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第二章 試練の刻

「さぁ……もう行きなさい。貴女がココにいる理由は無くなったわ。それとも――」
「戻っても……舂葉希は消えないよね??」
「え……えぇ、私はいつでも貴女と共にいるわ」
「なら良かった!」
「え?」
「舂葉希まで消えちゃうのはイヤだもん!」
「クスッ……実体は無いけど、ちゃんと貴女と共にいるわよ。お母さんと一緒に、いつまでも――ね」
「そっか~……なら安心だ!じゃあ、私行くね!向こうにも護らなきゃならない人達が居るから!!」
「えぇ、行きなさい。そして、悔いの無い選択をしなさい」
「うん!有難う!!またね、舂葉希、お母さん」
「えぇ、いってらっしゃい。綾芽」
「行ってきます!!」
振り向くことも無く、綾芽は歩き続けた。もう会えないであろう『姉』舂葉希と母を残して――

「お母さん、貴女もココに居るべきじゃないわ」
「でも……」
「あの子には……貴女が必要なのよ」
「それは――貴女も同じじゃない?舂葉希」
「そんなことないわよ。だって――私は綾芽と共に生き続けるんだもの」
「でもね――」
「あの子はまだ何も知らないのよ……貴女が病院にいることも、植物状態なことも、ね」
「――貴女を護ってあげられなくて……ごめんなさい」
「いいのよ。私の分も、これからは綾芽を護って、そして愛してあげて。それが……産まれることの無かった私の願いよ、お母さん」

「どうしてだ……なんで静紅が――」
「あれ?涼さんの方が早かったみたいですね」
「静……紅……」
試練から戻った綾芽が、当ても無くフラフラと歩いていると、暗闇の中にうずくまっている人影らしきモノが見えた。恐る恐る近づいてみると涼だったのだが、話しかけてもこちらの声は聞こえているのかどうか――同じ事ばかりを呟いていた。
「涼さん??」
「どうして静紅が――」
「っもう!涼さん、いい加減目を覚ませ!!」
虚ろな目をしている涼を見た綾芽は、涼の胸倉を掴んで頬に一発、平手を打った。
「っつ~……何すんだよ!?」
涼は試練が終わったことに気づかず、綾芽に殴りかかる所だった。
「っだよ……お前か」
「お前かじゃないですよ!!今、思いっきり殴ろうとしましたよね!?」
「はっ……何の事だ?」
「まったく……この人は――」
「何だよ……」
「何でも無いですよ。さぁ、行きましょう、閑那さん達が待ってますよ」
「あぁ……そうだな……」
綾芽の言葉に、何処が虚ろ気に答える涼。
それを察した綾芽は、何を考えているのかいきなり炎の玉を涼に向かって投げつけた。
「な……何すんだよ!!殺す気か!?」
「何言ってるんですか?熱くないでしょう、ソレ」
「え……?」
綾芽に言われて正気に戻るが、炎が身にまとわりついているのにちっとも熱くない。それどころか、何処か懐かしい温かさだった。
「コレ……は?」
「静紅さんでしたっけ?涼さんがずっと呟いてた人」
「コレが静紅に何の関係があるんだよ!?」
「その炎、静紅さんですよ」
「は?」
「静紅さんの魂が、そうやって炎に姿を変えて涼さんの凍えた心を溶かそうとしているんですよ」
「静紅が……?」
「えぇ、いい人ですね。静紅さんって」
この炎が静紅?そんな事……でも、この温かさは静紅の――そう思った途端、涼の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。
「涼さん、人はね、死んだら終わりなんかじゃないんですよ?死んでも誰かの心に生き続けるんです。私にもそういう人がいるから――だから、いつまでも塞ぎ込んでないで行きましょう?」
「心に生き続ける……だと?」
「えぇ、私の死んだ姉と母も……私の心の中で今も生きています」
綾芽は舂葉希と母の事を思い出しながら話した。
その目には、やはり涙が溜まっていた。もう二度と会えないであろう、唯一の肉親を想って――
「さぁ、涼さん飲み込まれる前に此処から出ましょう?」
「静紅……お前は……俺に生きろと言うのか?」
「涼さん?」
「そうか……それがお前の望み、か――なら、俺はお前が望む通り生きるさ。ソレがせめてもの手向けだ」
「フフ……ようやくケリがついたみたいですね、涼さん」
「あぁ……悪いな、面倒かけて」
「何言ってるんですか、『仲間』なんだから当たり前ですよ!!」
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