真紅と漆黒
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「あちゃ~、これで通算46連敗だわ。あんたは昔からこーゆーの強くって、遊んであげてる私が負けてばっかりだった……ふふっ。あんたが生まれた日のこと、今でもよく覚えてるわ。あの頃はまだ私も新米看護師(ナース)で……お産中もオロオロしてばっかりだった。生まれたあんはた小っちゃくて可愛くって……私が守ってあげなくちゃって思った。私にはとうとう子供は出来なかったけど……」
立ち上がり、シエルの頭を撫でながらマダム・レッドは続けた。
「あんたの事、本当の息子みたいに思ってるのよ。本当なら裏社会から足を洗わせたい」
「今僕がここにいることは、僕が望んだことで僕が選んだことだ」
頭を撫でているマダム・レッドの手を払いのけると、シエルは確固たる意志をみせた。
「だから、僕は後悔していないし甘えてはいけない……誰にも」
書類整理を終えたセバスチャンは、ナマエから残っている資料を奪い取った。
「あとは私が……貴女は坊っちゃんを頼みます」
「は?」
「そろそろご就寝のお時間ですので」
「あぁ……そういう事」
ふと視線をシエルに戻すと、セバスチャンが言った通りシエルは立ち上がっていた。
「僕はそろそろ失礼する。楽しかった、マダム」
マダム・レッドの頬にキスをするシエル。
「次は負けないわよ、シエル」
「ふ……おやすみ」
「新しいお茶お持ちしま……あわっ?」
部屋の出入り口でグレルとすれ違うも、シエルは何も言わずに通り過ぎていく。
その後をナマエはセバスチャンの指示通りについて行く。
「……で?」
「はい?」
寝室に入り、ベッドに横たわった主からの不意な問い掛け。意味がわからなかった。
「お前はセバスチャンと違い《人間》なんだろう?どう思う?この事件」
わざと《人間》と強調して言うシエルに薄っすらと殺意が湧いた。
「はぁ……シエル様にとってかなり悲しい結末になるだろうという事しか、今は申し上げられません」
「……まるで犯人を知っているかの様な口ぶりだな」
「《攻略本》をお望みで?」
「いや……そんな物に頼っていてはつまらない」
シエルがニヤリと笑みを浮かべたかと思うと、寝室の扉をノックする音が聞こえた。
「……どうだ」
室内に入ってきたセバスチャンは、チラリとナマエに視線をやるとすぐに書類に目を戻した。
「何度シミュレーションしても、子爵以外に一連の事件に関われる人間はいませんね」
「はーっ、調査条件を変えるしかないのか?昨日の事件に子爵は関われない!」
「そうですね。子爵邸にいた人間には不可能です」
「とりあえず明日は――」
そこで髪をかき上げていたシエルの動きが止まった。
「……セバスチャン……まさか……」
シエルの問いに、セバスチャンは薄っすらと笑みを浮かべた。
「何度も言っているでしょう。私は嘘をつきません、と。私は貴方の《力》であり《手足》であり《駒》……全てを決め選びとるのは自分だと、その為の《力》になれと、《あの日》貴方がそう仰ったのです。私はあくまで《執事》。出すぎた意見など申しません。ご主人様(あなた)に命ぜられた事と聞かれた事だけを忠実に」
そこまで言うと、セバスチャンは起き上がっていたシエルの足元に跪いた。
「あそこに居た人間には不可能なんだな?」
「ええ、そうです」
「そういうことか……貴様……」
悔しそうに表情を歪めるシエルに対し、セバスチャンはまた口元を緩めた。
「貴方の命令一つで、私は貴方の《駒》となり《剣》となる」
セバスチャンがまとめていた書類を宙に放り投げるとそれはヒラヒラと舞いながら床に落ちていく。
「さぁ……王手(チェック)を、ご主人様」
ある晩、貧民街には似合わない三人が路上に立っていた。
