第一章 出逢いの刻
誰にも止めることが出来ない運命の輪があると言ったら、果たして貴方は信じるだろうか?運命なんて、自分の手で切り開けばいい――そんな考えの方が多いだろう。しかし、狂ってしまった歯車はそう簡単には戻せない。そう、自分の手で切り開くことすら出来ないのだ。元を断たなければ――
“臨時ニュースをお伝えします!”
ある日の早朝、一人の少女の悲痛な死を告げるニュースが流れた。
“昨夜遅く、帰宅途中の会社員が○○川河川敷にて、不審な人陰を発見し110番通報しました。駆け付けた警察署署員によると、若い女性の変死体が横たわっていたそうです。女性の身元は現在確認中で――”
長々と臨時ニュースを伝えるキャスターをよそに、世間では相変わらずの日々が始まろうとしていた。そう、特定の――彼女と関係のある人物を除いて、だが。
「綾芽(アヤメ)、今朝のニュース見た?」
「あぁ……やっぱり朝水(アサミ)のことなの、アレって……」
「綾芽さん、俺らの情報信じてなかったんスか??」
とある高校の教室。ここに運命の輪を狂わされた人達がいた。彼女らは、ニュースで取り上げられた少女とは幼馴染み。高校進学で別れるまでは、ずっと同じ学校に通い、よく遊んでいた仲だ。
「だってさ~……咲羅(サクラ)は信用できるけど、眞葵(マキ)の情報は怪しすぎるんだよね……」
「なっ!?俺の兄貴の情報だったんだぜ?俺のとは格が違うよ!」
「柚琉(ユズル)さんは眞葵なんかと全然違うもんね」
「さっ咲羅!お前まで……」
何気に毒舌だったりする咲羅。それをいつものように平然と眺めている綾芽。眞葵はあーだ、こーだと半分ムキになって反論している。
「ね、学校が終ったら二人とも時間ある?付き合って欲しいところがあるんだけど――」
こんな時に……と申し訳なさそうに咲羅が二人に問いかける。
「私は予定ないし、別に構わないよ?」
「俺は……あんまり時間かからない事ならいいよ」
「時間なら大丈夫よ。朝水の事で話したいって人がいるの……」
その頃、別の場所では――
「おい!涼(リョウ)、聞いたか?朝水のこと!?」
「って、こいつがニュース見るようなタマじゃないの、お前知ってるだろ!?」
どいつもこいつもウルサイ……そんなことを思いながら、涼は答えた。
「知ってる。死んだんだろ、あの女……」
ニュースで流れるよりも速く、かつ正確な情報が涼の元には入っていた。そう、情報源が他とは違うのだ。速さも、格も……
「知ってたのかよ?!俺らはてっきり知らないモンだと思ってたぜ?」
知り合いやダチが死んだのにこの様だ――こんな奴等ばかりの世の中、いったい誰を信用しろというのか……
「ま、朝水の場合自業自得だしなっ」
誰かがケラケラ笑いながら言った。
自業自得――そんなこと言えるほど立派なんかよ、お前らは……その場にいるのもウザくなった涼は、無言で立ち去った。
朝早くに目が覚めてしまったため、とにかく眠かった。眠くてしょうがない。
「帰って寝るか……」
誰に言うでもなく、ボソッと呟くと人混みの中に消えていった。
目が覚めると、夕方近くだった。
携帯には閑那(カンナ)から着信があった。留守電にも伝言があったから、とりあえず聞いてみることにした。
『はぁ~い、元気?涼。閑那だけど、起きたらすぐに店に来てちょうだいな。アンタに紹介したい娘達がいるのよ』
なんだよ……紹介したいって。アイツのことだから、どうせろくな事じゃないんだろうけど――行かなきゃ何をされるかわかったもんじゃない――いや、何をされるのかを考えただけでゾッとする……
「しょうがない――行くか……」
気は進まなかったが、どうせ飲みに行っても朝水の死を嘲笑う連中しかいない。そんな連中と飲んでも、酒が不味くなる。そんなわかりきったことを思いながら、出かける準備に取り掛かる。
モノの数分で準備を終えた涼は、颯爽と歩き出した。目指す先は、閑那の店だ。
“臨時ニュースをお伝えします!”
