真紅と漆黒
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「もう……何ですか?私達は唯一の通り道にずっといたのですが。貴方は一体何処からその袋小路の部屋へと入られたのです?《そのお姿》でしらばっくれるおつもりですか?」
「もう終わりにしよう?こんな茶番劇はさ」
「そうですね。もういいでしょう、グレルさん……いや《グレル・サトクリフ》さえ仮の姿でしょうが、くだらないお芝居はやめにしましょうよ《グレル》さん。“貴方の様な方”に人間界(こちら)でお会いするのは初めてです。お上手に《それらしく》振舞われていたじゃありませんか」
「お……上手……?」
降りしきる雨の中、グレルは呟いたかと思ったら顔を上げ笑った。
「ンフッ♡そーお?そうよ、《アタシ》女優なの。それもとびきり一流よ」
リボンと眼鏡を取り、懐から取り出したコームで髪を梳くと、黒かった髪色が鮮やかな紅色に変わった。
そのまま付け睫毛を付け、黒い手袋をはめ直すと違う眼鏡を装着するグレル。
「だけど、アナタだって《セバスチャン》じゃないでしょう?」
「坊っちゃんに頂いた名前ですから、《セバスチャン》ですよ……《今は》ね」
「あら、忠犬キャラなのね。色男はそれもステキだけど♡それじゃ改めまして、セバスチャン……いえ、セバスちゃん♡バーネット邸執事、グレル・サトクリフでございマス★執事同士、どうぞヨロシク♡」
投げキッスをするグレルに、鳥肌が立ったのはセバスチャンだけではなかった。ナマエもそのキャラの濃さに鳥肌が立っていた。
「ああ~、やっと本当の姿で会えた!スッピンで色男の前にいるの恥ずかしかったのヨ?髪もダッサイ色だったシィ~。ンフッ。悪魔が執事してるなんて初めて見たから、最初ビックリしちゃったワ」
「それは……貴方も同じでしょう?私も結構生きてますが、“貴方の様な方”が《執事》をしているなんて聞いた事がありませんから。神と人との中立であるはずの存在……死神!曲がりなりにも“神”である貴方が、何故執事など?」
「堅い事は言いっこナシよ。そうね……一人の女に惚れ込んじゃったってトコかしら」
シエルの息は尚も荒かった。
ナマエはこの後の惨劇を“知って”いる。だが、自分が“どうすべき”なのかがわからなかった。
「その女とは……」
「聞かなくてもわかってるんでしょう」
コツっと路地に響いた靴音に、シエルが反応した。
「セバスチャン」
「……マダム……」
セバスチャンの手を退けながら、シエルはマダム・レッドと対峙した。
「計算違いだったわ。まさかグレルの正体を見破れるヤツがシエルの傍にもいたなんてね」
「……最初の容疑者リストにはもちろん貴女(マダム)もいた。けれど、マダムのアリバイは完璧だった」
「酷いわねシエル。身内である私まで疑ってたの?」
「犯人(ジャック)になりえるのなら、血縁であろうが知り合いであろが関係ない。全ての殺人に関わるには容疑者リストにいたどの《人間》にも無理だった。もちろんマダムにも。だが、人ならざる者(死神)が共犯だと言うなら話は別だ。僕らに気づかれず一瞬でメアリの部屋に入れるのなら、遠く離れた子爵邸(ウエストエンド)から殺人現場(イーストエンド)まで一瞬で移動するのも可能だろう。そしてパーティー会場から従者が《ほんの数分》姿を消そうとも、誰も気にはしない……つまり切り裂きジャックでありえるのはお前《達》しかいない。マダム・レッド。そしてグレル・サトクリフ!切り裂きジャック事件の被害者には、《娼婦である事》《子宮がない事》以外にも共通点があった。全員がマダムが務めるロンドン中央病院で“ある手術”を受けている。その手術が施された患者を日付順にならべたものがこれだ」
ズボンのポケットから1枚の紙を取り出し、マダム・レッド達に見えるように掲げるシエル。その顔には、先程までの怯えはなかった。
「被害者の殺された順番と手術を受けた順番がキッチリと重なっている。このリストに名前が上がっていて《残っていた》のはその長屋に住むメアリ・ケリーだけ。張っていれば貴女達が現れると思っていた。救えは……しなかったが……」
「残念ねシエル。私の可愛い甥っ子……私の……姉さんの子……気付かなければまた一緒にチェスが打てたのに……」
「……」
マダム・レッドの言葉を遮ることなく、シエルは黙って聞いていた。
