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第二章 試練の刻

静紅……お前の言う通りだったな。こんな俺でも純粋に必要としてくれるヤツがいたよ……悪くないな、こういうのもよ――

舂葉希……お母さん……私、絶対に負けないから!何があっても『仲間』と一緒だったら――この人達と一緒なら大丈夫だよ!!

「ところで、凛香ちゃん。もう解ったかしら?」
「??」
閑那の突然の問いにキョトンとしている凛香。何の事を訊かれているのかが判らなかった。
「『不思議な感じ』の正体よ。あの2人に会ってみて、解ったんじゃないのかしら?」
「あぁ~……」
「で、どう?」
「なんかね、今回の事を抜きにしても……私達って『似てる』んだよね。多分――多分なんだけどね、綾芽さん達もトラウマかなんかを抱えてると思う。断言は出来ないんだけど――自分を偽って生きてきた、そんな感じがする」
「『読めなくても』そういう事は判るわけね」
「だね。まぁ、涼なんかは凄く判りやすかったりするけど、綾芽さんは空回りさせまくってる感じだし――」
「そうね……それだけ解れば十分よ、凛香ちゃん」

気がつくと、ソコには大きなドアが在った。暗闇の中に妖しく光る一枚のドア――
恐る恐る近づく2人。ドアの前に来ると、何処かで見たことがある様な――そんな感覚に陥った。
「このドア――」
「あぁ……俺達が閑那の店からココに来た時と同じモノの様だな」
「やっぱり……」
「どうする?他を探すか?この当ても無い暗闇で――」
「当てが無いなら――行き当たりばったりでいいんじゃないんですか?」
「ったく……お前ってヤツは――」
「何ですか??」
2人は顔を見合わせて笑った。腹の底から、心底楽しそうに――
「さぁ、行きましょう」
「だな……これ以上待たせると、閑那に何されるか判ったモンじゃない……」
「あはは――確かに……」
「「せ~の……」」

ドアに手をかけたと思った瞬間、ソコは暗闇から妖しい光の漂う閑那の店の中へと変わっていた。が、見たことの無い部屋に居るのだけは確かだった。
「おい……」
「はい?」
「行くぞ」
「はい!」
2人はその部屋から出て、辺りを見回した。すると、一枚のドアの向こうから、人の話し声が微かだが聞こえてくる。
「――おい」
「?」
「お前……芝居は上手いか?」
「え?」
「どうなんだ?」
「人並み――だと思いますよ」
「そうか……なら、こんなのどうだ?」
涼は何かを企んでいるらしく、綾芽に小声で話した。
「解りました。上手くいったら面白いですね、コレ」
「だろ?」
悪笑を浮かべた涼に促され、綾芽は独りでその部屋へと入っていく。
「ただいま……戻りました……」
「綾芽ちゃん!?」
「良かった~……ちゃんと戻ってこれたんだね、綾芽さん」
閑那と凛香が涙を堪えながら迎えてくれた。ココまでは予定通り――このまま上手くいくかは綾芽次第だった。あの閑那と凛香相手にどこまで通用するか――
「そういえば、涼はどうしたの?綾芽ちゃん」
「そうだよ!!涼は?一緒に帰ってきたんじゃないの??」
「それが――」
綾芽は目を伏せてしまった。目を見て話せない。目には涙を溜めながら、それを堪えるようにしてどうにかソレを続けようとした。
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