奇劇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いっ……痛いよ伯爵ぅ。苦しいよぉ」
腹を撃たれてなお、ケルヴィン男爵はシエルに縋り付いた。
「お願……お願いだ。殺……殺すならあの日の皆とお揃いに……っ」
「あいつらとお揃いに?」
「ギャッ」
《お揃い》と聞いたシエルは、ケルヴィン男爵の頭を踏みつけた。
「なら芋虫の様に跪いて、悪魔におねだりするんだな」
銃口をケルヴィン男爵の頭に向けた時、ジョーカーが叫んだ。
「頼む、殺さないでくれ。そんな人でも俺らの恩人なんだ。親に捨てられ、国に捨てられ、明日飢え死にするかもしれない恐怖から俺達を救ってくれた。貧困院(ワークハウス)にはまだ幼い弟達がたくさんいる。その人がいないと生きていけない」
「だから――子供達を攫って来たのか?」
ナマエの影がどんどんとその大きさを変えていく。
「自分達が助かるためにこの男の言うがまま、他人を犠牲に?」
一瞬目を見開いたジョーカーだが、次の瞬間には諦めたように言葉を紡いだ。
「ああ、そうだ。俺らみたいな生まれのモンにとっちゃ、この英国は地獄でしかない。俺らにはパンを買う金も、仲間をかばう腕も何もなかった。でもお父様は俺達をゴミ溜めから救い出して、大切なものを守れる手足をくれた。だから俺らは生きることを決めた。たとえ別の地獄が待っていようと。間違ってることなんかはじめからわかってた。でも俺は――」
「お前は間違っていない」
「え?」
シエルの意外な言葉に、ジョーカーは思わず声を漏らした。
「自分の世界を守るために戦ったんだ。それでいいじゃないか。所詮この世の正義など、力を持つ者が自分のために作った建前。誰も他人のことなど考えちゃいない。ぼやぼやしていれば《もっていかれる》。元々人間は2種類しか存在しない。奪う者と奪われる者。そして――今日お前達は僕に未来を奪われる。それだけの話だ」
「は……はは。あはははっ、確かにそうだな。けどな、お前らも今夜大事なモンを失う事になる」
「?」
「団員達がお前の屋敷に向かっている」
ジョーカーの言葉に、シエルの脳裏にはエリザベスの姿が浮かんだ。
「何故俺達が誰にも見つからずに子供を攫ってこれたと思う?目撃者は《皆いなくなる》からだ」
顔色を悪くしながらも、ジョーカーは続けた。
「サーカス団(俺達)はプロだ。仕事中接触した者はどんな理由があろうと消す。伯爵(ターゲット)がいない屋敷中を探し回って、一体何人消されるだろうな?」
「消される?」
「ああ。使用人まで残らずな」
「使用人(あいつら)が?」
ジョーカーの言葉に、セバスチャンは思わず笑い声を漏らしていた。
「何がおかしい……ッ」
「あいつらを誰だと思っている。《ファントムハイヴ》家の使用人だぞ。《あれら》は僕と執事(セバスチャン)が選び雇用した私兵」
「なっ……」
「何があってもファントムハイヴ家の秘密と誇りを守る。それが――ファントムハイヴ家の使用人だ」
「私兵……だと?」
「ファントムハイヴは女王の憂いを《無きもの》にするためだけに存在する影(ファントム)。その巣窟に足を踏み入れれば、光ある場所には二度と戻れない」
「あいつらだってプロだ。そう簡単に――」
「信じるのはご自由ですが、私が選んだ人材だという事をお忘れなく」
ナイフに付いた血を振り払いながら言うセバスチャン。
「くっ……」
そんなセバスチャンの表情を見て、ジョーカーは絶望しか感じなかった。
「……ッ俺達はどうすりゃよかったんかなぁ。笛吹き息子のトム(ナーサリー・ライム)みたいに、“吹ける曲(できること)はひとつだけ”で……でももし……もし生まれたのがこの国じゃなかったら、自分が、身体がこうじゃなかったら……こんなっ……」
「自分達が一番不幸だと思うな。どこの国だって……アンタと同じ――いや、それ以上に辛い思いをしながら生きてる人だっている!」
