話している事が多い。しかし、それでもナマエにとっては唯一日本語が通じる相手だと思っていた。
『シエル様はすぐにサボろうとするし、セバスチャンさんは厳しいし……私って一体何でこんな事してんだろ……』
小さく呟いたナマエに、タナカは笑いながら答えた。
『坊っちゃんはまだ子供なのです。勉強と仕事に追われ、同年代の子供の様に遊ぶ事も許されない。そんな坊っちゃんでも、貴女との時間は楽しいようですよ?』
『でも……』
『坊っちゃんがどうかなさいましたか?』
不意にタナカではない声で日本語で話し掛けられたナマエは、肩をビクつかせながら声の方向へと視線を移した。
『えっ……』
「これはこれはセバスチャン」
「セバスチャン……さん!?」
『坊っちゃんが何か致しましたか?ナマエさん』
そこには、確かに流暢な日本語で話すセバスチャンがいた。
「えっと……その……」
『日本語で結構ですよ?私も話せますから』
光の灯らない眼でナマエを見据えるセバスチャン。その視線に耐えられずにナマエは俯いた。
『日本語で話せるんなら……最初から日本語で話して下さい』
『そんな事していたら、貴女の為になりませんよ。この英国(くに)で生きていくには、それなりの言葉を紡げなくては話になりません。それに――』
「貴女の反応は退屈せずに済みますから」
耳元で今度は英語で囁くセバスチャン。
いきなりの出来事に固まっていると、クスクスと笑う声が降りかかってきた。
『悪魔……』
「えぇ。私はあくまで執事ですよ?」
ポツリと呟いたナマエの言葉を聞き逃さず、セバスチャンは綺麗に微笑んだ。
「それで?坊っちゃんがどうしたというのです?」
「別に……その……」
口籠るナマエの目から視線を外す事無く、セバスチャンは屈んで目線を合わせた。
「英語で言い難いのであれば、日本語で結構ですよ?」
「……なんでもないです」
ぷいっとセバスチャンから視線を逸らし、ナマエは湯のみをテーブルに置くとその場から走り去った。
「タナカさん、ナマエさんから何か伺っているのでは?」
「ほっほっほっ。彼女は彼女なりに奮闘している、といったところでしょうな」
「なる程……」
ナマエが走り去った方向へ目を向けると、セバスチャンは何かを思いついたかのように手をパンッと鳴らした。