第一章 出逢いの刻
「イランイランのおかげ――かしらね」
「イランイラン……」
「そうよ、結構効くのよ?アロマって」
「ふぅ~ん……」
「あらあら……お姫様はまだお眠のようね」
閑那は優しく微笑みながら、凛香に手を差し出した。
「悪いんだけど、他の人達がもうすぐ来るから――」
「他の……人達って?」
「貴女と同じ、運命を狂わせられた人達よ」
「アタシと同じ……か」
凛香は呟きながら閑那の差し出した手を取った。
「なんか――不思議な気分だなぁ~……」
「夢も見なかったから?」
「そういうのじゃないの……なんていうのかな――」
「無理に言葉にしようとしなくてもいいわよ?会えば自然と言葉になるでしょうから」
「うん……」
「さぁ、行きましょう?貴女を必要としている人達の許へ……」
店のドアにはまたしても“Close”の看板がぶら下がっていた。綾芽は勝手に入っていいのかどうか悩んでいると――
「やっぱり……お前も閑那に呼び出されてたか……」
背後、しかも頭上から声が降り注いできた。
「涼さん!?」
振り向くと眠そうな、それもかなり不機嫌な顔の涼が立っていた。
「なんだよ……入らないのか?」
「え??」
「入らないんなら退け――んなとこに突っ立ってられると邪魔なんだよ……」
「そんな事言っても――」
綾芽はドアにぶら下がっている看板を指差した。
「あぁ……今日はもう仕事をしないって意味だ。閑那がいないわけじゃない」
「そうなんですか?」
「自分から呼び出しといて留守にするようなヤツじゃない――閑那はな」
そういうと、涼はドアに手をかけた。
「さっさとしないと、閑那に何されるか判んないぞ」
「え……?あ、はいっ!」
涼に続くように綾芽は店へと足を踏み入れた。あの時と同じ香りが漂う店内は、やはり不思議な雰囲気だった。
涼は歩みを止める事なく奥へとスタスタ歩いて行く。そんな涼に置いていかれないように気をつけながら、綾芽も奥へと進んだ。
「閑那、来たぞ」
「閑那さ~ん?!」
前に涼と会った部屋に閑那の姿は無かった。涼は以前と同じく、ソファーに座るなり煙草に火を点け吸い出した。
綾芽がどうすればいいかわからずに立っていると、涼は苛つきながら話しかけた。
「んなとこに突っ立ってないで、お前も座れば?どうせすぐに閑那が来るだろうけどな……」
「はぁ……」
まるで自分の部屋でもあるかの様な涼の振る舞いに戸惑いながらも、綾芽は以前と同じ位置に腰を下ろした。そして、美味しそうに煙草を吸っている涼に綾芽はふと疑問を投げかけた。
「あの……涼さん、1つ訊いてもいいですか?」
「あんだよ……?」
「煙草――美味しいんですか?」
訝しげな顔をしている涼を見て、綾芽は訊くんじゃなかったと後悔した。怒らせてしまったと思ったから――
「お前……吸った事ないのか?」
涼はまるで珍しい物でも見るような顔で綾芽に聞いた。
「ありませんよ!私、まだ未成年ですよ!?眞葵じゃあるまいし――」
「俺は中学から吸ってるけどな……今時の高校生なんて、ほとんど吸ってるだろ?」
「知りませんよそんな事!第一、体に悪いじゃないですか??」
「お前も吸うようになったらわかるさ」
「へ?」
「煙草の美味さ……だよ」
ふぅ~っと煙を吐き出し、涼は続けた。
「吸うまではわかんないさ。食べ物と同じで味も色々あるからな。だから、俺が美味いと思って吸ってても他の奴には不味く感じる事もある――吸ってみるか?」
涼は自分の煙草を綾芽に差し出した。
ハイライト(17ミリ)である。綾芽は恐る恐る一本取り出し、匂いを嗅いでみた。ラムのいい匂い――と、背後から何か恐ろしい感じのするモノを感じ振り返ると――
「涼!!アンタ何未成年に煙草勧めてるのよ!?」
閑那が怒りを露わにし立っていた。その閑那の後ろには、制服を着た女の子がいる。
