ラクダ
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「いいか!?ラクダは楽だなんて思ってるなら、今すぐそんな考えは捨てろ!!それは神への冒涜だ!!」
岩城の胸元を掴みながら、陵刀は意味不明な事を言っている。
「い……いや別にそんな事は思ってねェけどよ……」
「ならばよし!とにかく――……困難に打ち勝ってこそ真の獣医師だ!頑張ってくれたまえ!」
「はあ……」
岩城達を見送ったあと、名前は診察室の一室で陵刀を問いただした。
「どういうつもりなのかな?」
「何がだい?」
「あの3人に仕事押し付けたでしょ?!」
「あぁ――……その事か。僕にだって苦手なモノがあるんだよ」
「嫌いなモノ、無いんじゃなかったの?」
「嫌いなモノは無いよ。苦手なだけさ」
悪気もなく言いながら、陵刀は漫画雑誌に視線を戻した。
やる気のない陵刀に呆れ、名前は自分の仕事に戻ろうとした。
「あっはっはっ♡何このパン漫画、バカじゃないの~」
ケラケラと笑う陵刀の声に振り向くと、愉しそうに笑っている姿が目に入った。
「先生、コーヒーを……」
「ああ、ありがと。そこ置いといて」
コーヒーを持ってきた看護師にニコリと笑ってみせる陵刀を見て、名前は人知れず溜息を零していた。
「……人気あるんだから、ウチなんかに構わなきゃいいのに」
「それは無理だよ」
ボソッと呟きながら退室しようとしていた名前の声を聞き逃さず、陵刀は漫画雑誌を机の上に置くと名前に近づいた。
「僕は君以外を女性として見ていないんだから」
「根っからのタラシってワケね」
「人聞きが悪いなぁ……人に優しくしたら、自分に返ってくるんだよ?」
「ウチはそうは思わない」
「“思わない”じゃなく、“思えない”でしょ?」
「……どっちでも同じだよ」
「違うよ。君の場合は、人を信じたくても信じられないでいる。それで人に優しくしきれていないだけだよ」
「随分と――……解った様な口を利くんだね」
「名前ちゃん?」
手を伸ばしてくる陵刀に、名前は全身で拒絶を現した。
「触んなっ!!」
「名前ちゃん?!」
「……ごめん…………ちょっと頭冷やしてくる」
苦しげにそう言うと、名前は診察室を出て行った。
診察室を出た名前は、当ても無く院内を彷徨った。
いくら広いR.E.D.とはいえ、直ぐに行き場を失ってしまう。
裏庭に行こうにも、今日は生憎の雨。行くに行けない状況だった。
「どこ行こう……」
フラフラと歩いていると、気付いたら院長室の前まで来ていた。
「ははっ……こんな時に高宮さんを頼ろうとするなんてね……」
院長室のドアを眺めながら、名前は自嘲気味に笑った。
今日は高宮は出張中だと、今朝オーナーが言っていたのを思い出した名前は、そのまま院長室のドアに手を掛けた。
カギが閉まっているかと思ったそのドアは、何の抵抗もなくあっさりと開いてしまう。
不思議に思いながらも、名前はそのまま院長室へと身を滑り込ませた。
室内には高宮の趣味なのか、変わったモノが多く置かれている。
そんな室内を見回し、名前は何の躊躇いもなく高宮が使っている椅子へと腰を下ろした。
「こんな時に限っていないんだから……どうすりゃいいんだよ…………」
窓の外を眺めながらボソリと呟いた名前の瞳からは、いつの間にか一筋の涙が流れていた。
「ここにいたのか……もっと僕を頼ってよ、名前ちゃん」
突然聞こえた声に、名前は慌ててその涙を拭った。
「院長じゃなく、僕を頼ってよ」
窓に映る陵刀に視線を移しながら、名前は返答に困っていた。
「期限付きとはいえ、僕の事を“理解者”として迎えてくれたんなら――……僕の事を頼ってくれ」