「だけど……《今度は》譲らないわ!!」
先程までの表情と打って変わって、マダム・レッドの顔は怒りに満ちていた。
「もう終わりにしよう?こんな茶番劇はさ」
「そうですね。もういいでしょう、グレルさん……いや《グレル・サトクリフ》さえ仮の姿でしょうが、くだらないお芝居はやめにしましょうよ《グレル》さん。“貴方の様な方”に人間界(こちら)でお会いするのは初めてです。お上手に《それらしく》振舞われていたじゃありませんか」
「お……上手……?」
降りしきる雨の中、グレルは呟いたかと思ったら顔を上げ笑った。
「ンフッ♡そーお?そうよ、《アタシ》女優なの。それもとびきり一流よ」
リボンと眼鏡を取り、懐から取り出したコームで髪を梳くと、黒かった髪色が鮮やかな紅色に変わった。
そのまま付け睫毛を付け、黒い手袋をはめ直すと違う眼鏡を装着するグレル。
「だけど、アナタだって《セバスチャン》じゃないでしょう?」
「坊っちゃんに頂いた名前ですから、《セバスチャン》ですよ……《今は》ね」
「あら、忠犬キャラなのね。色男はそれもステキだけど♡それじゃ改めまして、セバスチャン……いえ、セバスちゃん♡バーネット邸執事、グレル・サトクリフでございマス★執事同士、どうぞヨロシク♡」
投げキッスをするグレルに、鳥肌が立ったのはセバスチャンだけではなかった。ナマエもそのキャラの濃さに鳥肌が立っていた。
「ああ~、やっと本当の姿で会えた!スッピンで色男の前にいるの恥ずかしかったのヨ?髪もダッサイ色だったシィ~。ンフッ。悪魔が執事してるなんて初めて見たから、最初ビックリしちゃったワ」
「それは……貴方も同じでしょう?私も結構生きてますが、“貴方の様な方”が《執事》をしているなんて聞いた事がありませんから。神と人との中立であるはずの存在……死神!曲がりなりにも“神”である貴方が、何故執事など?」
「堅い事は言いっこナシよ。そうね……一人の女に惚れ込んじゃったってトコかしら」
シエルの息は尚も荒かった。
ナマエはこの後の惨劇を“知って”いる。だが、自分が“どうすべき”なのかがわからなかった。
「その女とは……」
「聞かなくてもわかってるんでしょう」
コツっと路地に響いた靴音に、シエルが反応した。
「セバスチャン」
「……マダム……」
セバスチャンの手を退けながら、シエルはマダム・レッドと対峙した。
「計算違いだったわ。まさかグレルの正体を見破れるヤツがシエルの傍にもいたなんてね」
「……最初の容疑者リストにはもちろん貴女(マダム)もいた。けれど、マダムのアリバイは完璧だった」
「酷いわねシエル。身内である私まで疑ってたの?」
「犯人(ジャック)になりえるのなら、血縁であろうが知り合いであろが関係ない。全ての殺人に関わるには容疑者リストにいたどの《人間》にも無理だった。もちろんマダムにも。だが、人ならざる者(死神)が共犯だと言うなら話は別だ。僕らに気づかれず一瞬でメアリの部屋に入れるのなら、遠く離れた子爵邸(ウエストエンド)から殺人現場(イーストエンド)まで一瞬で移動するのも可能だろう。そしてパーティー会場から従者が《ほんの数分》姿を消そうとも、誰も気にはしない……つまり切り裂きジャックでありえるのはお前《達》しかいない。マダム・レッド。そしてグレル・サトクリフ!切り裂きジャック事件の被害者には、《娼婦である事》《子宮がない事》以外にも共通点があった。全員がマダムが務めるロンドン中央病院で“ある手術”を受けている。その手術が施された患者を日付順にならべたものがこれだ」
ズボンのポケットから1枚の紙を取り出し、マダム・レッド達に見えるように掲げるシエル。その顔には、先程までの怯えはなかった。
「被害者の殺された順番と手術を受けた順番がキッチリと重なっている。このリストに名前が上がっていて《残っていた》のはその長屋に住むメアリ・ケリーだけ。張っていれば貴女達が現れると思っていた。救えは……しなかったが……」
「残念ねシエル。私の可愛い甥っ子……私の……姉さんの子……気付かなければまた一緒にチェスが打てたのに……」
「……」
マダム・レッドの言葉を遮ることなく、シエルは黙って聞いていた。
「だけど……《今度は》譲らないわ!!」
先程までの表情と打って変わって、マダム・レッドの顔は怒りに満ちていた。