第一章 出逢いの刻
「カンナ……」
凛香はその単語を呟くと、ふ～っと溜め息を吐いた。名前しか手掛りがない。この世にカンナという名前の人物が何人いることか――ベットに横になりながら、物思いに耽っていた凛香は、ふとあることを思い出した。
最近凛香の学校である事が流行っているのだ。占い、それも道具などは何も使わない。占い師と向かい合って座るだけで、こちらの質問には全て的確に答えてくれるらしい。占い師は中性的な容貌で、必要なこと以外は決して話さないらしい。そして、占い師の言うことは決して外れない。必ず中ると評判なのだ。
「どっかに――あの雑誌なかったっけ？」
凛香は起き上がると重い腰を上げ、とある雑誌を探し出した。
しばらく掃除なんて行為をしたことのない凛香は、どこに何があるのかすら忘れかけていた。乱雑に物が置かれ、積み上げた雑誌は何かの拍子で崩れていた。
「――よくよく見ると……汚いなぁ～」
足の踏み場こそあるが、お世辞にも綺麗とは言い難いほどその部屋は散らかっていた。
「しょーがない……片付けながら探すか……」
この状態から探すのは無理だと悟った凛香は、ゴミ袋やらを取りにリビングへ向かった。
どこに掃除用具などがあるのかすらわからない。とりあえず母親に言えば出してくれるだろう。そう思ったのだ。
リビングへ行くと、母の姿はなく、キッチンの方から物音が聞こえた。行ってみると、夕食の準備を忙しなくしている母の姿がそこにあった。
「あら、いたの？」
母の後ろ姿を眺めていたら、突然振り向いた母と目が合った。
「うん……ねぇ、ゴミ袋ってどこにあるの？」
「何に使うの？」
「部屋の掃除したいから。掃除用具も欲しいんだけど？」
「アンタが掃除ねぇ～……今まであんなに言っても掃除なんてしようとしなかったのに、一体どういう風の吹き回し？」
「別に……気が向いたから、掃除しようと思っただけ。アタシが掃除したらイケナイ？」
『まったく……いつになっても口の利き方が直らないんだから……』
「育ちが悪いんだからしょうがないでしょ！？早く教えてよ！」
母の心の声にイライラしながら、凛香は言った。
『なんでこんな娘になっちゃったのよ……私の何がいけなかったの……？』
「もういいっ！自分で探すよ！！」
凛香はそういうと、母の視界からさっさと消えた。とりあえず、コンビニの袋にゴミを入れればいいや。そんなことを考えながら、部屋の掃除を始めた。
ゴミ袋がないからか、あまり綺麗にはできなかったが、探していたモノは見付けることができた。
ベットに横になりながら、雑誌のページをめくっていく。すると、特集記事の中に目当てのモノがあった。“現代のノストラダムス出現か！？占いは百発百中！！”そんな見出しの記事を眺めていたら、ふとある文字に目が留まった。
「占い師・閑那――」
閑那という名の占い師。偶然か……そう思いながら、しばらく記事を眺めていたら、ある考えが頭をよぎった。
「明日、ココに行ってみようかな……」
百発百中というなら、自分が探しているカンナの居場所くらい簡単に中てられるだろうという考えくらいしか思い浮かばなかったから……
「私は命がけで貴女達を導く。だから……死なないで頂戴。そうじゃないと、命をかける意味がないわ」
突然訳のわからないことを言い出す閑那。
何故命をかけてまで私たちを助けるというのか。其処までするナニかがあるとでも言うのか……
「なんで――閑那さんが命をかけるってどういう意味なんですか？？」
「私はこれから禁忌を犯すわ。その代償はわからない――けど、貴女達を助けるためにはこれしか方法がないから……」
苦笑しながら言う閑那に対して、涼は我関せずと言った感じだ。
咲羅は絶句しており、眞葵は事の重大さを未だに飲み込めずにいた。