言いながらこちらに近づいて来る陵刀に、名前は身動きが取れずにいた。
岩城の胸元を掴みながら、陵刀は意味不明な事を言っている。
「い……いや別にそんな事は思ってねェけどよ……」
「ならばよし!とにかく――……困難に打ち勝ってこそ真の獣医師だ!頑張ってくれたまえ!」
「はあ……」
岩城達を見送ったあと、名前は診察室の一室で陵刀を問いただした。
「どういうつもりなのかな?」
「何がだい?」
「あの3人に仕事押し付けたでしょ?!」
「あぁ――……その事か。僕にだって苦手なモノがあるんだよ」
「嫌いなモノ、無いんじゃなかったの?」
「嫌いなモノは無いよ。苦手なだけさ」
悪気もなく言いながら、陵刀は漫画雑誌に視線を戻した。
やる気のない陵刀に呆れ、名前は自分の仕事に戻ろうとした。
「あっはっはっ♡何このパン漫画、バカじゃないの~」
ケラケラと笑う陵刀の声に振り向くと、愉しそうに笑っている姿が目に入った。
「先生、コーヒーを……」
「ああ、ありがと。そこ置いといて」
コーヒーを持ってきた看護師にニコリと笑ってみせる陵刀を見て、名前は人知れず溜息を零していた。
「……人気あるんだから、ウチなんかに構わなきゃいいのに」
「それは無理だよ」
ボソッと呟きながら退室しようとしていた名前の声を聞き逃さず、陵刀は漫画雑誌を机の上に置くと名前に近づいた。
「僕は君以外を女性として見ていないんだから」
「根っからのタラシってワケね」
「人聞きが悪いなぁ……人に優しくしたら、自分に返ってくるんだよ?」
「ウチはそうは思わない」
「“思わない”じゃなく、“思えない”でしょ?」
「……どっちでも同じだよ」
「違うよ。君の場合は、人を信じたくても信じられないでいる。それで人に優しくしきれていないだけだよ」
「随分と――……解った様な口を利くんだね」
「名前ちゃん?」
手を伸ばしてくる陵刀に、名前は全身で拒絶を現した。
「触んなっ!!」
「名前ちゃん?!」
「……ごめん…………ちょっと頭冷やしてくる」
苦しげにそう言うと、名前は診察室を出て行った。
診察室を出た名前は、当ても無く院内を彷徨った。
いくら広いR.E.D.とはいえ、直ぐに行き場を失ってしまう。
裏庭に行こうにも、今日は生憎の雨。行くに行けない状況だった。
「どこ行こう……」
フラフラと歩いていると、気付いたら院長室の前まで来ていた。
「ははっ……こんな時に高宮さんを頼ろうとするなんてね……」
院長室のドアを眺めながら、名前は自嘲気味に笑った。
今日は高宮は出張中だと、今朝オーナーが言っていたのを思い出した名前は、そのまま院長室のドアに手を掛けた。
カギが閉まっているかと思ったそのドアは、何の抵抗もなくあっさりと開いてしまう。
不思議に思いながらも、名前はそのまま院長室へと身を滑り込ませた。
室内には高宮の趣味なのか、変わったモノが多く置かれている。
そんな室内を見回し、名前は何の躊躇いもなく高宮が使っている椅子へと腰を下ろした。
「こんな時に限っていないんだから……どうすりゃいいんだよ…………」
窓の外を眺めながらボソリと呟いた名前の瞳からは、いつの間にか一筋の涙が流れていた。
「ここにいたのか……もっと僕を頼ってよ、名前ちゃん」
突然聞こえた声に、名前は慌ててその涙を拭った。
「院長じゃなく、僕を頼ってよ」
窓に映る陵刀に視線を移しながら、名前は返答に困っていた。
「期限付きとはいえ、僕の事を“理解者”として迎えてくれたんなら――……僕の事を頼ってくれ」
言いながらこちらに近づいて来る陵刀に、名前は身動きが取れずにいた。