真紅と漆黒
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冷静なシエルとは対照的にざわつく室内。
しばらくすると、骨の軋む音や悲鳴が会場に響いた。
「やれやれ」
全てが終わると、何もしていないのに蝋燭に火が灯った。
「本当に捕まるしか能がありませんね、貴方は」
会場内にいた人間を片付けたのはセバスチャンとナマエだった。
「呼べば私が来ると思って不用心すぎるのでは?」
「僕が契約書を持つ限り、僕が喚ばずともお前はどこにでも追ってくるだろう?」
「……」
シエルの瞳に刻まれた契約書を無言で見遣り、セバスチャンは笑みを浮かべて答える。
「……もちろん」
言いながら、セバスチャンは鋼鉄製の檻をぐにゃりと曲げて出口を作った。
「どこへでもお供します、最期まで。たとえこの身が滅びようとも、私は絶対に貴方のお傍を離れません。地獄の果てまでお供しましょう。私は嘘は言いませんよ、人間の様にね」
セバスチャンが指を上げると、シエルを縛っていた縄が自然と切れた。
「……それでいい。お前だけは僕に嘘をつくな。絶対に!」
「御意、ご主人様(イエス、マイロード)」
恭しくお辞儀して見せるセバスチャンだが、一つ気になっている事があった。
「ナマエ、何故坊っちゃんをお助けしなかったのです?」
「は?」
「貴女の方が先に競売に賭けられていたのでしょう?なら、坊っちゃんをお助けすることが出来たのでは?」
「……今みたいに《影》がないと無理。それに、変に騒動を起こしたら逃げられるでしょ?」
「分かりました……後で“お仕置き”ですね」
「はぁ!?なんで?ねぇ、なんで?!」
「今、ここで、“お仕置き”されたいのですか?」
あくまでにっこりと微笑むセバスチャンに勝てないと悟ったナマエは、大人しく項垂れた。
「――さて、すでにヤードには連絡しておきました。じき到着するでしょう」
「なら長居は無用だな。僕らが居ては猟犬(ヤード)共もいい顔はしないだろう」
「そのお姿ではなおさら……ですしね、《お嬢様》」
クスッと笑うセバスチャンに、シエルは自分がドレスを着ているという事を思い出した。
「ゴホン!とにかく!切り裂きジャック事件はこれで解決だ!随分とあっけなかったがな……」
事件が解決したとシエルが安堵していると、外から騒がしい声が聞こえてきた。
「警部、こちらです!」
「!」
「どうやらヤードが到着した様ですね」
「はやっ……」
シエル救出からヤード到着までの時間はあまりにも短かった。
「ふぁ!?」
「へ??」
「では参りましょう」
器用にシエルとナマエを両手に抱き上げると、セバスチャンは手近な窓から外に出た。
翌日、新聞の一面はまたもや切り裂きジャックが出たとの記事がデカデカと載っていた。
「どういうことだ!?子爵は昨夜どこにも行っていなかった!」
「たった一人の容疑者が殺人不可能となると……模倣犯……否、最初から複数犯の可能性もあるね」
「子爵はハズレだったってこと?」
「また振り出しだ……もう一度絞り直す。セバスチャン、リストを」
「かしこまりました」
その日の夜、外は荒れ模様と化していた。
「ロンドンの人口だけで450万人。シーズンにはもっと人が増える。条件をゆるめただけで、容疑者の人数はふくれ上がる」
セバスチャンの用意したリストを見ながら、シエルは思考を投げ出したくなっていた。
「シエル様、あまりご無理をなさらない様に……」
「大丈夫だ。これ以上被害者を出す前に、なんとしてでもこの《リスト》から犯人を見つけないといけないからな」
セバスチャンと共にリストを整理し直しながら、ナマエはシエルを気遣った。
「妬けてしまいますね……」
「何か言ったか?」
「いいえ?」
ポツリとセバスチャンが呟くと、シエルは耳ざとくその言葉を聞き取った。
「まだやってるの?」
三人でリストの洗い出しを行っていると、マダム・レッドとグレルがやって来た。
「マダム・レッド」
「あんまり根つめてもイイことないわよ。息抜きに《コレ》やらない?」
