奇劇
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「昨日、お前が寝ずに看病してくれたんだってな」
「えっ――あ、ああ」
「お前のおかげですごく良くなった。ありがとう」
ニッコリと笑いながら礼を言ったかと思ったら、シエルはいつもの表情に戻ってスタスタと歩き出した。
「そーかあ!!俺のおかげか!なっはっは。やっぱり看病の仕方がいいと治りが違うんだな!」
「ああ。そんなワケで元気な僕はもう行く。笑顔の練習もたまには役に立つな。じゃあな」
「あっ」
呆気にとられているソーマを残し、3人は屋敷を後にした。
「ここが奴の屋敷か」
「ええ」
セバスチャンに抱えられて到着したのは、それなりに大きな屋敷だった。
「ナマエ、出てきていいですよ」
自身の影に向かってセバスチャンが話しかけると、その影がゆらゆらと揺れたと同時にトプッと音を出しながら鵺に手を引かれたナマエが出てきた。
「便利な能力ですね」
[“生”と“死”の狭間……“影”在りし処はみな我が“領域”なり]
「鵺、ありがとう。暫くは下がってて」
[御意]
ナマエを残し、鵺は彼女の影へとその身を沈めて消えた。
「どうだ、臭うか?」
「ええ。全員かどうかはわかりませんが、皆さんご無事のようですよ」
屋敷を見上げながら、セバスチャンはシエルの問い掛けに答えた。
(ここで……ここであの“惨事”が…………)
「怖いか?ナマエ」
「……本音を言えば怖い。けど――」
「けど、なんだ?」
「ここで逃げたら駄目だと思う。だから……私は逃げない!」
「随分と良い眼をなさいますね」
「覚悟は出来たようだな」
「……うん。“現実”から目を背けない。何があっても」
「わかった。なら――!?」
シエルが言葉を続けようとした時、屋敷の扉が音を立てて開かれた。
「当家へようこそ。お待ちしておりました、ファントムハイヴ伯爵」
「道化師(ジョーカー)……」
「どうぞお入りください」
扉の向こうにいたのはサーカスにいたジョーカーだった。
中に入りセバスチャンが扉を閉じると、辺りは闇に包まれた。
そんな中、ジョーカーが左指を鳴らすと、独りでに蝋燭に火が灯り始めた。
「これは……!!」
照らしだされた周りの光景に、シエルは息を呑んだ。
シエル達を取り囲むかのように、壁一面には未完成の人形やパーツが所狭しと並んでいた。
「こちらです」
ジョーカーに案内され、階段を登りながらセバスチャンは小声で問うた。
「どう致しますか?彼を殺して今すぐ子供を救出しに?」
「待て。まだ子供達が生きているなら、まずは頭(ケルヴィン)から押さえた方がいいだろう。奴の目的と実情を把握しなければ、女王陛下に報告もできないしな」
「かしこまりました」
「ナマエもまだ手を出すなよ」
「……了解」
小声でシエルに指示を仰いでいると、前方から笑い声が漏れ聞こえてきた。
「人は見かけによらへんってホンマやったんやね。クク……あんさんそんな小っこい体で、芸名が“女王の番犬”で“悪の貴族”か。難儀やなぁ、スマイル」
憐れむように言うジョーカーに対し、シエルは毅然とした態度で返した。
「僕の名前はシエル・ファントムハイヴ《伯爵》だ。使用人が気安く声を掛けるな」
「……確かに。くす、《お貴族様》どすな」
ジョーカーとやり取りしながら廊下を歩いていると、1枚のドアの前で彼の足が止まった。
(ここで……ここで始まるんだ…………)
ドアの前で、ナマエは眉間に皺を寄せていた。
「大丈夫ですか?」
「ん、《まだ》大丈夫」
心配そうに声を掛けてきたセバスチャンに、ナマエは意味深に答えた。
「晩餐の準備が整っております。こちらへ」
招き入れられたのは広い食堂だった。
ジョーカーは椅子を引きシエルを座らせると、反対側のドアへと移動した。
