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第一章 出逢いの刻

「さて、1人足りないけど……始めましょうか」
閑那は何故4人を此処に集めたのかを語り始めた。
「貴方達には、ある“共通点”があるの。だから、今日はその事でココに来て貰ったのよ」
閑那の言葉に4人が反応した。
「“共通点”って……何ですか?」
綾芽が閑那に訊いた。涼には見覚えがないし、明らかに自分と似た点はないと思っている。他の3人も同様だ。
今日初めて会った上、似ているようなところはないハズだった。
「今回の事件の被害者、みんな知ってるわね?」
多分朝水の事だろうと4人は思った。
「で、朝水と俺らに何の関係があるんだよ?」
涼がイライラしながら言った。
「朝水さん、それが貴方達の“共通点”の一つね」
「まだあるんですか?閑那さん……」
咲羅の問掛けに閑那はえぇ、と答え続けた。
「正確には、これは涼と綾芽ちゃん、そしてココにはいないもう一人の娘の“共通点”なのよ」
「どういう意味っスか?」
「貴方と咲羅ちゃんは巻き込まれちゃったのよ――他にも巻き込まれた人はいるけど、貴方達みたいに戦う術を持たない人じゃない」
「どういう……意味?」
「彼等は、裏の世界じゃ名の知れた人達なの。だけど、今はまだ貴方達に力を貸す余裕がない。だから、私が助け舟を出すことになったのよ」
「アンタが言ってるのは――冬夜と柚琉の事だな?」
涼が閑那に確認した。
柚琉という名前に一番に反応したのは、他でもない眞葵だった。
「アンタ、兄貴のこと知ってるのか?!」
「あァ?!テメェ、口のきき方には気をつけろよな……?」
眞葵の問掛けを涼は無視した。
「涼、眞葵君は柚琉の弟よ?貴方こそ、もうちょっと優しくできないのかしら?」
閑那にたしなめられた涼だが、そんなことを気にするハズもなく――
「俺がコイツの兄貴とどういう関係であろうと、関係ねぇじゃねぇか?」
やれやれという閑那の素振りに、綾芽が話を進めようとした。
「それで、話を元に戻すと――私と涼さんでしたっけ?の“共通点”って他には何があるんですか?」
「そうね……朝水さんの事件が起こる前に、変なメールこなかった?」
「変なメール、ねぇ……」
「「アレか」……」
 綾芽と涼の声が重なった。そう、変なメールとはあの悪戯かと思っていたメールの事である。
「お前、なんでその事を――」
涼は閑那にはもちろんメールの事は話していない。綾芽もそうだ。だとしたら、考えられるのは――綾芽は咲羅を見た。咲羅があの後、バイト中に閑那に話したのではないかと思ったからだ。
しかし、綾芽が言葉を発する前に咲羅が口を開いた。
「私はあの事に関しては、閑那さんには何も言ってないわ」
綾芽がそうだよね……と思った時、閑那は話を進め始めた。
「もちろん、メールの事は誰からも“聞いてない”し、私は送ってないわよ?」
閑那の“聞いてない”という言葉に涼はハッとした。
「まさか……アンタ俺らの記憶を?」
「えぇ、悪いけど貴方と咲羅ちゃんの記憶を視せて貰ったわ」
「まったく……」
涼は完全に厭きれていた。咲羅は慣れているのか、無反応だった。だが、閑那について名前と性別、職業くらいしか知らない眞葵は、目を輝かせていた。
「マジ!?なんか、ファンダジーの世界みたいだなっ!」
「私には目がないから、色々と面白いチカラがあるのよ」
「でも、今回の事とは関係ないだろ?アンタのチカラはよ……」
「そんなことないわよ?的確な助言はしてあげられるし――それに、身を守る術くらいなら授けられるわよ?」
「助言?」
綾芽が不安そうに聞くと、閑那はフッと笑った。
「えぇ。貴女達が道を誤らない様に――最悪の方向に進まないように、食い止めることは可能よ?」
「食い……止める?」
「そうよ。食い止めるの」
「だったら……なんで朝水を助けてくれなかったんですか??」
咲羅が悲痛な叫び声をあげた。
「私にも出来ないことがあるのよ……貴女達のお友達を救うことは不可能だったの。ごめんなさい……私には他人の運命を変えるだけのチカラはないのよ……」
閑那は俯いて、消え入りそうな声で詫びた。
閑那の特殊なチカラ、人の記憶を読みその人にとって最適な選択へと導く。
しかし、決して必要以上にその人に干渉してはいけない。チカラのセイヤクによって、干渉したくても出来ないのだ。禁忌を犯したら――それなりの代償を支払わなければいけない。そう、閑那は今回その禁忌を犯し始めている……自分の大切な人達を守るために。
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