「綾芽ちゃん!」
「イランイラン……」
「そうよ、結構効くのよ?アロマって」
「ふぅ~ん……」
「あらあら……お姫様はまだお眠のようね」
閑那は優しく微笑みながら、凛香に手を差し出した。
「悪いんだけど、他の人達がもうすぐ来るから――」
「他の……人達って?」
「貴女と同じ、運命を狂わせられた人達よ」
「アタシと同じ……か」
凛香は呟きながら閑那の差し出した手を取った。
「なんか――不思議な気分だなぁ~……」
「夢も見なかったから?」
「そういうのじゃないの……なんていうのかな――」
「無理に言葉にしようとしなくてもいいわよ?会えば自然と言葉になるでしょうから」
「うん……」
「さぁ、行きましょう?貴女を必要としている人達の許へ……」
店のドアにはまたしても“Close”の看板がぶら下がっていた。綾芽は勝手に入っていいのかどうか悩んでいると――
「やっぱり……お前も閑那に呼び出されてたか……」
背後、しかも頭上から声が降り注いできた。
「涼さん!?」
振り向くと眠そうな、それもかなり不機嫌な顔の涼が立っていた。
「なんだよ……入らないのか?」
「え??」
「入らないんなら退け――んなとこに突っ立ってられると邪魔なんだよ……」
「そんな事言っても――」
綾芽はドアにぶら下がっている看板を指差した。
「あぁ……今日はもう仕事をしないって意味だ。閑那がいないわけじゃない」
「そうなんですか?」
「自分から呼び出しといて留守にするようなヤツじゃない――閑那はな」
そういうと、涼はドアに手をかけた。
「さっさとしないと、閑那に何されるか判んないぞ」
「え……?あ、はいっ!」
涼に続くように綾芽は店へと足を踏み入れた。あの時と同じ香りが漂う店内は、やはり不思議な雰囲気だった。
涼は歩みを止める事なく奥へとスタスタ歩いて行く。そんな涼に置いていかれないように気をつけながら、綾芽も奥へと進んだ。
「閑那、来たぞ」
「閑那さ~ん?!」
前に涼と会った部屋に閑那の姿は無かった。涼は以前と同じく、ソファーに座るなり煙草に火を点け吸い出した。
綾芽がどうすればいいかわからずに立っていると、涼は苛つきながら話しかけた。
「んなとこに突っ立ってないで、お前も座れば?どうせすぐに閑那が来るだろうけどな……」
「はぁ……」
まるで自分の部屋でもあるかの様な涼の振る舞いに戸惑いながらも、綾芽は以前と同じ位置に腰を下ろした。そして、美味しそうに煙草を吸っている涼に綾芽はふと疑問を投げかけた。
「あの……涼さん、1つ訊いてもいいですか?」
「あんだよ……?」
「煙草――美味しいんですか?」
訝しげな顔をしている涼を見て、綾芽は訊くんじゃなかったと後悔した。怒らせてしまったと思ったから――
「お前……吸った事ないのか?」
涼はまるで珍しい物でも見るような顔で綾芽に聞いた。
「ありませんよ!私、まだ未成年ですよ!?眞葵じゃあるまいし――」
「俺は中学から吸ってるけどな……今時の高校生なんて、ほとんど吸ってるだろ?」
「知りませんよそんな事!第一、体に悪いじゃないですか??」
「お前も吸うようになったらわかるさ」
「へ?」
「煙草の美味さ……だよ」
ふぅ~っと煙を吐き出し、涼は続けた。
「吸うまではわかんないさ。食べ物と同じで味も色々あるからな。だから、俺が美味いと思って吸ってても他の奴には不味く感じる事もある――吸ってみるか?」
涼は自分の煙草を綾芽に差し出した。
ハイライト(17ミリ)である。綾芽は恐る恐る一本取り出し、匂いを嗅いでみた。ラムのいい匂い――と、背後から何か恐ろしい感じのするモノを感じ振り返ると――
「涼!!アンタ何未成年に煙草勧めてるのよ!?」
閑那が怒りを露わにし立っていた。その閑那の後ろには、制服を着た女の子がいる。
「綾芽ちゃん!」