シエルの横にはセバスチャンとナマエが黙って控えている。
「おいでのようです」
「えっ――あ、ああ」
「お前のおかげですごく良くなった。ありがとう」
ニッコリと笑いながら礼を言ったかと思ったら、シエルはいつもの表情に戻ってスタスタと歩き出した。
「そーかあ!!俺のおかげか!なっはっは。やっぱり看病の仕方がいいと治りが違うんだな!」
「ああ。そんなワケで元気な僕はもう行く。笑顔の練習もたまには役に立つな。じゃあな」
「あっ」
呆気にとられているソーマを残し、3人は屋敷を後にした。
「ここが奴の屋敷か」
「ええ」
セバスチャンに抱えられて到着したのは、それなりに大きな屋敷だった。
「ナマエ、出てきていいですよ」
自身の影に向かってセバスチャンが話しかけると、その影がゆらゆらと揺れたと同時にトプッと音を出しながら鵺に手を引かれたナマエが出てきた。
「便利な能力ですね」
[“生”と“死”の狭間……“影”在りし処はみな我が“領域”なり]
「鵺、ありがとう。暫くは下がってて」
[御意]
ナマエを残し、鵺は彼女の影へとその身を沈めて消えた。
「どうだ、臭うか?」
「ええ。全員かどうかはわかりませんが、皆さんご無事のようですよ」
屋敷を見上げながら、セバスチャンはシエルの問い掛けに答えた。
(ここで……ここであの“惨事”が…………)
「怖いか?ナマエ」
「……本音を言えば怖い。けど――」
「けど、なんだ?」
「ここで逃げたら駄目だと思う。だから……私は逃げない!」
「随分と良い眼をなさいますね」
「覚悟は出来たようだな」
「……うん。“現実”から目を背けない。何があっても」
「わかった。なら――!?」
シエルが言葉を続けようとした時、屋敷の扉が音を立てて開かれた。
「当家へようこそ。お待ちしておりました、ファントムハイヴ伯爵」
「道化師(ジョーカー)……」
「どうぞお入りください」
扉の向こうにいたのはサーカスにいたジョーカーだった。
中に入りセバスチャンが扉を閉じると、辺りは闇に包まれた。
そんな中、ジョーカーが左指を鳴らすと、独りでに蝋燭に火が灯り始めた。
「これは……!!」
照らしだされた周りの光景に、シエルは息を呑んだ。
シエル達を取り囲むかのように、壁一面には未完成の人形やパーツが所狭しと並んでいた。
「こちらです」
ジョーカーに案内され、階段を登りながらセバスチャンは小声で問うた。
「どう致しますか?彼を殺して今すぐ子供を救出しに?」
「待て。まだ子供達が生きているなら、まずは頭(ケルヴィン)から押さえた方がいいだろう。奴の目的と実情を把握しなければ、女王陛下に報告もできないしな」
「かしこまりました」
「ナマエもまだ手を出すなよ」
「……了解」
小声でシエルに指示を仰いでいると、前方から笑い声が漏れ聞こえてきた。
「人は見かけによらへんってホンマやったんやね。クク……あんさんそんな小っこい体で、芸名が“女王の番犬”で“悪の貴族”か。難儀やなぁ、スマイル」
憐れむように言うジョーカーに対し、シエルは毅然とした態度で返した。
「僕の名前はシエル・ファントムハイヴ《伯爵》だ。使用人が気安く声を掛けるな」
「……確かに。くす、《お貴族様》どすな」
ジョーカーとやり取りしながら廊下を歩いていると、1枚のドアの前で彼の足が止まった。
(ここで……ここで始まるんだ…………)
ドアの前で、ナマエは眉間に皺を寄せていた。
「大丈夫ですか?」
「ん、《まだ》大丈夫」
心配そうに声を掛けてきたセバスチャンに、ナマエは意味深に答えた。
「晩餐の準備が整っております。こちらへ」
招き入れられたのは広い食堂だった。
ジョーカーは椅子を引きシエルを座らせると、反対側のドアへと移動した。
シエルの横にはセバスチャンとナマエが黙って控えている。
「おいでのようです」