真紅と漆黒
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あまりの寒さにブルリと震えると、セバスチャンは自身のコートを脱ごうとする。
「目立つから貸さんでいい。ここに張っていれば、本当に《奴》は来るんだな?」
「ええ。入り口はあそこしかありませんし、唯一の通り道はここだけですから」
「シエル様、コレを」
「ん?」
「私のであれば目立ちませんので。お風邪を召さないよう、ご着用下さい」
「ああ……」
ナマエが差し出した上着を羽織り、セバスチャンに確認するシエル。
「次に狙われるのは、あの長屋に住むメアリ・ケリーで間違いないな?」
「ええ。間違いないと何度もお伝えしているはずですが?」
「たしかに……殺された娼婦達には《臓器がない》以外にも《共通点》があった。だが、《奴》が殺す必要性はどこにある?それに僕は……って聞いてるのか、セバスチャン!」
「あ、すみません。つい。まれに見る美人でしたので」
シエルの話はそっちのけで、セバスチャンは野良猫を抱き上げ戯れていた。
「飼わないからな!戻しなさい!」
「はい……かわいいのに……」
「ったく……」
「緊張感ないですねぇ」
シエルとセバスチャンのやり取りにクスクス笑うナマエは、つい思っている事を口に出していた。しかし、その言葉は二人の耳には届くことはなかった。
「――ええ。《人間には》不可能です」
「そういうことか……貴様……」
「私は最初から何度も本当の事を申し上げていましたよ。調査結果には《何一つ》嘘はついておりません」
悪魔の笑みを浮かべるセバスチャンは続けた。
「“医学に関わる者”“《秘密結社》や《黒魔術》に関わりがある者”そして“事件発覚前夜にアリバイのない者”、この条件を満たす《人間》はドルイット子爵だけで間違いありません」
「確かにお前は嘘をついていなかった。だが……調査はただの茶番だったわけだがな!」
周りに散らばった書類を目の前で破るシエル。
「ご命令でしたので」
そんなシエルの怒りにも、セバスチャンはあくまで笑みを浮かべている。
そんなセバスチャンに苛立ち、シエルはセバスチャン目掛けて破った書類を投げつけるも、彼はそれを綺麗に避けた。
「おやおや八つ当たりですか?坊っちゃんは私が《そういうもの》だとご承知の上でお傍に置かれているのでは?」
「……うるさいっ。知ってる!」
散らばった書類を拾っているナマエを手伝いながら、セバスチャンはシエルに笑みを向ける。
「そいつは……《お前と同じ》なのか?」
書類を拾う手を止め、セバスチャンは立ち上がり思索した。
「いえ、違いますね。ああいった方が人間の世界に居る事自体、珍しい事だと思いますが――」
「人間でも悪魔でもない?何者だ……そいつは。ナマエと《同類》か?」
「違いますね。それは――」
シエルが思考に耽っていると、突然女の悲鳴が響き渡った。
「なっ!?誰も部屋にはっ……」
「行きましょう!」
急ぎ走り、悲鳴の元へと向かう。
無断でドアを勢い良く開けたシエルの顔には血が舞った。
「いけません!」
急いでセバスチャンがシエルの目を塞ぐも、彼は見てしまった。その“惨状”を。
「――あ――あ、あ。うっ。ぐ、えっ」
目に焼き付いたその光景に耐えられず、シエルは吐き出してしまった。
(あぁ……降りだした。雨が……悲劇の幕が上がってしまった)
「随分と派手に《散らかし》ましたね。“切り裂きジャック”――いや、グレル・サトクリフ」
「ち……違います。コレは……叫び声に駆けつけた時にはもうっ」
「目立つから貸さんでいい。ここに張っていれば、本当に《奴》は来るんだな?」
「ええ。入り口はあそこしかありませんし、唯一の通り道はここだけですから」
「シエル様、コレを」
「ん?」
「私のであれば目立ちませんので。お風邪を召さないよう、ご着用下さい」
「ああ……」
ナマエが差し出した上着を羽織り、セバスチャンに確認するシエル。
「次に狙われるのは、あの長屋に住むメアリ・ケリーで間違いないな?」
「ええ。間違いないと何度もお伝えしているはずですが?」
「たしかに……殺された娼婦達には《臓器がない》以外にも《共通点》があった。だが、《奴》が殺す必要性はどこにある?それに僕は……って聞いてるのか、セバスチャン!」
「あ、すみません。つい。まれに見る美人でしたので」
シエルの話はそっちのけで、セバスチャンは野良猫を抱き上げ戯れていた。
「飼わないからな!戻しなさい!」
「はい……かわいいのに……」
「ったく……」
「緊張感ないですねぇ」
シエルとセバスチャンのやり取りにクスクス笑うナマエは、つい思っている事を口に出していた。しかし、その言葉は二人の耳には届くことはなかった。
「――ええ。《人間には》不可能です」
「そういうことか……貴様……」
「私は最初から何度も本当の事を申し上げていましたよ。調査結果には《何一つ》嘘はついておりません」
悪魔の笑みを浮かべるセバスチャンは続けた。
「“医学に関わる者”“《秘密結社》や《黒魔術》に関わりがある者”そして“事件発覚前夜にアリバイのない者”、この条件を満たす《人間》はドルイット子爵だけで間違いありません」
「確かにお前は嘘をついていなかった。だが……調査はただの茶番だったわけだがな!」
周りに散らばった書類を目の前で破るシエル。
「ご命令でしたので」
そんなシエルの怒りにも、セバスチャンはあくまで笑みを浮かべている。
そんなセバスチャンに苛立ち、シエルはセバスチャン目掛けて破った書類を投げつけるも、彼はそれを綺麗に避けた。
「おやおや八つ当たりですか?坊っちゃんは私が《そういうもの》だとご承知の上でお傍に置かれているのでは?」
「……うるさいっ。知ってる!」
散らばった書類を拾っているナマエを手伝いながら、セバスチャンはシエルに笑みを向ける。
「そいつは……《お前と同じ》なのか?」
書類を拾う手を止め、セバスチャンは立ち上がり思索した。
「いえ、違いますね。ああいった方が人間の世界に居る事自体、珍しい事だと思いますが――」
「人間でも悪魔でもない?何者だ……そいつは。ナマエと《同類》か?」
「違いますね。それは――」
シエルが思考に耽っていると、突然女の悲鳴が響き渡った。
「なっ!?誰も部屋にはっ……」
「行きましょう!」
急ぎ走り、悲鳴の元へと向かう。
無断でドアを勢い良く開けたシエルの顔には血が舞った。
「いけません!」
急いでセバスチャンがシエルの目を塞ぐも、彼は見てしまった。その“惨状”を。
「――あ――あ、あ。うっ。ぐ、えっ」
目に焼き付いたその光景に耐えられず、シエルは吐き出してしまった。
(あぁ……降りだした。雨が……悲劇の幕が上がってしまった)
「随分と派手に《散らかし》ましたね。“切り裂きジャック”――いや、グレル・サトクリフ」
「ち……違います。コレは……叫び声に駆けつけた時にはもうっ」