第二章 試練の刻
「ったく……何処に行きやがったんだ!?」
「本当に――何処に行ってしまったのかしら……」
「お前が目を離さなきゃこんな事にはならなかったってのによ!!アイツがチカラに目覚めてたら――どうしてくれんだよ!?」
おじさんの強烈な一撃が百合の顔に当たった。痣になるであろう程、強力な一撃だった。
「ごめんなさい……私が……私が全ていけないんです……だから……お願いだから――」
「あ~あ……ま~た女の人殴って泣かせてるよ、あのサディスト!!」
百合が涙で濡れた視界を上へとやると、ソコには綾芽と舂葉希が立っていた。
「綾芽……どうして――何で戻ってきたの??何であのまま逃げなかったのよ!?」
「チッ……そういう事かよ……」
おじさんは綾芽には目もくれず、百合が崩れ落ちている場所へと足を向けた。
しかし、それはあっけなく、舂葉希が片手で制してしまった。
「待ちな……アンタの相手は私だよ!!」
「貴様……何処まで俺の邪魔をするつもりだ!?」
「何処まで?ふざけんなよ――んなの一生に決まってんだろ!!」
隙を見て綾芽が百合をおじさんから遠ざけたのを確認すると、舂葉希は二人の周りを風の壁で遮った。
「大丈夫?お母さん??」
「綾芽……何で?今まであんなに酷い事をしてきたのに――」
「お母さんが望んでやってた訳じゃないって、舂葉希に教えて貰ったから……それに、私はお母さんを信じてる!お母さんがどうして私にあんな事してたのか――それが判ったから、だから今度は私がお母さんを助ける番だよ」
笑顔で自分に語りかける娘を見て、百合は泣き崩れてしまった。
自分でも酷い事をしていたのは判っていた。判っいてたのに止められなかった。
自分の不甲斐なさで胸が苦しかった。
夫を早くに亡くし、たった一人の可愛い娘を――自分が悪いとはいえ、あの男のやる事を止められないばかりか、一緒になって虐待してきた。それなのに、娘はこうして笑いかけてくれている。
「大丈夫だよ。私はお母さんを恨んでない。今までの事も、もう赦せる。私だって、いつまでも子供じゃないんだから!」
「……馬鹿ね――私にとって、貴女はいつまでたっても子供なのよ?」
「あ……そっか」
「――有難う」
「うん……お母さんはここに居て?私はおじさんを倒さなきゃ――」
おもむろに立ち上がり、壁の向こうを睨み付ける綾芽。自分の為に――否、母の為にもあの男を倒さなくてはいけない。
「綾芽!」
「ん?何?お母さん」
「気をつけてね」
「うん!!」
綾芽は自ら風の壁から出てきた。その姿は、『あの頃』の綾芽ではなく、『現在』の綾芽だった。自らの過去を乗り越え、それを受け入れることで『本当の自分』になったのであろう。
「おじさん、敵は舂葉希だけじゃないよ!?」
「なっ……」
「あら……意外と早かったわね?」
「お母さんの気持ちが解ったからね、舂葉希のおかげで!!」
「そう……なら良かったわ。今の貴女ならチカラが使えるわね」
「チカラ――だと!?チッ……」
おじさんはチカラと聞いて逃げようとした。勝ち目が無くなったからだ。しかし、それは舂葉希の『風』によってあっけなく遮られた。
「さぁ、綾芽見せておやりなさい。貴女のチカラを!」
「うん!おじさん、もう容赦しないからね!?」
そういうと、綾芽は自分の両手の中に炎の塊を作り出した。一定の形を保ちつつ、ゆらゆらと揺れる炎。
ソレは『赤』ではなく『青』い炎だった。冷酷な、非情な心を想わせる様な、そんな冷たい色だ。
その燃えたぎる炎の塊を見て、おじさんはガタガタと震えていた。
「あ……やめ……」
「おじさん、知ってた?『火』っていうのはね、『再生』と――『浄化』を司ってるんだよ」
「たっ……助け……」
「私の『風』はね、『守護』――それに、『粉砕』を司ってるのよ?」
「「もう一度、生まれ変わってやり直しな!!」」
綾芽の『火』と舂葉希の『風』により、おじさんは一瞬にして消え去った。
多分、現実世界では廃人になっていることだろう。己の欲望のままに生き、多くの犠牲を強いてきた報いを、今受けることとなったのだ。