「私にとって、貴女達は兄弟みたいな存在なの。だから……守らせて?」
閑那の言葉には誰にも揺るがす事の出来ない決意が窺えた。
「わかった……で、私達はどうしたらいいの？」
綾芽が半ば諦めたような様子で閑那に聞いた。もうどうにでもなれとでもいうように……
「そうね……まずはお互いにいつでも連絡が取れるようにしておきなさい。私はもう一人の娘と会わないことには何も出来ないだろうから」
そういうと、閑那は微笑んだ。
どこか寂しそうなその微笑みは、綾芽が今まで見た中で一番優しい表情だった。
閑那に言われた通り、綾芽は涼とアドレスを交換した。涼はかなり嫌がっていたが、閑那には逆らえなかった。
そして、綾芽達は閑那の元を後にし、自分の家へひとまず帰ることにした。そして次の日――
凛香はとある占いの館に来ていた。ここにあの閑那という占い師がいる――どこか懐かしい、そんな雰囲気が漂う部屋に通された凛香。
「いい匂い……」
「イランイランよ」
ふと漏らした凛香に、後ろから声がかけられた。
「イランイラン……？」
「そっ、イランイラン」
「なんか――」
「「勧誘を断るどっかの親父みたい」？」
凛香と声の主の言葉が重なる。そして、互いの笑い声も重なった。
「初めまして、凛香ちゃん。そして、ようこそ。私が此処の主であり、貴女の探している閑那よ」
優しく微笑む閑那。一方の凛香は呆気にとられている。
「なんで私が貴女の事を知っているのか…不思議みたいね？」
黙って頷く凛香。心の声が聞こえない。こんなのは始めてだった。
「奥へ行きましょう。貴女にも全てを話さないとね……」
閑那に導かれるように奥の部屋へと進む凛香。
奥の部屋には、小さなアロマランプが置かれたテーブルとそれを挟むようにしてソファがあった。さっきから漂っている匂いはこのアロマランプからのようだった。
「今お茶をいれるから、とりあえず座って？」
凛香はその単語を呟くと、ふ～っと溜め息を吐いた。名前しか手掛りがない。この世にカンナという名前の人物が何人いることか――ベットに横になりながら、物思いに耽っていた凛香は、ふとあることを思い出した。
最近凛香の学校である事が流行っているのだ。占い、それも道具などは何も使わない。占い師と向かい合って座るだけで、こちらの質問には全て的確に答えてくれるらしい。占い師は中性的な容貌で、必要なこと以外は決して話さないらしい。そして、占い師の言うことは決して外れない。必ず中ると評判なのだ。
「どっかに――あの雑誌なかったっけ？」
凛香は起き上がると重い腰を上げ、とある雑誌を探し出した。
しばらく掃除なんて行為をしたことのない凛香は、どこに何があるのかすら忘れかけていた。乱雑に物が置かれ、積み上げた雑誌は何かの拍子で崩れていた。
「――よくよく見ると……汚いなぁ～」
足の踏み場こそあるが、お世辞にも綺麗とは言い難いほどその部屋は散らかっていた。
「しょーがない……片付けながら探すか……」
この状態から探すのは無理だと悟った凛香は、ゴミ袋やらを取りにリビングへ向かった。
どこに掃除用具などがあるのかすらわからない。とりあえず母親に言えば出してくれるだろう。そう思ったのだ。
リビングへ行くと、母の姿はなく、キッチンの方から物音が聞こえた。行ってみると、夕食の準備を忙しなくしている母の姿がそこにあった。
「あら、いたの？」
母の後ろ姿を眺めていたら、突然振り向いた母と目が合った。
「うん……ねぇ、ゴミ袋ってどこにあるの？」
「何に使うの？」
「部屋の掃除したいから。掃除用具も欲しいんだけど？」
「アンタが掃除ねぇ～……今まであんなに言っても掃除なんてしようとしなかったのに、一体どういう風の吹き回し？」
「別に……気が向いたから、掃除しようと思っただけ。アタシが掃除したらイケナイ？」
