第一章 出逢いの刻
3人がソコに着いたのは夕飯時だった為、人混みもまばらになってきていた。
閑那の店の前に来ると、ソコには“Close”の看板が――
「咲羅、本当に今日でいいの?」
綾芽が看板を指差しながら聞くと、咲羅は笑顔のままドアに手をかけた。
「おいっ!ちょっと待った!!」
眞葵が慌てて咲羅を止めた。
「大丈夫よ、今日は休業日だけど閑那さんが中にいるから」
そう言うと、咲羅は笑顔でドアを開け中に入っていった。
2人も溜め息を吐きながら、咲羅に続いて中に入った。
いつ来ても不思議な場所だ。綾芽はそう思った。現実世界とは思えないほど、幻想的な光に満ちた空間。ソコが咲羅と閑那を結び付ける場所であり、彼女達の職場であった。
「また変なモノが増えてるような気が……」
綾芽がボソッと呟くと、眞葵がそれを聞き逃さずに聞いてきた。
「綾芽さんって、前にもココに来たことがあるんスか?」
眞葵の興味津々な質問に、綾芽は仕方がなさそうに答えた。
「咲羅がココでバイトする前に、咲羅に付き合って一度だけ来たことがあるだけだよ」
「へぇ~……」
2人が他愛もない会話をしているのをよそに、咲羅は一人奥へと進んでいった。
「咲羅ですけど、閑那さんいます?」
奥の部屋では閑那が誰かと話しているようだったが、咲羅の声を聞いて出てきた。
「あら、遅かったじゃないの咲羅ちゃん?」
「ごめんなさい……思ってたよりもホームルームが長引いちゃって――」
咲羅が申し訳なさそうに謝るのを見て、閑那はニッコリと微笑みながら言った。
「仕方がないわよ。 貴女はまだ学生だし、あんな事件があった後だもの」
「でも――」
「いいのよ、気にしないで頂戴な。今日は仕事じゃないんだから、来てくれただけでいいのよ」
笑顔で言う閑那に安心した咲羅に向かって 閑那は本題を切り出した。
「それで――あの娘達は連れて来てくれた??」
心配そうに聞く閑那に、咲羅は大丈夫ですと答えた。
すると、閑那の陰に人影が見えた。チラッと覗き込むと、ソファに座り煙草を吸っている青年と目が合った。軽くその人物に会釈をし、閑那との会話に戻る。
「会わせたい人って、あの人のことですか?」
「えぇ、本当はもう一人いるんだけど……今日は来れるかどうかもわからないから、とりあえず集まったメンバーだけで話しましょう。綾芽ちゃん達をここに連れて来てくれるかしら?」
閑那が少しだけ申し訳なさそうに言うと、咲羅は笑顔で頷き綾芽と眞葵を呼びに行った。
咲羅が去り、閑那が戻って来ると涼はイライラしながら吐き捨てた。
「俺に会わせたいってのは、あのガキじゃねぇだろうな?」
涼には咲羅と閑那の話が聞こえておらず、女子高生が来たことくらいしか分からなかったのだ。
「ガキって……貴方とさほど年は変わらないのよ?そんなこと言ったら、私にとって貴方も十分ガキになるわね~……」
妙に気に障る言い方をされた涼は、煙を肺の奥底まで吸い込んで黙った。
「閑那さんが呼んでるから、早く行きましょう?相手はもう来てるみたいだから、あんまり待たせるのも悪いし……」
咲羅がそう言うのを聞いて、綾芽は溜め息を吐いた。またあの変な兄ちゃんにイジられるのか……その様子を見た眞葵は、楽しそうに綾芽を見ていた。
「綾芽?具合悪いの??」
心配そうに聞いてくる咲羅。
本当は今すぐにでもココから逃げ出したい、そんな衝動に駆られている綾芽を見た眞葵は、綾芽をからかうように咲羅に言った。
「綾芽さんは緊張してるんだよ。なんせ、大好きな閑那さんにようやく会えるんだし」
それを聞いて目を見開いたのは綾芽だけではなかった。
「そうなの?綾芽。あんなに嫌そうに言ってたから私てっきり――」
咲羅が驚いているのを見た眞葵のからかいは止まることを知らなかった。
「綾芽さんは照れ屋だから、素直になれないんだよ」
そう言った眞葵は、綾芽に咲羅にはバレない様に向こう脛を蹴られた。
眞葵が顔をしかめていると、綾芽はどうでもいいから早く行こうと咲羅の背中を押して歩き出した。
「遅くなってすいません」
咲羅の後から部屋に入った綾芽は、閑那ともう一人の人物に向かって言った。
「久しぶりね、綾芽ちゃん?そっちの子は――眞葵君ね?初めまして、ココの主・青羽(アオバ)閑那よ」
閑那は綾芽に挨拶すると、眞葵に向かって軽くウィンクした。眞葵は、閑那が男だということを一瞬忘れていたようだ。
その時、ちょうど煙草を吸い終えた涼がかったるそうに3人を見た。
それに気付いた閑那が、3人に向かって涼を紹介した。
「この子は涼、矢神(ヤガミ)涼よ。私の知り合いで――」
閑那が涼を3人に紹介している途中で、涼が閑那の言葉を遮った。
「細かいことはいいだろ?」
「そう?じゃあ、今度は貴女達の番ね」
閑那は涼に3人を紹介しようとしたが、3人は自分達で自己紹介を始めた。
「三神(ミカミ)綾芽と言います」
「狩野(カノウ)眞葵っス」
「湊谷(ミナトヤ)咲羅です」