「本当に――何処に行ってしまったのかしら……」
「お前が目を離さなきゃこんな事にはならなかったってのによ!!アイツがチカラに目覚めてたら――どうしてくれんだよ!?」
おじさんの強烈な一撃が百合の顔に当たった。痣になるであろう程、強力な一撃だった。
「ごめんなさい……私が……私が全ていけないんです……だから……お願いだから――」
「あ~あ……ま~た女の人殴って泣かせてるよ、あのサディスト!!」
百合が涙で濡れた視界を上へとやると、ソコには綾芽と舂葉希が立っていた。
「綾芽……どうして――何で戻ってきたの??何であのまま逃げなかったのよ!?」
「チッ……そういう事かよ……」
おじさんは綾芽には目もくれず、百合が崩れ落ちている場所へと足を向けた。
しかし、それはあっけなく、舂葉希が片手で制してしまった。
「待ちな……アンタの相手は私だよ!!」
「貴様……何処まで俺の邪魔をするつもりだ!?」
「何処まで?ふざけんなよ――んなの一生に決まってんだろ!!」
隙を見て綾芽が百合をおじさんから遠ざけたのを確認すると、舂葉希は二人の周りを風の壁で遮った。
「大丈夫?お母さん??」
「綾芽……何で?今まであんなに酷い事をしてきたのに――」
「お母さんが望んでやってた訳じゃないって、舂葉希に教えて貰ったから……それに、私はお母さんを信じてる!お母さんがどうして私にあんな事してたのか――それが判ったから、だから今度は私がお母さんを助ける番だよ」
笑顔で自分に語りかける娘を見て、百合は泣き崩れてしまった。
自分でも酷い事をしていたのは判っていた。判っいてたのに止められなかった。
自分の不甲斐なさで胸が苦しかった。
夫を早くに亡くし、たった一人の可愛い娘を――自分が悪いとはいえ、あの男のやる事を止められないばかりか、一緒になって虐待してきた。それなのに、娘はこうして笑いかけてくれている。
「大丈夫だよ。私はお母さんを恨んでない。今までの事も、もう赦せる。私だって、いつまでも子供じゃないんだから!」
「……馬鹿ね――私にとって、貴女はいつまでたっても子供なのよ?」
「あ……そっか」
「――有難う」
「うん……お母さんはここに居て?私はおじさんを倒さなきゃ――」
おもむろに立ち上がり、壁の向こうを睨み付ける綾芽。自分の為に――否、母の為にもあの男を倒さなくてはいけない。
「綾芽!」
「ん?何?お母さん」
「気をつけてね」
「うん!!」
綾芽は自ら風の壁から出てきた。その姿は、『あの頃』の綾芽ではなく、『現在』の綾芽だった。自らの過去を乗り越え、それを受け入れることで『本当の自分』になったのであろう。
「おじさん、敵は舂葉希だけじゃないよ!?」
「なっ……」
「あら……意外と早かったわね?」
「お母さんの気持ちが解ったからね、舂葉希のおかげで!!」
「そう……なら良かったわ。今の貴女ならチカラが使えるわね」
「チカラ――だと!?チッ……」
おじさんはチカラと聞いて逃げようとした。勝ち目が無くなったからだ。しかし、それは舂葉希の『風』によってあっけなく遮られた。
「さぁ、綾芽見せておやりなさい。貴女のチカラを!」
「うん!おじさん、もう容赦しないからね!?」
そういうと、綾芽は自分の両手の中に炎の塊を作り出した。一定の形を保ちつつ、ゆらゆらと揺れる炎。
ソレは『赤』ではなく『青』い炎だった。冷酷な、非情な心を想わせる様な、そんな冷たい色だ。
その燃えたぎる炎の塊を見て、おじさんはガタガタと震えていた。
「あ……やめ……」
「おじさん、知ってた?『火』っていうのはね、『再生』と――『浄化』を司ってるんだよ」
「たっ……助け……」
「私の『風』はね、『守護』――それに、『粉砕』を司ってるのよ?」
「「もう一度、生まれ変わってやり直しな!!」」
綾芽の『火』と舂葉希の『風』により、おじさんは一瞬にして消え去った。
多分、現実世界では廃人になっていることだろう。己の欲望のままに生き、多くの犠牲を強いてきた報いを、今受けることとなったのだ。