奇劇
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「「「やっぱり凄い!」」」
「どこで習ったんどすか~?」
「いや……独学ですが…………」
「「「独学ぅ!?」」」
(あぁ、そっか……この時代、カラオケとかないんだっけ)
「セイレーンはやっぱ凄いどすなぁ……」
「それに比べてあの二人は……」
ビーストの視線の先を見やると、ただただぶら下がって揺れているセバスチャンとウィリアムがいた。
「何やってんだ、アイツら」
それまで壁となっている木に持たれていたビーストが一歩前に出た時、背中のヒモが一箇所切れてしまった。
「あっ、ヒモが」
「わーっっっ、お前ら見るんじゃねえッ」
それを見て、顔を赤くしながらダガーは叫んだ。
「姐さん、アンコールまで時間あるし着替えて来てくださいよ!」
「大げさな……しょうがないねぇ」
ジョーカー達に見送られながら、ビーストは会場から出て行った。
それに気付いたセバスチャンは、一刻も早くシエルの元へと向かおうとウィリアムを説得しようとしていた。
セバスチャンがウィリアムに向かって何かを言った瞬間、彼のデスサイズが勢いよくセバスチャン目掛けて伸びていった。
そのデスサイズを握ったセバスチャンは力任せに引張り、ブランコからウィリアムを引きずり落とした。
「危ねぇッ」
慌てるダガーを尻目に、ナマエはチラリとセバスチャン達を見ると口の端を釣り上げた。
デスサイズが縮むと、タイミングを見計らってウィリアムを投げるように離したセバスチャン。
2人は台に綺麗に着地し、会場内は歓喜の声に包まれた。
「皆はんオツカレさーん。アレ?ブラックは?」
「アンコール終わったら急いで走っていきましたけど、小便でもガマンしてたんじゃないスかぁ?」
「あー、あるあるー」
「……」
ショーに出ていた団員達と一緒に会場から出てきたウィリアムは、何かを怪しむかのように顰めっ面になっていた。
「そんな顔しても、何も教えないからね」
そんなウィリアムを牽制するかのように、ナマエは背後から声をかけた。
「……人間に肩入れしている魔女の手助けはいりません」
「……《鵺》、お願いしてもいい?」
[…………御意]
団員達がいなくなった所で、ナマエは《鵺》を呼び出していた。
《鵺》はナマエが“何を”依頼したのかも訊かず、影から了承の意だけを述べて漆黒の中へと消えていった。
暫くすると、影の中から《鵺》が顔を覗かせた。
[……見つけました]
「有難う。案内してくれる?」
[御意……]
自身の影に消えていった《鵺》に先導されて辿り着いたのは、セバスチャンとウィリアムのテントだった。
「入るよー?」
「3センチメートル私の私有地に踏み込んでいます」
「はっ!?」
声を掛けて入ったテントの中には、シエルの姿もあった。
「お互いに決めた住み分けも出来ないとは――犬が犬なら飼い主も飼い主ですね。魔女も、日が暮れているというのに男性のテントを訪れるとは……呆れてものも言えません」
「お褒めに預かり光栄です」
ニッコリと笑顔で応えるナマエとは反対に、シエルはウィリアムの言葉に苛立った。
「ゴホンッ。セバスチャン、ナマエ外へ出るぞ」
「は」
「はーい」
テント群の一角、テントの隙間に身を隠しながらシエルは自分が見つけた物について話しだした。
「――で、差し出し人の名前は“笛吹きトムの息子”」
「“笛吹きトムの息子”?」
「マザー・グース(ナーサリー・ライム)の登場人物だ。なんの意味があるかはわからんが……ケホッ。そして封蝋には馬の刻印(ホールマーク)とKのイニシャル」
「では私が見た物と一緒ですね。シールリングは普通、本人や家紋を象徴するモチーフと頭文字が彫られます」
「ああ。つまり、“笛吹きトムの息子”は馬を冠する家紋を持つ者。馬がデザインされた家紋を持つ者は勲爵士(ナイト)に叙勲されている者や軍人が多い。ゴホッ。一概にそうとは言えんが、慈善活動家となるとある程度の身分がなくては不可能だろう。紋章は全て紋章院に登録されている。ゴホンッ。これだけ条件が揃えば、登録数がどれだけ多かろうがお前なら調べがつくはずだ」