ある日の早朝、一人の少女の悲痛な死を告げるニュースが流れた。
“昨夜遅く、帰宅途中の会社員が○○川河川敷にて、不審な人陰を発見し110番通報しました。駆け付けた警察署署員によると、若い女性の変死体が横たわっていたそうです。女性の身元は現在確認中で――”
長々と臨時ニュースを伝えるキャスターをよそに、世間では相変わらずの日々が始まろうとしていた。そう、特定の――彼女と関係のある人物を除いて、だが。
「綾芽(アヤメ)、今朝のニュース見た?」
「あぁ……やっぱり朝水(アサミ)のことなの、アレって……」
「綾芽さん、俺らの情報信じてなかったんスか??」
とある高校の教室。ここに運命の輪を狂わされた人達がいた。彼女らは、ニュースで取り上げられた少女とは幼馴染み。高校進学で別れるまでは、ずっと同じ学校に通い、よく遊んでいた仲だ。
「だってさ~……咲羅(サクラ)は信用できるけど、眞葵(マキ)の情報は怪しすぎるんだよね……」
「なっ!?俺の兄貴の情報だったんだぜ?俺のとは格が違うよ!」
「柚琉(ユズル)さんは眞葵なんかと全然違うもんね」
「さっ咲羅!お前まで……」
何気に毒舌だったりする咲羅。それをいつものように平然と眺めている綾芽。眞葵はあーだ、こーだと半分ムキになって反論している。
「ね、学校が終ったら二人とも時間ある?付き合って欲しいところがあるんだけど――」
こんな時に……と申し訳なさそうに咲羅が二人に問いかける。
「私は予定ないし、別に構わないよ?」
「俺は……あんまり時間かからない事ならいいよ」
「時間なら大丈夫よ。朝水の事で話したいって人がいるの……」
その頃、別の場所では――
「おい!涼(リョウ)、聞いたか?朝水のこと!?」
「って、こいつがニュース見るようなタマじゃないの、お前知ってるだろ!?」
どいつもこいつもウルサイ……そんなことを思いながら、涼は答えた。
「知ってる。死んだんだろ、あの女……」
ニュースで流れるよりも速く、かつ正確な情報が涼の元には入っていた。そう、情報源が他とは違うのだ。速さも、格も……
「知ってたのかよ?!俺らはてっきり知らないモンだと思ってたぜ?」
知り合いやダチが死んだのにこの様だ――こんな奴等ばかりの世の中、いったい誰を信用しろというのか……
「ま、朝水の場合自業自得だしなっ」
誰かがケラケラ笑いながら言った。
自業自得――そんなこと言えるほど立派なんかよ、お前らは……その場にいるのもウザくなった涼は、無言で立ち去った。
朝早くに目が覚めてしまったため、とにかく眠かった。眠くてしょうがない。
「帰って寝るか……」
誰に言うでもなく、ボソッと呟くと人混みの中に消えていった。
目が覚めると、夕方近くだった。
携帯には閑那(カンナ)から着信があった。留守電にも伝言があったから、とりあえず聞いてみることにした。
『はぁ~い、元気?涼。閑那だけど、起きたらすぐに店に来てちょうだいな。アンタに紹介したい娘達がいるのよ』
なんだよ……紹介したいって。アイツのことだから、どうせろくな事じゃないんだろうけど――行かなきゃ何をされるかわかったもんじゃない――いや、何をされるのかを考えただけでゾッとする……
「しょうがない――行くか……」
気は進まなかったが、どうせ飲みに行っても朝水の死を嘲笑う連中しかいない。そんな連中と飲んでも、酒が不味くなる。そんなわかりきったことを思いながら、出かける準備に取り掛かる。
モノの数分で準備を終えた涼は、颯爽と歩き出した。目指す先は、閑那の店だ。