このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

届かぬ想い

いつもそうだ。大人は何も『理解』してくれない。何でアタシがこうなったのか、それすら『理解』してない。いつも怒ればいいと思っているのが頭にくる。

「凛香、何処に行くの!?待ちなさい!」
いつの頃からか、終業式後に母を交えた生活指導が当たり前になっていた。
最初は真面目に出ていた。それで『理解』して貰えると思っていたから。が、いつまで経っても『否定』しかされない。
そんなのに付き合う必要が感じられなかった。だから、アタシは周りに『理解』して貰おうなんて思わなくなっていた。
「待ちなさいって言ってるでしょ!?」
「ウルサイ……」
「え……?」
「ほっといてよ!」
母の制止を振り切り、アタシはその場から逃げる様に早足で歩く。追いかけて来た母も、いつしか諦め、独りで生徒指導室に戻って行った。遠く後方から、母が教師に叱られてる声が聞こえてきた。怒る事しか知らないのか――ソレはソレで憐れに思えた。怒れば誰もが自分の思い通りになると、そう勘違いしている様にしか思えない。

「凛香……お前また呼び出されたそうだな」
いつもはアタシに無関心な父が、こういう時に限って父親面をする。何で大人は頭ごなしに否定し、怒る事しかしないのか――怒る前にアタシを『理解』しようとは思わないの?
「なんだ……その顔は?」
自分が怒られる理由が解らない。したがって、自然と不機嫌な顔になっていた。それが気に食わない父は、何の躊躇いも無くアタシを殴った。この人には男も女も関係無い。自分が一番正しい、そんな人間だから。ソレを思い知らされているから、余計に腹が立つ。絶対に正しいかどうかなんて、誰にも決める事は出来ないのに……いい年こいたオッサンがそんな事も判らないなんて……自分の親ながら情けなかった。
殴られた痛みに泣くわけにはいかない。あんなヤツの思い通りにはなりたくない。だから歯を食いしばってでも父を睨みつける。それがまた父の逆鱗に触れる事だと解っていても、止めるわけにはいかなかった。
やがて、そんなアタシ達を見かねた母が止めに入った。世間体を気にする母にとって、見える所に傷を作られると困るのだろう。オバハンらの情報網は、計り知れない早さで噂として広めるチカラがあるのだから。アタシが顔に傷でも作った日には――母は倒れるであろう。常に世間体を気にする人にとって、アタシはもはやただの『お荷物』なんだ。いつ幸せを脅かすか判らない存在だから――。
あの人達にとって、アタシは『娘』ではなく『お荷物』でしかないと思い知らされているんだし。今更悲しむ必要なんてない。悲しむだけ時間の無駄なんだ。自分にそう言い聞かせながら、自室に戻ろうと身を翻した。
「凛香!?お父さんに謝りなさい!」
母の声を無視し、凛香は居間を出て階段を駆け上った。
「凛香!!」
もう嫌だ。理由も解らずにただ怒られるだけの毎日なんて……否定しかされないなんて嫌だ。ただ――ただ悔しかった。自分を認めて欲しい。『理解』して欲しい――。
1/2ページ
スキ