咳き込みながら話しているシエルからは、ゼーゼーという特有の呼吸音がし始めていた。
「どこで習ったんどすか~?」
「いや……独学ですが…………」
「「「独学ぅ!?」」」
(あぁ、そっか……この時代、カラオケとかないんだっけ)
「セイレーンはやっぱ凄いどすなぁ……」
「それに比べてあの二人は……」
ビーストの視線の先を見やると、ただただぶら下がって揺れているセバスチャンとウィリアムがいた。
「何やってんだ、アイツら」
それまで壁となっている木に持たれていたビーストが一歩前に出た時、背中のヒモが一箇所切れてしまった。
「あっ、ヒモが」
「わーっっっ、お前ら見るんじゃねえッ」
それを見て、顔を赤くしながらダガーは叫んだ。
「姐さん、アンコールまで時間あるし着替えて来てくださいよ!」
「大げさな……しょうがないねぇ」
ジョーカー達に見送られながら、ビーストは会場から出て行った。
それに気付いたセバスチャンは、一刻も早くシエルの元へと向かおうとウィリアムを説得しようとしていた。
セバスチャンがウィリアムに向かって何かを言った瞬間、彼のデスサイズが勢いよくセバスチャン目掛けて伸びていった。
そのデスサイズを握ったセバスチャンは力任せに引張り、ブランコからウィリアムを引きずり落とした。
「危ねぇッ」
慌てるダガーを尻目に、ナマエはチラリとセバスチャン達を見ると口の端を釣り上げた。
デスサイズが縮むと、タイミングを見計らってウィリアムを投げるように離したセバスチャン。
2人は台に綺麗に着地し、会場内は歓喜の声に包まれた。
「皆はんオツカレさーん。アレ?ブラックは?」
「アンコール終わったら急いで走っていきましたけど、小便でもガマンしてたんじゃないスかぁ?」
「あー、あるあるー」
「……」
ショーに出ていた団員達と一緒に会場から出てきたウィリアムは、何かを怪しむかのように顰めっ面になっていた。
「そんな顔しても、何も教えないからね」
そんなウィリアムを牽制するかのように、ナマエは背後から声をかけた。
「……人間に肩入れしている魔女の手助けはいりません」
「……《鵺》、お願いしてもいい?」
[…………御意]
団員達がいなくなった所で、ナマエは《鵺》を呼び出していた。
《鵺》はナマエが“何を”依頼したのかも訊かず、影から了承の意だけを述べて漆黒の中へと消えていった。
暫くすると、影の中から《鵺》が顔を覗かせた。
[……見つけました]
「有難う。案内してくれる?」
[御意……]
自身の影に消えていった《鵺》に先導されて辿り着いたのは、セバスチャンとウィリアムのテントだった。
「入るよー?」
「3センチメートル私の私有地に踏み込んでいます」
「はっ!?」
声を掛けて入ったテントの中には、シエルの姿もあった。
「お互いに決めた住み分けも出来ないとは――犬が犬なら飼い主も飼い主ですね。魔女も、日が暮れているというのに男性のテントを訪れるとは……呆れてものも言えません」
「お褒めに預かり光栄です」
ニッコリと笑顔で応えるナマエとは反対に、シエルはウィリアムの言葉に苛立った。
「ゴホンッ。セバスチャン、ナマエ外へ出るぞ」
「は」
「はーい」
テント群の一角、テントの隙間に身を隠しながらシエルは自分が見つけた物について話しだした。
「――で、差し出し人の名前は“笛吹きトムの息子”」
「“笛吹きトムの息子”?」
「マザー・グース(ナーサリー・ライム)の登場人物だ。なんの意味があるかはわからんが……ケホッ。そして封蝋には馬の刻印(ホールマーク)とKのイニシャル」
「では私が見た物と一緒ですね。シールリングは普通、本人や家紋を象徴するモチーフと頭文字が彫られます」
「ああ。つまり、“笛吹きトムの息子”は馬を冠する家紋を持つ者。馬がデザインされた家紋を持つ者は勲爵士(ナイト)に叙勲されている者や軍人が多い。ゴホッ。一概にそうとは言えんが、慈善活動家となるとある程度の身分がなくては不可能だろう。紋章は全て紋章院に登録されている。ゴホンッ。これだけ条件が揃えば、登録数がどれだけ多かろうがお前なら調べがつくはずだ」
咳き込みながら話しているシエルからは、ゼーゼーという特有の呼吸音がし始めていた。