第一章 出逢いの刻
いきなりまた――何を言い出すんだコイツは……凛香が嫌そうな顔をすると、閑那は苦笑いしたまま続けた。
「私に出来るのは、貴女達を引き合わせて身を守る術を与える位なの……だから、貴女達がお互いを信頼出来るようになるまでは、間接的な事しか出来ないわ」
「だから?アタシがその人達と会ったら何か変わるの??」
「えぇ。貴女達にしかこの事件を終らせる事が出来ないの……」
「なんで?どうしてアタシじゃなきゃダメなの!?」
「それは――貴女が選ばれたからよ」
「ハッ……そんなの信じるとでも思ってるの?第一、アタシじゃなくても代わりはいっぱいいるじゃないの!」
「代わりなんていないわ。冴木(サエキ) 凛香の代わりは誰にも出来ない」
閑那は諭す様に凛香に語る。
「いいこと?この世に自分の代わりが出来る人がいるなんて思わないで頂戴。貴女という存在の代わりなんて、誰にも出来ないのよ?」
「そんなこと言ったって……アタシが死んだって誰も悲しんでくれないわよ!」
「そんな悲しい事言わないで……貴女が死ぬような事になったら、私やミカドが悲しむわ……」
「なんでよ……?アンタやミカドに、アタシの何がわかるって言うのよ!!?」
今にも泣きそうな顔の凛香に向かって、閑那はしれっとした表情で答えた。
「わからないわよ、そんなの。貴女は私に何も話してくれないもの。話してくれなきゃ何もわからないわ。私はね、記憶を読み取る事は出来る。でもね、凛香ちゃん、貴女の“想い”までは読み取れないわ」
「アタシの……想い?」
涙目の凛香が閑那に聞いた。
「そうよ。貴女がどういう考えなのか、私に何を望んでいるのか、そういう“想い”は直接口にしてくれなきゃ、私にもミカドにもわからないわ」
凛香は俯いて黙ってしまった。
「だからミカドは貴女に答えないのよ。あの子ね、チカラのせいで周りに拒絶されて育ったのよ。そのせいかな……あの子が優しすぎたのは……チカラの制御が出来ずに、いつか大事な人を傷つけてしまうんじゃないかって、いつも怯えてたわ」
凛香は反応しない。それでも閑那は続けた。
「いつだったかな……あの子ね、自分と同じような目に誰かが遭っていたらその子の分も代わってあげたいって言ったのよ。自分が親や周りの大人に虐待されているのにも関わらずよ?きっと、誰かがチカラのせいで自分みたいに扱われるのが耐えられなかったのね」
「虐待……?」
凛香は閑那の発した虐待という言葉に反応した。
「えぇ。何度も私の目の前で殺されかけたわ……私の目はね、ミカドを庇った時に親に切られてから見えないのよ。その時のショックで――ミカドは自分のチカラを忌み嫌い、自ら命を絶ったのよ……」
「自殺――したの?」
「そうよ。私がミカドを庇って失明したのを……奴等はその責任全てをミカドに押し付けて――あの子を隔離して、私には絶対に会わせようとしなかった。私にはミカドは病院に入院していると嘘を吐いてたのよ?目が見えないからって。それから何日かして、夢の中にミカドが出てきたの。最後に姿を見た時よりもずっと痩せてたわ。それに――」
「それに、なに?」
「あの子の両手から血が……物凄い量の血が流れていたの…足元には血で出来た大きな水たまりがあったわ……私ね、あの子に駆け寄って血を止めようとしたのよ……そうしたら、あの子なんて言ったと思う?『お兄ちゃんやめて……もう僕を自由にして……』泣きながらそう言ったのよ?私にはどうすることも出来なかったわ……」
「そう……」
「でも、私やミカドを可哀想なんて思わないでね?自殺はあの子なりに考えて出した結論なの。私だって、視力を失って良かったって思ってるわ」
「強いんだね……」
凛香はポツリとそう漏らした。
「強くなんかないわよ。私もミカドも、自分で選んだ結果だもの。その結果がどうであれ、自分で選んだからこそ責任を持って進んでいるだけ。だから、誰かの手で進む道を制限されている貴女達の手助けをしたいのよ。絶対に後悔はして欲しくないから」
「でも……」
「何?」
「アタシはそんなに強くない……」
「クスッ――人間なんてそんなもんよ?初めから強い人なんかいないわ。だからこそ、私達がいるのよ?」
閑那はゆっくりと凛香の隣に座り、抱きしめ、優しく髪を撫で始めた。
「ね、一度だけ……一度だけでいいから、彼らに会ってみない?」
「会うだけで……いいの?」
「えぇ、その後どうするかは貴女の自由よ?」
「アタシの――自由?」
