奇劇
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「貴方だってここで騒ぎを起こすのは本意ではないでしょう。どうです、私と取引しませんか?」
セバスチャンの“取引”という言葉にウィリアムがピクリと反応した。
「たった1時間、私を自由にして下されば貴方の担当地区で今後一切魂を喰べないと誓いましょう。たった1時間ですよ。いかがです?」
「お断りです。甘言で獲物を惑わし闇へ引きずり込む。悪魔の常套句(得意技)じゃないですか、まったく」
セバスチャンの手からデスサイズを抜き取ると、その血を払うためにウィリアムは勢いよくデスサイズを横に振った。
「やっぱり駄目ですか。仕方ありません。別の方法を考えるとしましょう」
血塗れになった右手の手袋を脱ぎ取り、自身の血を舐めながらセバスチャンは妖しく笑った。
ウィリアムがテントへ戻った事を確認したセバスチャンは、漸くナマエに向き直った。
「ナマエ」
「何?」
「これから私がする事もお判りで?」
「……まぁね」
「止めないんですか?」
「私に止める権利はない。シエルの為になるならなんだってする――そうでしょ?」
「貴女には敵いませんね、まったく……」
「早く行きなよ」
「では……」
音もなく立ち去ったセバスチャンを見送ることもせず、ナマエは自分に宛てがわれているテントへと戻った。
[良かったのか?主よ……]
「何が?」
[あの悪魔のやり方、我は気に食わぬ]
「《鵺》、彼は彼なりのやり方があるんだよ。そう――悪魔にしか出来ないやり方が……解ったら下がって。明日にはここを出る事になるから」
[……御意]
薄暗いテントの中で、自身の影から顔を覗かせていた《鵺》にナマエは下がるように命じ、浅い眠りへと落ちていった。
翌朝、ナマエの宣告通りにサーカス団を去る事になった。
着替えを済ませて医務室へ向かうと、既にセバスチャンに着替えさせられたシエルがその腕に抱かれて出てきた所だった。
「私共は用事が済みましたのでお先に失礼します」
「飼い主付きであればどこへ行こうが関係ありません。どうぞご自由に。これで私もやっと安心して移動できます」
「体調はどう?」
「……昨日よりはマシだ」
「ごめんね、シエル……」
「?」
「こうなる事が判っていながら、私は止めなかった。本当にごめん」
俯きながら謝るナマエに対し、シエルは不思議そうな顔をしていた。
「僕はゲームの《攻略本》を望んでいるわけじゃない。それは前にも言っただろ?」
「でもっ!」
「お前は僕の従者じゃない。だから気にするな。僕は少し寝る。着いたら起こせ」
「御意」
悲しそうに眉を下げるナマエを見ながら、セバスチャンは歩き出した。
「行きますよ、ナマエ」
セバスチャンに促されて歩き出したナマエの顔には、明らかに迷いがあった。
「シエル!!お前は俺になんの連絡もなしに、2日もどこへ行ってたんだ!!あと少しで捜索願いを出すところだったぞ!!」
「おかえりなさいませ!」
「お前には関係ない。ゴホッ、ゴホンッ、コンッ」
「お前どうした?顔色悪いぞ」
「ゲホッ。大したことはない。放っておけ」
「大したことなくはないだろう。お前絶対に風邪を引いてるぞ。熱があるんじゃ……」
「ない!平熱だ」
「嘘つけ!!」
「ついてない。ゲホッ」
「シエル!!」
騒ぐソーマをその場に残し、シエルはセバスチャンに抱きかかえられたままナマエを伴って自室へと入っていった。
「確かに坊っちゃんは嘘や秘密が多くていらっしゃいますよね。坊っちゃんが幼少のみぎりからの持病をお持ちとは、私も存じ上げませんでした。何故お話し下さらなかったのです?」
「聞かれなかったから答えなかっただけだ。それにもう治ってる」
「さようでございますか。しかし、気をつけるに越した事はありません。今度喘息についての医療書を読んでおくとしましょう」