『まったく……いつになっても口の利き方が直らないんだから……』
「育ちが悪いんだからしょうがないでしょ！？早く教えてよ！」
母の心の声にイライラしながら、凛香は言った。
『なんでこんな娘になっちゃったのよ……私の何がいけなかったの……？』
「もういいっ！自分で探すよ！！」
凛香はそういうと、母の視界からさっさと消えた。とりあえず、コンビニの袋にゴミを入れればいいや。そんなことを考えながら、部屋の掃除を始めた。
ゴミ袋がないからか、あまり綺麗にはできなかったが、探していたモノは見付けることができた。
ベットに横になりながら、雑誌のページをめくっていく。すると、特集記事の中に目当てのモノがあった。“現代のノストラダムス出現か！？占いは百発百中！！”そんな見出しの記事を眺めていたら、ふとある文字に目が留まった。
「占い師・閑那――」
閑那という名の占い師。偶然か……そう思いながら、しばらく記事を眺めていたら、ある考えが頭をよぎった。
「明日、ココに行ってみようかな……」
百発百中というなら、自分が探しているカンナの居場所くらい簡単に中てられるだろうという考えくらいしか思い浮かばなかったから……
「私は命がけで貴女達を導く。だから……死なないで頂戴。そうじゃないと、命をかける意味がないわ」
突然訳のわからないことを言い出す閑那。
何故命をかけてまで私たちを助けるというのか。其処までするナニかがあるとでも言うのか……
「なんで――閑那さんが命をかけるってどういう意味なんですか？？」
「私はこれから禁忌を犯すわ。その代償はわからない――けど、貴女達を助けるためにはこれしか方法がないから……」
苦笑しながら言う閑那に対して、涼は我関せずと言った感じだ。
咲羅は絶句しており、眞葵は事の重大さを未だに飲み込めずにいた。
「私にとって、貴女達は兄弟みたいな存在なの。だから……守らせて?」
閑那の言葉には誰にも揺るがす事の出来ない決意が窺えた。
「わかった……で、私達はどうしたらいいの？」
綾芽が半ば諦めたような様子で閑那に聞いた。もうどうにでもなれとでもいうように……
「そうね……まずはお互いにいつでも連絡が取れるようにしておきなさい。私はもう一人の娘と会わないことには何も出来ないだろうから」
そういうと、閑那は微笑んだ。
どこか寂しそうなその微笑みは、綾芽が今まで見た中で一番優しい表情だった。
閑那に言われた通り、綾芽は涼とアドレスを交換した。涼はかなり嫌がっていたが、閑那には逆らえなかった。
そして、綾芽達は閑那の元を後にし、自分の家へひとまず帰ることにした。そして次の日――
凛香はとある占いの館に来ていた。ここにあの閑那という占い師がいる――どこか懐かしい、そんな雰囲気が漂う部屋に通された凛香。
「いい匂い……」
「イランイランよ」
ふと漏らした凛香に、後ろから声がかけられた。
「イランイラン……？」
「そっ、イランイラン」
「なんか――」
「「勧誘を断るどっかの親父みたい」？」
凛香と声の主の言葉が重なる。そして、互いの笑い声も重なった。
「初めまして、凛香ちゃん。そして、ようこそ。私が此処の主であり、貴女の探している閑那よ」
優しく微笑む閑那。一方の凛香は呆気にとられている。
「なんで私が貴女の事を知っているのか…不思議みたいね？」
黙って頷く凛香。心の声が聞こえない。こんなのは始めてだった。
「奥へ行きましょう。貴女にも全てを話さないとね……」
閑那に導かれるように奥の部屋へと進む凛香。
奥の部屋には、小さなアロマランプが置かれたテーブルとそれを挟むようにしてソファがあった。さっきから漂っている匂いはこのアロマランプからのようだった。
「今お茶をいれるから、とりあえず座って？」