「寒い……」
「いくら貧民街(イーストエンド)でいつものお召し物が目立つとはいえ、やはりその服ではお寒いでしょう。一雨きそうですし」
どんよりとした空模様のその夜、シエルはセバスチャンとナマエを従えてイーストエンドの路地に立っていた。
立ち上がり、シエルの頭を撫でながらマダム・レッドは続けた。
「あんたの事、本当の息子みたいに思ってるのよ。本当なら裏社会から足を洗わせたい」
「今僕がここにいることは、僕が望んだことで僕が選んだことだ」
頭を撫でているマダム・レッドの手を払いのけると、シエルは確固たる意志をみせた。
「だから、僕は後悔していないし甘えてはいけない……誰にも」
書類整理を終えたセバスチャンは、ナマエから残っている資料を奪い取った。
「あとは私が……貴女は坊っちゃんを頼みます」
「は?」
「そろそろご就寝のお時間ですので」
「あぁ……そういう事」
ふと視線をシエルに戻すと、セバスチャンが言った通りシエルは立ち上がっていた。
「僕はそろそろ失礼する。楽しかった、マダム」
マダム・レッドの頬にキスをするシエル。
「次は負けないわよ、シエル」
「ふ……おやすみ」
「新しいお茶お持ちしま……あわっ?」
部屋の出入り口でグレルとすれ違うも、シエルは何も言わずに通り過ぎていく。
その後をナマエはセバスチャンの指示通りについて行く。
「……で?」
「はい?」
寝室に入り、ベッドに横たわった主からの不意な問い掛け。意味がわからなかった。
「お前はセバスチャンと違い《人間》なんだろう?どう思う?この事件」
わざと《人間》と強調して言うシエルに薄っすらと殺意が湧いた。
「はぁ……シエル様にとってかなり悲しい結末になるだろうという事しか、今は申し上げられません」
「……まるで犯人を知っているかの様な口ぶりだな」
「《攻略本》をお望みで?」
「いや……そんな物に頼っていてはつまらない」
シエルがニヤリと笑みを浮かべたかと思うと、寝室の扉をノックする音が聞こえた。
「……どうだ」
室内に入ってきたセバスチャンは、チラリとナマエに視線をやるとすぐに書類に目を戻した。
「何度シミュレーションしても、子爵以外に一連の事件に関われる人間はいませんね」
「はーっ、調査条件を変えるしかないのか?昨日の事件に子爵は関われない!」
「そうですね。子爵邸にいた人間には不可能です」
「とりあえず明日は――」
そこで髪をかき上げていたシエルの動きが止まった。
「……セバスチャン……まさか……」
シエルの問いに、セバスチャンは薄っすらと笑みを浮かべた。
「何度も言っているでしょう。私は嘘をつきません、と。私は貴方の《力》であり《手足》であり《駒》……全てを決め選びとるのは自分だと、その為の《力》になれと、《あの日》貴方がそう仰ったのです。私はあくまで《執事》。出すぎた意見など申しません。ご主人様(あなた)に命ぜられた事と聞かれた事だけを忠実に」
そこまで言うと、セバスチャンは起き上がっていたシエルの足元に跪いた。
「あそこに居た人間には不可能なんだな?」
「ええ、そうです」
「そういうことか……貴様……」
悔しそうに表情を歪めるシエルに対し、セバスチャンはまた口元を緩めた。
「貴方の命令一つで、私は貴方の《駒》となり《剣》となる」
セバスチャンがまとめていた書類を宙に放り投げるとそれはヒラヒラと舞いながら床に落ちていく。
「さぁ……王手(チェック)を、ご主人様」
ある晩、貧民街には似合わない三人が路上に立っていた。
「寒い……」
「いくら貧民街(イーストエンド)でいつものお召し物が目立つとはいえ、やはりその服ではお寒いでしょう。一雨きそうですし」
どんよりとした空模様のその夜、シエルはセバスチャンとナマエを従えてイーストエンドの路地に立っていた。