奇劇
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「……」
「王子ィイイ。何とお優しいお心。はぅあ~!!」
感激しているアグニを尻目に、ナマエは只々笑っていた。
「優しくして甘やかすですか……どう思います?ナマエ」
暖炉の火掻きをしながら、セバスチャンは近くにいるナマエに声をかけた。
「んー……別にセバスチャンは今のままでいいんじゃない?甘やかしたりするのは柄じゃないでしょ?」
「それはそうですが……」
「その分、私が甘やかすからさ」
「……貴女は加減を知らなさそうで不安しかないのですが」
「失礼なッ!」
ナマエが声を荒げた時、電話の呼出音が鳴った。
「はい。タナカさん?はい……はい。かしこまりました。お伝えしておきます」
電話口の相手は、本邸(マナーハウス)にいるタナカだった。
セバスチャンはメモを取ると電話を置き、ナマエに向き直った。
「さて……そろそろ坊っちゃんがお目覚めになるかと思います。行きましょうか」
「ん。タナカさん、なんだって?」
「それは坊っちゃんがお目覚めになってからお話し致します」
「今何時だ!?」
「午後7時14分でございます」
勢いよく起き上がったシエルを見て、セバスチャンはなんでもないかのように答えた。
「ようやくお目覚めになりましたね」
「何故起こさなかった?」
「執事として主人の体を第一に考えるべきという判断からです」
「は?」
燭台に灯した蝋燭の明かりだけだった室内に、そこで漸く部屋全体を照らす明かりが点いた。
「おはよー、シエル。具合はどう?」
「……大分良くなった」
「そ。それは良かった」
「本日のディナーは3種のきのこのミルクのリゾットと、豚肉とワインのポトフ。デザートは温めたリンゴのコンポートのヨーグルトがけでございます。では坊っちゃん――はい、あーん」
「なんの真似だそれは!?」
「あっ、熱いですか?では私が冷まして差し上げます。やれやれ。困った甘えん坊ですね、まったく」
「気持ち悪いにも程がある!!今すぐやめろ、命令だ!!」
「くっ……ふふふっ」
「笑ってないでお前もとめろ!ナマエ!!」
「病人はめいっぱい甘やかしてやるものだとソーマ様が――お気に召しませんか?」
「そんな“子供騙し(甘え)”はいらん。虫唾が走る」
「さようでございますか。それは失礼いたしました」
恭しく頭を垂れるセバスチャンだが、シエルに対して悪い事をしたという思いは一切なかった。
食事を終えたシエルを着替えさせながら、セバスチャンは先程あったタナカからの電話を思い出したように言葉を紡いだ。
「そういえば――4時頃タナカさんよりお電話がありまして、本邸の方にレディ・エリザベスがいらしているそうです」
「なっ――何故それを早く言わない!?」
「坊っちゃんにゆっくりお食事を召し上がって頂きたかったので。よく噛まなくては栄養の吸収率も下がりますし……」
「おい、あの平和ボケコンビの受け売りも大概にしろ」
「エリザベス様は坊っちゃんとナマエにお会いになられるまでご自宅にお戻りになる気が無いそうなので、お早いお戻りをとの事です」
「ったく……ケルヴィン男爵の屋敷は調べてあるんだろうな?」
「ええ。時間がたっぷりありましたので。ロンドンから鉄道と馬車を乗り継いで丸1日といったところですね」
「お前なら1時間とかからず行けるな?」
「ご命令とあらば」
「さっさと終わらせて本邸に戻るぞ、2人共」
「御意、ご主人様(イエス、マイロード)」
「承知しましたー」
身支度を整えたシエルの言葉を受け、2人は了承した。
部屋を出て玄関へと向かうと、ソーマに見つかってしまった。
「シエル!また出かけようとしてるな!?」
「……うるさいのが来た……」
「そんなんじゃ治るモンも治らん――」
「王子ィイイ。何とお優しいお心。はぅあ~!!」
感激しているアグニを尻目に、ナマエは只々笑っていた。
「優しくして甘やかすですか……どう思います?ナマエ」
暖炉の火掻きをしながら、セバスチャンは近くにいるナマエに声をかけた。
「んー……別にセバスチャンは今のままでいいんじゃない?甘やかしたりするのは柄じゃないでしょ?」
「それはそうですが……」
「その分、私が甘やかすからさ」
「……貴女は加減を知らなさそうで不安しかないのですが」
「失礼なッ!」
ナマエが声を荒げた時、電話の呼出音が鳴った。
「はい。タナカさん?はい……はい。かしこまりました。お伝えしておきます」
電話口の相手は、本邸(マナーハウス)にいるタナカだった。
セバスチャンはメモを取ると電話を置き、ナマエに向き直った。
「さて……そろそろ坊っちゃんがお目覚めになるかと思います。行きましょうか」
「ん。タナカさん、なんだって?」
「それは坊っちゃんがお目覚めになってからお話し致します」
「今何時だ!?」
「午後7時14分でございます」
勢いよく起き上がったシエルを見て、セバスチャンはなんでもないかのように答えた。
「ようやくお目覚めになりましたね」
「何故起こさなかった?」
「執事として主人の体を第一に考えるべきという判断からです」
「は?」
燭台に灯した蝋燭の明かりだけだった室内に、そこで漸く部屋全体を照らす明かりが点いた。
「おはよー、シエル。具合はどう?」
「……大分良くなった」
「そ。それは良かった」
「本日のディナーは3種のきのこのミルクのリゾットと、豚肉とワインのポトフ。デザートは温めたリンゴのコンポートのヨーグルトがけでございます。では坊っちゃん――はい、あーん」
「なんの真似だそれは!?」
「あっ、熱いですか?では私が冷まして差し上げます。やれやれ。困った甘えん坊ですね、まったく」
「気持ち悪いにも程がある!!今すぐやめろ、命令だ!!」
「くっ……ふふふっ」
「笑ってないでお前もとめろ!ナマエ!!」
「病人はめいっぱい甘やかしてやるものだとソーマ様が――お気に召しませんか?」
「そんな“子供騙し(甘え)”はいらん。虫唾が走る」
「さようでございますか。それは失礼いたしました」
恭しく頭を垂れるセバスチャンだが、シエルに対して悪い事をしたという思いは一切なかった。
食事を終えたシエルを着替えさせながら、セバスチャンは先程あったタナカからの電話を思い出したように言葉を紡いだ。
「そういえば――4時頃タナカさんよりお電話がありまして、本邸の方にレディ・エリザベスがいらしているそうです」
「なっ――何故それを早く言わない!?」
「坊っちゃんにゆっくりお食事を召し上がって頂きたかったので。よく噛まなくては栄養の吸収率も下がりますし……」
「おい、あの平和ボケコンビの受け売りも大概にしろ」
「エリザベス様は坊っちゃんとナマエにお会いになられるまでご自宅にお戻りになる気が無いそうなので、お早いお戻りをとの事です」
「ったく……ケルヴィン男爵の屋敷は調べてあるんだろうな?」
「ええ。時間がたっぷりありましたので。ロンドンから鉄道と馬車を乗り継いで丸1日といったところですね」
「お前なら1時間とかからず行けるな?」
「ご命令とあらば」
「さっさと終わらせて本邸に戻るぞ、2人共」
「御意、ご主人様(イエス、マイロード)」
「承知しましたー」
身支度を整えたシエルの言葉を受け、2人は了承した。
部屋を出て玄関へと向かうと、ソーマに見つかってしまった。
「シエル!また出かけようとしてるな!?」
「……うるさいのが来た……」
「そんなんじゃ治るモンも治らん――」