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序章 ハジマリの刻:綾芽(アヤメ)

「どうしたの?返事がきたんでしょ??」
メールは着た。しかしさっきの返事ではなかったのだ。
「このアドレスは存在しません。もう一度アドレスをお確かめの上、送信し直して下さい。だとさ……」
「眞葵、アドレス間違えてない?」
「んなわけないだろ――間違えないように綾芽さんの携帯から返信したんだからよ……」
「じゃあ――どういう……こと?」
「それはこっちが聞きてぇよ!」
携帯のアドレスは簡単には変えられない。数時間前に私の携帯にメールを送ってきたアドレスは、今はもう存在しない……
「携帯を変えたとか?」
「かもね。ま、どっかの物好きのいたずらってことで、この件はもうお終い!」
「え~!?つまんねぇ~の……」
「アンタねぇ~……」
私は呆れて溜め息を吐いた。
「綾芽、それ消しちゃったら?なんか気味が悪いし……」
「ん、そうだね」
さすがに、いつまでもこんなメールを取っておくつもりはなかった。
私は早速あのメールを削除した。もう二度と、こんなメールは着て欲しくない。
その日は、一日中不愉快でしかなかった。

あのメール事件から6日目のこと。咲羅がいきなりうちに来た。かなり焦っている様子だった。
「綾芽……朝水(アサミ)の事覚えてる?」
その声は震え、目には涙が浮かんでいた。
「中学まで一緒だった、あの朝水のこと?」
朝水とは中学まで一緒の学校で、咲羅や眞葵と同様、よく遊んだりした友達だった。高校が違うことから、最近は会うどころか連絡さえ、全くと言っていいほど取らなくなっていた。
「その朝水よ。あの子――」
咲羅はそういうとついに泣き崩れてしまった。
私が咲羅の落ち着くのを待っていると、今度は眞葵がやってきた。
顔は青ざめ、冷や汗を垂らしていたが、眞葵は開口一番にこう言った。
「綾芽さん、落ち着いて聞けよ……?」
眞葵のただならぬ雰囲気に、いつものお巫山戯じゃないことだけは分かった。
私が頷くと、眞葵は一拍置いて言った。
「朝水が――あの朝水が、今朝変死体で見つかったらしい……」
私は事態が全く飲み込めなかった。
取り合えず、隣で泣いている咲羅に訊いてみることにした。
「咲羅、眞葵が言ってること……本当なの?」
咲羅は泣きながら頷いた。力なく……そして――
「あの子、高校に入ってしばらくたってから良くない噂が流れてたの……綾芽は知らないみたいだけど、あの子――」
咲羅はまた泣き出してしまった。そんな咲羅に代わり、眞葵が躊躇いながら呟くように言った。
「朝水のヤツ、ウリと薬をやってたらしい……」
「ウリ?薬?」
私には全く理解できなかった。
「――援交と……麻薬だ」

私が呆けていると、また見知らぬアドレスからメールが……
『冗談かと思っているようですが、私は本気なんですよ?(笑)これで信じて頂けたでしょう?次は、少し休ませて頂いて、1ヶ月以内にまた、あなたの大切な人に死んでもらいましょう』
これは偶然なのか、それとも――
あのメールが着てから、私には理解できないことが私の周りで始まっていたのだ。
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