ナマエの言葉に、ジョーカーは悔し涙を流した。
腹を撃たれてなお、ケルヴィン男爵はシエルに縋り付いた。
「お願……お願いだ。殺……殺すならあの日の皆とお揃いに……っ」
「あいつらとお揃いに?」
「ギャッ」
《お揃い》と聞いたシエルは、ケルヴィン男爵の頭を踏みつけた。
「なら芋虫の様に跪いて、悪魔におねだりするんだな」
銃口をケルヴィン男爵の頭に向けた時、ジョーカーが叫んだ。
「頼む、殺さないでくれ。そんな人でも俺らの恩人なんだ。親に捨てられ、国に捨てられ、明日飢え死にするかもしれない恐怖から俺達を救ってくれた。貧困院(ワークハウス)にはまだ幼い弟達がたくさんいる。その人がいないと生きていけない」
「だから――子供達を攫って来たのか?」
ナマエの影がどんどんとその大きさを変えていく。
「自分達が助かるためにこの男の言うがまま、他人を犠牲に?」
一瞬目を見開いたジョーカーだが、次の瞬間には諦めたように言葉を紡いだ。
「ああ、そうだ。俺らみたいな生まれのモンにとっちゃ、この英国は地獄でしかない。俺らにはパンを買う金も、仲間をかばう腕も何もなかった。でもお父様は俺達をゴミ溜めから救い出して、大切なものを守れる手足をくれた。だから俺らは生きることを決めた。たとえ別の地獄が待っていようと。間違ってることなんかはじめからわかってた。でも俺は――」
「お前は間違っていない」
「え?」
シエルの意外な言葉に、ジョーカーは思わず声を漏らした。
「自分の世界を守るために戦ったんだ。それでいいじゃないか。所詮この世の正義など、力を持つ者が自分のために作った建前。誰も他人のことなど考えちゃいない。ぼやぼやしていれば《もっていかれる》。元々人間は2種類しか存在しない。奪う者と奪われる者。そして――今日お前達は僕に未来を奪われる。それだけの話だ」
「は……はは。あはははっ、確かにそうだな。けどな、お前らも今夜大事なモンを失う事になる」
「?」
「団員達がお前の屋敷に向かっている」
ジョーカーの言葉に、シエルの脳裏にはエリザベスの姿が浮かんだ。
「何故俺達が誰にも見つからずに子供を攫ってこれたと思う?目撃者は《皆いなくなる》からだ」
顔色を悪くしながらも、ジョーカーは続けた。
「サーカス団(俺達)はプロだ。仕事中接触した者はどんな理由があろうと消す。伯爵(ターゲット)がいない屋敷中を探し回って、一体何人消されるだろうな?」
「消される?」
「ああ。使用人まで残らずな」
「使用人(あいつら)が?」
ジョーカーの言葉に、セバスチャンは思わず笑い声を漏らしていた。
「何がおかしい……ッ」
「あいつらを誰だと思っている。《ファントムハイヴ》家の使用人だぞ。《あれら》は僕と執事(セバスチャン)が選び雇用した私兵」
「なっ……」
「何があってもファントムハイヴ家の秘密と誇りを守る。それが――ファントムハイヴ家の使用人だ」
「私兵……だと?」
「ファントムハイヴは女王の憂いを《無きもの》にするためだけに存在する影(ファントム)。その巣窟に足を踏み入れれば、光ある場所には二度と戻れない」
「あいつらだってプロだ。そう簡単に――」
「信じるのはご自由ですが、私が選んだ人材だという事をお忘れなく」
ナイフに付いた血を振り払いながら言うセバスチャン。
「くっ……」
そんなセバスチャンの表情を見て、ジョーカーは絶望しか感じなかった。
「……ッ俺達はどうすりゃよかったんかなぁ。笛吹き息子のトム(ナーサリー・ライム)みたいに、“吹ける曲(できること)はひとつだけ”で……でももし……もし生まれたのがこの国じゃなかったら、自分が、身体がこうじゃなかったら……こんなっ……」
「自分達が一番不幸だと思うな。どこの国だって……アンタと同じ――いや、それ以上に辛い思いをしながら生きてる人だっている!」
ナマエの言葉に、ジョーカーは悔し涙を流した。