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「今夜ランドル公の屋敷へ馬車を迎えに出せ」
「馬車を?」
「今夜は夜会を開く」
「かしこまりました。では馬車の手配を済ませましたら、お部屋にアフタヌーンティーをお持ち致します。本日のお茶菓子は、リンゴとレーズンのディープパイをご用意しております。焼きたてをお持ちしますので、少々お待ち下さい」
「ああ」
シエルが立ち去ってもなお、使用人達の騒動は終わらない。
「……さて」
一瞬にして床を走り回っていた数匹のネズミを確保すると、セバスチャンは窓から外に放り投げた。
「さ、貴方達も遊んでないで仕事なさい。今晩はお客様がお見えになりますよ」
「「「ふぁい……」」」
項垂れる3人とは対照的に、タナカは虫取り網の中に数匹のネズミを入れて楽しそうにしていた。
「そういえば……ナマエさんがいらっしゃいませんね。どなたかどこにいらっしゃるかご存知ありませんか?」
「そういや、気付いたらいなかったな」
「僕も見てませ~ん」
「見てないですだ」
「ほっほっほっ」
使用人達の返答から、彼女の居場所を特定する事は叶わなかった。
「ハァ……彼女は別の“意味”で騒動を起こしそうで些か不安なんですがね……」
溜息を零しつつ、調理場へと向かうセバスチャン。
長い廊下を歩いていると、窓の外から探し人の声が微かに聞こえてきた。
「そこにいらっしゃったんですか……」
呆れつつ窓を開けると、そこには歳相応の笑顔でクラウスと談笑しているナマエがいた。
そんなナマエの姿を見て、セバスチャンの中で“ナニか”が蠢いた。
今まで見た事がない彼女の笑顔。セバスチャンが今まで見た事があるのは、困った様に笑う姿か悲嘆にくれる姿のみ。
この様に笑う姿は初めて見たのだ。
「その節は大変ご迷惑をお掛けしました、クラウス様」
深々と礼をし、クラウスにお礼を言うナマエ。
「いやなに、君が元気になっていたなら礼なんて不要だよ。今はシエルの家庭教師をしているんだって?」
「はい。日本語と日本文化をお教えしております」
「こちらの言葉も、随分流暢に話せるようになったね」
優しく頭を撫でられ、安堵感から笑みを溢すナマエ。
暫くクラウスと談笑していると、近くの窓から自身を呼ぶ声が聞こえた。
「ナマエさん!業務中ですよ!!」
微かな怒気を含んだその声の主に小さく息を吐き出し、困った様に笑うナマエ。
「ああ、引き止めてしまって悪かったね」
「いえ、私もクラウス様に拾って頂いたお礼を言いたかったのでお気になさらないで下さい」
深々と頭を垂れ、ナマエはクラウスと別れるとセバスチャンの元へと急いだ。
「申し訳ありません、セバスチャンさん」
肩で息をしながら側に来たナマエに、セバスチャンは安堵感を覚えた。
(こんな感情……今まで持った事がありませんね)
自身の元へと駆け寄ってきたナマエを見て、セバスチャンは言い知れない感覚に陥っていた。
「セバスチャンさん?」
不思議そうに首を傾げながらこちらを見るナマエに、漸く思考を停止させたセバスチャン。
「ああ、申し訳ありません。これから坊っちゃんにアフタヌーンティーとお茶菓子をお出しするので、お手伝い頂けますか?」
「はぁ……だけど、なんで家庭教師の私がそんな事を?」
「いいですか?」
セバスチャンが有無を言わさぬ笑顔でズイッと顔を近づけると、ナマエは黙ってコクコクと頷いた。
やがてシエルに出すアフタヌーンティーとお茶菓子を用意し終え、そのままセバスチャンに連れられてシエルの私室へと向かったナマエ。
「坊っちゃん、アフタヌーンティーをお持ち致しました」
「馬車を?」
「今夜は夜会を開く」
「かしこまりました。では馬車の手配を済ませましたら、お部屋にアフタヌーンティーをお持ち致します。本日のお茶菓子は、リンゴとレーズンのディープパイをご用意しております。焼きたてをお持ちしますので、少々お待ち下さい」
「ああ」
シエルが立ち去ってもなお、使用人達の騒動は終わらない。
「……さて」
一瞬にして床を走り回っていた数匹のネズミを確保すると、セバスチャンは窓から外に放り投げた。
「さ、貴方達も遊んでないで仕事なさい。今晩はお客様がお見えになりますよ」
「「「ふぁい……」」」
項垂れる3人とは対照的に、タナカは虫取り網の中に数匹のネズミを入れて楽しそうにしていた。
「そういえば……ナマエさんがいらっしゃいませんね。どなたかどこにいらっしゃるかご存知ありませんか?」
「そういや、気付いたらいなかったな」
「僕も見てませ~ん」
「見てないですだ」
「ほっほっほっ」
使用人達の返答から、彼女の居場所を特定する事は叶わなかった。
「ハァ……彼女は別の“意味”で騒動を起こしそうで些か不安なんですがね……」
溜息を零しつつ、調理場へと向かうセバスチャン。
長い廊下を歩いていると、窓の外から探し人の声が微かに聞こえてきた。
「そこにいらっしゃったんですか……」
呆れつつ窓を開けると、そこには歳相応の笑顔でクラウスと談笑しているナマエがいた。
そんなナマエの姿を見て、セバスチャンの中で“ナニか”が蠢いた。
今まで見た事がない彼女の笑顔。セバスチャンが今まで見た事があるのは、困った様に笑う姿か悲嘆にくれる姿のみ。
この様に笑う姿は初めて見たのだ。
「その節は大変ご迷惑をお掛けしました、クラウス様」
深々と礼をし、クラウスにお礼を言うナマエ。
「いやなに、君が元気になっていたなら礼なんて不要だよ。今はシエルの家庭教師をしているんだって?」
「はい。日本語と日本文化をお教えしております」
「こちらの言葉も、随分流暢に話せるようになったね」
優しく頭を撫でられ、安堵感から笑みを溢すナマエ。
暫くクラウスと談笑していると、近くの窓から自身を呼ぶ声が聞こえた。
「ナマエさん!業務中ですよ!!」
微かな怒気を含んだその声の主に小さく息を吐き出し、困った様に笑うナマエ。
「ああ、引き止めてしまって悪かったね」
「いえ、私もクラウス様に拾って頂いたお礼を言いたかったのでお気になさらないで下さい」
深々と頭を垂れ、ナマエはクラウスと別れるとセバスチャンの元へと急いだ。
「申し訳ありません、セバスチャンさん」
肩で息をしながら側に来たナマエに、セバスチャンは安堵感を覚えた。
(こんな感情……今まで持った事がありませんね)
自身の元へと駆け寄ってきたナマエを見て、セバスチャンは言い知れない感覚に陥っていた。
「セバスチャンさん?」
不思議そうに首を傾げながらこちらを見るナマエに、漸く思考を停止させたセバスチャン。
「ああ、申し訳ありません。これから坊っちゃんにアフタヌーンティーとお茶菓子をお出しするので、お手伝い頂けますか?」
「はぁ……だけど、なんで家庭教師の私がそんな事を?」
「いいですか?」
セバスチャンが有無を言わさぬ笑顔でズイッと顔を近づけると、ナマエは黙ってコクコクと頷いた。
やがてシエルに出すアフタヌーンティーとお茶菓子を用意し終え、そのままセバスチャンに連れられてシエルの私室へと向かったナマエ。
「坊っちゃん、アフタヌーンティーをお持ち致しました」