「チェスセットか……懐かしいな」
マダム・レッドが持って来たのは小さなチェスセット。
しばらくすると、骨の軋む音や悲鳴が会場に響いた。
「やれやれ」
全てが終わると、何もしていないのに蝋燭に火が灯った。
「本当に捕まるしか能がありませんね、貴方は」
会場内にいた人間を片付けたのはセバスチャンとナマエだった。
「呼べば私が来ると思って不用心すぎるのでは?」
「僕が契約書を持つ限り、僕が喚ばずともお前はどこにでも追ってくるだろう?」
「……」
シエルの瞳に刻まれた契約書を無言で見遣り、セバスチャンは笑みを浮かべて答える。
「……もちろん」
言いながら、セバスチャンは鋼鉄製の檻をぐにゃりと曲げて出口を作った。
「どこへでもお供します、最期まで。たとえこの身が滅びようとも、私は絶対に貴方のお傍を離れません。地獄の果てまでお供しましょう。私は嘘は言いませんよ、人間の様にね」
セバスチャンが指を上げると、シエルを縛っていた縄が自然と切れた。
「……それでいい。お前だけは僕に嘘をつくな。絶対に!」
「御意、ご主人様(イエス、マイロード)」
恭しくお辞儀して見せるセバスチャンだが、一つ気になっている事があった。
「ナマエ、何故坊っちゃんをお助けしなかったのです?」
「は?」
「貴女の方が先に競売に賭けられていたのでしょう?なら、坊っちゃんをお助けすることが出来たのでは?」
「……今みたいに《影》がないと無理。それに、変に騒動を起こしたら逃げられるでしょ?」
「分かりました……後で“お仕置き”ですね」
「はぁ!?なんで?ねぇ、なんで?!」
「今、ここで、“お仕置き”されたいのですか?」
あくまでにっこりと微笑むセバスチャンに勝てないと悟ったナマエは、大人しく項垂れた。
「――さて、すでにヤードには連絡しておきました。じき到着するでしょう」
「なら長居は無用だな。僕らが居ては猟犬(ヤード)共もいい顔はしないだろう」
「そのお姿ではなおさら……ですしね、《お嬢様》」
クスッと笑うセバスチャンに、シエルは自分がドレスを着ているという事を思い出した。
「ゴホン!とにかく!切り裂きジャック事件はこれで解決だ!随分とあっけなかったがな……」
事件が解決したとシエルが安堵していると、外から騒がしい声が聞こえてきた。
「警部、こちらです!」
「!」
「どうやらヤードが到着した様ですね」
「はやっ……」
シエル救出からヤード到着までの時間はあまりにも短かった。
「ふぁ!?」
「へ??」
「では参りましょう」
器用にシエルとナマエを両手に抱き上げると、セバスチャンは手近な窓から外に出た。
翌日、新聞の一面はまたもや切り裂きジャックが出たとの記事がデカデカと載っていた。
「どういうことだ!?子爵は昨夜どこにも行っていなかった!」
「たった一人の容疑者が殺人不可能となると……模倣犯……否、最初から複数犯の可能性もあるね」
「子爵はハズレだったってこと?」
「また振り出しだ……もう一度絞り直す。セバスチャン、リストを」
「かしこまりました」
その日の夜、外は荒れ模様と化していた。
「ロンドンの人口だけで450万人。シーズンにはもっと人が増える。条件をゆるめただけで、容疑者の人数はふくれ上がる」
セバスチャンの用意したリストを見ながら、シエルは思考を投げ出したくなっていた。
「シエル様、あまりご無理をなさらない様に……」
「大丈夫だ。これ以上被害者を出す前に、なんとしてでもこの《リスト》から犯人を見つけないといけないからな」
セバスチャンと共にリストを整理し直しながら、ナマエはシエルを気遣った。
「妬けてしまいますね……」
「何か言ったか?」
「いいえ?」
ポツリとセバスチャンが呟くと、シエルは耳ざとくその言葉を聞き取った。
「まだやってるの?」
三人でリストの洗い出しを行っていると、マダム・レッドとグレルがやって来た。
「マダム・レッド」
「あんまり根つめてもイイことないわよ。息抜きに《コレ》やらない?」
「チェスセットか……懐かしいな」
マダム・レッドが持って来たのは小さなチェスセット。