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担当医と合わないと感じたら、直ぐに転院する名前を、高宮は何も言わずに支えた。その事で、名前は高宮に頭が上がらなくなっていた。やりたい様にさせてくれる高宮に、親に似た感情を持ち始めていた。
転院を繰り返す度に病名も変わり、双極性障害と診断され症状が落ち着き始めたのが、通院をし始めて実に10年の年月が経ってからだった。
症状が落ち着くまでは、名前はあらゆる手段で自身を傷付けていた。あまりの名前の自暴自棄ぶりに、最初は高宮も手を焼いていた。それでも、高宮は決して名前を見捨てる事はなかった。
そうして名前は、高宮の支援で“学園”へと入る事になった。
“学園”に入って最初に思い知ったのは、辛いのは自分だけじゃないという現実だった。
“学園”には実に様々な問題を抱えた、色んな年代の男女がいた。名前がナルや朔耶達と出会ったのも、この“学園”だった。
最初は何かと衝突し合っていたのだが、お互いを知る度にその衝突はなくなり、今の関係が築かれた。
名前達は、自分達の存在を認めさせたくて“INDIVIDUAL”を創った。最初は誰にも知られていない様な小さな活動だった。それが今ではネット上とはいえ、知名度のあるグループへと成長している。
今では“学園”出身者だけではなく、一般の人でも活動内容に賛同しているのであれば参加する事が出来る様な体制になった。少し前までの名前には考えられない様な事だ。
今の自分があるのは、すべて高宮のおかげである。だからこそ、名前は高宮を尊敬しているし、頭が上がらない存在でもある。
「そういう事で、ウチと院長は父娘みたいなモンなの」
「そういう事か……でも、自分を攻撃していたのはどうしてなの?」
「……他人を傷付ける勇気がなかったから、かな」
「それでか……君が他人との間に壁を作っているのは」
「他人を傷付ける位なら、最初から近付かない方が得策でしょ?」
自嘲気味に笑う名前を、陵刀はただ見つめた。
「傷付けるのが解っていて壁を無くせる程、ウチは強くないんだよ」
「僕は傷付くのが怖いと思わない。逆に名前ちゃんが苦しんでいるなら、その苦しみを分かち合いたいと思う」
「陵刀先生って馬鹿なの?自分から進んで傷付くのは、頭の良い人のする事じゃないよ」
「何と言われても構わない。だけど、今言った事は僕の本心だよ」
陵刀の眼差しに迷いは見られなかった。
名前は暫し考えて、一つの結論を出した。
「陵刀先生の意向は解った。だけど、今すぐ貴方を受け入れる事は出来ない。ウチにも信念ってモノがあるからね」
それまで背けていた視線を陵刀に合わせ、名前は言い切った。
そんな名前の言葉を聞いて、陵刀はニッコリと微笑んだ。
「大丈夫。僕もそう簡単に受け入れて貰えると思ってないから。だけど、覚悟しといて。僕、諦め悪いから♡」
名前の頭を撫でると、陵刀はどこか嬉しそうに続けた。
「今みたいに、君が思ってる事や考えてる事を僕にぶつけてくれないかな?」
「……なら、一度ウチ等の活動を実際に見てみる?多分、それが今のウチの考えを理解するには手っ取り早いと思うし」
「いいの?」
「駄目なら言わないよ。まぁ、一応ナルちゃん達の許可を取らなきゃならんと思うけど――……」
「是非お願いするよ」
名前の提案に笑顔で応じる陵刀。
そんな彼を見て、名前は上着のポケットから携帯を取り出し電話を掛け始めた。
「もしもし?名前だけど……うん、今度の集まりなんだけどさ……そう。その日、陵刀先生も連れて行くから……いや、そういうのじゃない。ちょっと事情があってね……とりあえず、何かあったワケじゃない。うん……大丈夫。そういうのでも無いから。ただ、ウチ等の事を理解させたいだけ――……分かった。有難う。皆にも伝えといて。じゃ、また連絡するよ」
転院を繰り返す度に病名も変わり、双極性障害と診断され症状が落ち着き始めたのが、通院をし始めて実に10年の年月が経ってからだった。
症状が落ち着くまでは、名前はあらゆる手段で自身を傷付けていた。あまりの名前の自暴自棄ぶりに、最初は高宮も手を焼いていた。それでも、高宮は決して名前を見捨てる事はなかった。
そうして名前は、高宮の支援で“学園”へと入る事になった。
“学園”に入って最初に思い知ったのは、辛いのは自分だけじゃないという現実だった。
“学園”には実に様々な問題を抱えた、色んな年代の男女がいた。名前がナルや朔耶達と出会ったのも、この“学園”だった。
最初は何かと衝突し合っていたのだが、お互いを知る度にその衝突はなくなり、今の関係が築かれた。
名前達は、自分達の存在を認めさせたくて“INDIVIDUAL”を創った。最初は誰にも知られていない様な小さな活動だった。それが今ではネット上とはいえ、知名度のあるグループへと成長している。
今では“学園”出身者だけではなく、一般の人でも活動内容に賛同しているのであれば参加する事が出来る様な体制になった。少し前までの名前には考えられない様な事だ。
今の自分があるのは、すべて高宮のおかげである。だからこそ、名前は高宮を尊敬しているし、頭が上がらない存在でもある。
「そういう事で、ウチと院長は父娘みたいなモンなの」
「そういう事か……でも、自分を攻撃していたのはどうしてなの?」
「……他人を傷付ける勇気がなかったから、かな」
「それでか……君が他人との間に壁を作っているのは」
「他人を傷付ける位なら、最初から近付かない方が得策でしょ?」
自嘲気味に笑う名前を、陵刀はただ見つめた。
「傷付けるのが解っていて壁を無くせる程、ウチは強くないんだよ」
「僕は傷付くのが怖いと思わない。逆に名前ちゃんが苦しんでいるなら、その苦しみを分かち合いたいと思う」
「陵刀先生って馬鹿なの?自分から進んで傷付くのは、頭の良い人のする事じゃないよ」
「何と言われても構わない。だけど、今言った事は僕の本心だよ」
陵刀の眼差しに迷いは見られなかった。
名前は暫し考えて、一つの結論を出した。
「陵刀先生の意向は解った。だけど、今すぐ貴方を受け入れる事は出来ない。ウチにも信念ってモノがあるからね」
それまで背けていた視線を陵刀に合わせ、名前は言い切った。
そんな名前の言葉を聞いて、陵刀はニッコリと微笑んだ。
「大丈夫。僕もそう簡単に受け入れて貰えると思ってないから。だけど、覚悟しといて。僕、諦め悪いから♡」
名前の頭を撫でると、陵刀はどこか嬉しそうに続けた。
「今みたいに、君が思ってる事や考えてる事を僕にぶつけてくれないかな?」
「……なら、一度ウチ等の活動を実際に見てみる?多分、それが今のウチの考えを理解するには手っ取り早いと思うし」
「いいの?」
「駄目なら言わないよ。まぁ、一応ナルちゃん達の許可を取らなきゃならんと思うけど――……」
「是非お願いするよ」
名前の提案に笑顔で応じる陵刀。
そんな彼を見て、名前は上着のポケットから携帯を取り出し電話を掛け始めた。
「もしもし?名前だけど……うん、今度の集まりなんだけどさ……そう。その日、陵刀先生も連れて行くから……いや、そういうのじゃない。ちょっと事情があってね……とりあえず、何かあったワケじゃない。うん……大丈夫。そういうのでも無いから。ただ、ウチ等の事を理解させたいだけ――……分かった。有難う。皆にも伝えといて。じゃ、また連絡するよ」