自己紹介が終わったところで閑那は3人をソファに座らせ、皆にお茶をいれた。
閑那の店の前に来ると、ソコには“Close”の看板が――
「咲羅、本当に今日でいいの?」
綾芽が看板を指差しながら聞くと、咲羅は笑顔のままドアに手をかけた。
「おいっ!ちょっと待った!!」
眞葵が慌てて咲羅を止めた。
「大丈夫よ、今日は休業日だけど閑那さんが中にいるから」
そう言うと、咲羅は笑顔でドアを開け中に入っていった。
2人も溜め息を吐きながら、咲羅に続いて中に入った。
いつ来ても不思議な場所だ。綾芽はそう思った。現実世界とは思えないほど、幻想的な光に満ちた空間。ソコが咲羅と閑那を結び付ける場所であり、彼女達の職場であった。
「また変なモノが増えてるような気が……」
綾芽がボソッと呟くと、眞葵がそれを聞き逃さずに聞いてきた。
「綾芽さんって、前にもココに来たことがあるんスか?」
眞葵の興味津々な質問に、綾芽は仕方がなさそうに答えた。
「咲羅がココでバイトする前に、咲羅に付き合って一度だけ来たことがあるだけだよ」
「へぇ~……」
2人が他愛もない会話をしているのをよそに、咲羅は一人奥へと進んでいった。
「咲羅ですけど、閑那さんいます?」
奥の部屋では閑那が誰かと話しているようだったが、咲羅の声を聞いて出てきた。
「あら、遅かったじゃないの咲羅ちゃん?」
「ごめんなさい……思ってたよりもホームルームが長引いちゃって――」
咲羅が申し訳なさそうに謝るのを見て、閑那はニッコリと微笑みながら言った。
「仕方がないわよ。 貴女はまだ学生だし、あんな事件があった後だもの」
「でも――」
「いいのよ、気にしないで頂戴な。今日は仕事じゃないんだから、来てくれただけでいいのよ」
笑顔で言う閑那に安心した咲羅に向かって 閑那は本題を切り出した。
「それで――あの娘達は連れて来てくれた??」
心配そうに聞く閑那に、咲羅は大丈夫ですと答えた。
すると、閑那の陰に人影が見えた。チラッと覗き込むと、ソファに座り煙草を吸っている青年と目が合った。軽くその人物に会釈をし、閑那との会話に戻る。
「会わせたい人って、あの人のことですか?」
「えぇ、本当はもう一人いるんだけど……今日は来れるかどうかもわからないから、とりあえず集まったメンバーだけで話しましょう。綾芽ちゃん達をここに連れて来てくれるかしら?」
閑那が少しだけ申し訳なさそうに言うと、咲羅は笑顔で頷き綾芽と眞葵を呼びに行った。
咲羅が去り、閑那が戻って来ると涼はイライラしながら吐き捨てた。
「俺に会わせたいってのは、あのガキじゃねぇだろうな?」
涼には咲羅と閑那の話が聞こえておらず、女子高生が来たことくらいしか分からなかったのだ。
「ガキって……貴方とさほど年は変わらないのよ?そんなこと言ったら、私にとって貴方も十分ガキになるわね~……」
妙に気に障る言い方をされた涼は、煙を肺の奥底まで吸い込んで黙った。
「閑那さんが呼んでるから、早く行きましょう?相手はもう来てるみたいだから、あんまり待たせるのも悪いし……」
咲羅がそう言うのを聞いて、綾芽は溜め息を吐いた。またあの変な兄ちゃんにイジられるのか……その様子を見た眞葵は、楽しそうに綾芽を見ていた。
「綾芽?具合悪いの??」
心配そうに聞いてくる咲羅。
本当は今すぐにでもココから逃げ出したい、そんな衝動に駆られている綾芽を見た眞葵は、綾芽をからかうように咲羅に言った。
「綾芽さんは緊張してるんだよ。なんせ、大好きな閑那さんにようやく会えるんだし」
それを聞いて目を見開いたのは綾芽だけではなかった。
「そうなの?綾芽。あんなに嫌そうに言ってたから私てっきり――」
咲羅が驚いているのを見た眞葵のからかいは止まることを知らなかった。
「綾芽さんは照れ屋だから、素直になれないんだよ」
そう言った眞葵は、綾芽に咲羅にはバレない様に向こう脛を蹴られた。
眞葵が顔をしかめていると、綾芽はどうでもいいから早く行こうと咲羅の背中を押して歩き出した。
「遅くなってすいません」
咲羅の後から部屋に入った綾芽は、閑那ともう一人の人物に向かって言った。
「久しぶりね、綾芽ちゃん?そっちの子は――眞葵君ね?初めまして、ココの主・青羽(アオバ)閑那よ」
閑那は綾芽に挨拶すると、眞葵に向かって軽くウィンクした。眞葵は、閑那が男だということを一瞬忘れていたようだ。
その時、ちょうど煙草を吸い終えた涼がかったるそうに3人を見た。
それに気付いた閑那が、3人に向かって涼を紹介した。
「この子は涼、矢神(ヤガミ)涼よ。私の知り合いで――」
閑那が涼を3人に紹介している途中で、涼が閑那の言葉を遮った。
「細かいことはいいだろ?」
「そう?じゃあ、今度は貴女達の番ね」
閑那は涼に3人を紹介しようとしたが、3人は自分達で自己紹介を始めた。
「三神(ミカミ)綾芽と言います」
「狩野(カノウ)眞葵っス」
「湊谷(ミナトヤ)咲羅です」
自己紹介が終わったところで閑那は3人をソファに座らせ、皆にお茶をいれた。