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一人の朝

「下にいるよ。それよか――ドア押さえる物無いの?」
「え?」
「コレじゃ効率悪すぎ……」
「あ――ソコにある傘立て使えない?」
金属製の備え付けになっている傘立てを指差し、眞葵に問う綾芽。部屋の奥からは咲羅が顔を覗かせていた。
「あれ?眞葵もう来たんだ」
「何?来ちゃいけなかったの??」
「別に~」
「ったく……」
綾芽が傘立てでドアを押さえていると、叔父さんが階段を上ってきていた。眞葵は咲羅の言葉に文句を言いながら、荷物を部屋の中へと運び込む。
「叔父さん、有難う御座います」
「あぁ……」
短い言葉を交わすと、眞葵と叔父は荷物を黙々と運び入れた。全ての荷物を運び終え、綾芽は叔父を見送りに外に行った。
「叔父さん!」
「ん?あぁ、昼飯なら母さんに言ってこっちに配達してくれるように店に頼んでおいた」
「有難う御座います。って、そうじゃなくて――」
「いい友達を持ったな、綾芽」
「え?」
「あの二人がついていれば大丈夫だろう。何か困った事があったらいつでも連絡しなさい。それと、たまには家にも顔を出しなさい」
そう言い、叔父は帰っていった。呆然と眺めている綾芽を、二人の声が呼び戻した。笑顔で部屋に駆け戻る。三人で会話しながら笑い合い、片づけを済ませていく。途中出前が届いたり家電の工事が来たが、夕方過ぎにはダンボールも纏め終わり、すっかり生活出来る空間になっていた。
纏めたダンボールをゴミ置き場に出し、三人で夕食の買い物に行き、その日は咲羅が夕食を作ってくれた。食べ終わり後片付けをしていると、咲羅と眞葵は帰り支度を始めていた。
「あれ?もう帰るの??」
「うん、あんまり遅くなると怒られるからね」
「高校行ったら、もっと遅くまで居られる様になるよ」
「そうだね、今日は本当に有難うね」
「どういたしまして」
「そうそう。友達なんだから当たり前さ」
二人を見送り、一人になって改めて考えた。ここでのこれからの暮らしを――。

次の日、初めて一人で朝を迎えた。眠い目を擦り、カーテンを開けると綺麗な青空が一面に広がっていた。
「まぶしっ……でも、いい天気だな~」
今までとは違う意味で一人の朝。窓を開けて新鮮な空気を吸い込み、改めて思った。やっぱりどこか『寂しい』。人の気配のない部屋。

それから1年。相変わらず迎える一人の朝。しかし、あの頃の様な『寂しさ』はもうない。毎日が希望に満ちているのだから――。
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