お湯で濡らしたタオルを絞りながら、セバスチャンは当たり前のように話している。
セバスチャンの“取引”という言葉にウィリアムがピクリと反応した。
「たった1時間、私を自由にして下されば貴方の担当地区で今後一切魂を喰べないと誓いましょう。たった1時間ですよ。いかがです?」
「お断りです。甘言で獲物を惑わし闇へ引きずり込む。悪魔の常套句(得意技)じゃないですか、まったく」
セバスチャンの手からデスサイズを抜き取ると、その血を払うためにウィリアムは勢いよくデスサイズを横に振った。
「やっぱり駄目ですか。仕方ありません。別の方法を考えるとしましょう」
血塗れになった右手の手袋を脱ぎ取り、自身の血を舐めながらセバスチャンは妖しく笑った。
ウィリアムがテントへ戻った事を確認したセバスチャンは、漸くナマエに向き直った。
「ナマエ」
「何?」
「これから私がする事もお判りで?」
「……まぁね」
「止めないんですか?」
「私に止める権利はない。シエルの為になるならなんだってする――そうでしょ?」
「貴女には敵いませんね、まったく……」
「早く行きなよ」
「では……」
音もなく立ち去ったセバスチャンを見送ることもせず、ナマエは自分に宛てがわれているテントへと戻った。
[良かったのか?主よ……]
「何が?」
[あの悪魔のやり方、我は気に食わぬ]
「《鵺》、彼は彼なりのやり方があるんだよ。そう――悪魔にしか出来ないやり方が……解ったら下がって。明日にはここを出る事になるから」
[……御意]
薄暗いテントの中で、自身の影から顔を覗かせていた《鵺》にナマエは下がるように命じ、浅い眠りへと落ちていった。
翌朝、ナマエの宣告通りにサーカス団を去る事になった。
着替えを済ませて医務室へ向かうと、既にセバスチャンに着替えさせられたシエルがその腕に抱かれて出てきた所だった。
「私共は用事が済みましたのでお先に失礼します」
「飼い主付きであればどこへ行こうが関係ありません。どうぞご自由に。これで私もやっと安心して移動できます」
「体調はどう?」
「……昨日よりはマシだ」
「ごめんね、シエル……」
「?」
「こうなる事が判っていながら、私は止めなかった。本当にごめん」
俯きながら謝るナマエに対し、シエルは不思議そうな顔をしていた。
「僕はゲームの《攻略本》を望んでいるわけじゃない。それは前にも言っただろ?」
「でもっ!」
「お前は僕の従者じゃない。だから気にするな。僕は少し寝る。着いたら起こせ」
「御意」
悲しそうに眉を下げるナマエを見ながら、セバスチャンは歩き出した。
「行きますよ、ナマエ」
セバスチャンに促されて歩き出したナマエの顔には、明らかに迷いがあった。
「シエル!!お前は俺になんの連絡もなしに、2日もどこへ行ってたんだ!!あと少しで捜索願いを出すところだったぞ!!」
「おかえりなさいませ!」
「お前には関係ない。ゴホッ、ゴホンッ、コンッ」
「お前どうした?顔色悪いぞ」
「ゲホッ。大したことはない。放っておけ」
「大したことなくはないだろう。お前絶対に風邪を引いてるぞ。熱があるんじゃ……」
「ない!平熱だ」
「嘘つけ!!」
「ついてない。ゲホッ」
「シエル!!」
騒ぐソーマをその場に残し、シエルはセバスチャンに抱きかかえられたままナマエを伴って自室へと入っていった。
「確かに坊っちゃんは嘘や秘密が多くていらっしゃいますよね。坊っちゃんが幼少のみぎりからの持病をお持ちとは、私も存じ上げませんでした。何故お話し下さらなかったのです?」
「聞かれなかったから答えなかっただけだ。それにもう治ってる」
「さようでございますか。しかし、気をつけるに越した事はありません。今度喘息についての医療書を読んでおくとしましょう」
お湯で濡らしたタオルを絞りながら、セバスチャンは当たり前のように話している。