「そうよ。彼らと共に行動するのも、このまま一人狂わされた運命に押し流されるのも、選ぶのは貴女自身の自由よ」
「私に出来るのは、貴女達を引き合わせて身を守る術を与える位なの……だから、貴女達がお互いを信頼出来るようになるまでは、間接的な事しか出来ないわ」
「だから?アタシがその人達と会ったら何か変わるの??」
「えぇ。貴女達にしかこの事件を終らせる事が出来ないの……」
「なんで?どうしてアタシじゃなきゃダメなの!?」
「それは――貴女が選ばれたからよ」
「ハッ……そんなの信じるとでも思ってるの?第一、アタシじゃなくても代わりはいっぱいいるじゃないの!」
「代わりなんていないわ。冴木(サエキ) 凛香の代わりは誰にも出来ない」
閑那は諭す様に凛香に語る。
「いいこと?この世に自分の代わりが出来る人がいるなんて思わないで頂戴。貴女という存在の代わりなんて、誰にも出来ないのよ?」
「そんなこと言ったって……アタシが死んだって誰も悲しんでくれないわよ!」
「そんな悲しい事言わないで……貴女が死ぬような事になったら、私やミカドが悲しむわ……」
「なんでよ……?アンタやミカドに、アタシの何がわかるって言うのよ!!?」
今にも泣きそうな顔の凛香に向かって、閑那はしれっとした表情で答えた。
「わからないわよ、そんなの。貴女は私に何も話してくれないもの。話してくれなきゃ何もわからないわ。私はね、記憶を読み取る事は出来る。でもね、凛香ちゃん、貴女の“想い”までは読み取れないわ」
「アタシの……想い?」
涙目の凛香が閑那に聞いた。
「そうよ。貴女がどういう考えなのか、私に何を望んでいるのか、そういう“想い”は直接口にしてくれなきゃ、私にもミカドにもわからないわ」
凛香は俯いて黙ってしまった。
「だからミカドは貴女に答えないのよ。あの子ね、チカラのせいで周りに拒絶されて育ったのよ。そのせいかな……あの子が優しすぎたのは……チカラの制御が出来ずに、いつか大事な人を傷つけてしまうんじゃないかって、いつも怯えてたわ」
凛香は反応しない。それでも閑那は続けた。
「いつだったかな……あの子ね、自分と同じような目に誰かが遭っていたらその子の分も代わってあげたいって言ったのよ。自分が親や周りの大人に虐待されているのにも関わらずよ?きっと、誰かがチカラのせいで自分みたいに扱われるのが耐えられなかったのね」
「虐待……?」
凛香は閑那の発した虐待という言葉に反応した。
「えぇ。何度も私の目の前で殺されかけたわ……私の目はね、ミカドを庇った時に親に切られてから見えないのよ。その時のショックで――ミカドは自分のチカラを忌み嫌い、自ら命を絶ったのよ……」
「自殺――したの?」
「そうよ。私がミカドを庇って失明したのを……奴等はその責任全てをミカドに押し付けて――あの子を隔離して、私には絶対に会わせようとしなかった。私にはミカドは病院に入院していると嘘を吐いてたのよ?目が見えないからって。それから何日かして、夢の中にミカドが出てきたの。最後に姿を見た時よりもずっと痩せてたわ。それに――」
「それに、なに?」
「あの子の両手から血が……物凄い量の血が流れていたの…足元には血で出来た大きな水たまりがあったわ……私ね、あの子に駆け寄って血を止めようとしたのよ……そうしたら、あの子なんて言ったと思う?『お兄ちゃんやめて……もう僕を自由にして……』泣きながらそう言ったのよ?私にはどうすることも出来なかったわ……」
「そう……」
「でも、私やミカドを可哀想なんて思わないでね?自殺はあの子なりに考えて出した結論なの。私だって、視力を失って良かったって思ってるわ」
「強いんだね……」
凛香はポツリとそう漏らした。
「強くなんかないわよ。私もミカドも、自分で選んだ結果だもの。その結果がどうであれ、自分で選んだからこそ責任を持って進んでいるだけ。だから、誰かの手で進む道を制限されている貴女達の手助けをしたいのよ。絶対に後悔はして欲しくないから」
「でも……」
「何?」
「アタシはそんなに強くない……」
「クスッ――人間なんてそんなもんよ?初めから強い人なんかいないわ。だからこそ、私達がいるのよ?」
閑那はゆっくりと凛香の隣に座り、抱きしめ、優しく髪を撫で始めた。
「ね、一度だけ……一度だけでいいから、彼らに会ってみない?」
「会うだけで……いいの?」
「えぇ、その後どうするかは貴女の自由よ?」
「アタシの――自由?」
「そうよ。彼らと共に行動するのも、このまま一人狂わされた運命に押し流されるのも、選ぶのは貴女自身の自由よ」