PTSD
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「で……でもこっちだって慈善事業でやってるワケじゃないんですよ!そんなサギはないにしても、往診するならある程度見合う額を貰う必要が……」
陵刀になおも食って掛かる鞍智は、やはり岩城のやり方に納得出来ていない事が明白だった。
「そーだねェ……どうせカレはそんなの請求しないんだろうし、ワイルドライフ主任の僕としては頭の痛い限りだよ」
「やはり僕は間違ってない!僕の考え方のが正しいんだ!あんないい加減な姿勢の奴では満足に仕事も――……」
「いい加減なのはどっちだよ、鞍智センセ」
「なっ!?君は関係者ではないだろ?!口を挟むな!!」
いつの間にかソファーに座り話を黙って聞いていた名前が、鞍智を睨みながら言った。
「鉄生先生はあぁ見えて、誰よりも患畜と飼い主を思って仕事をしてる。アンタみたいにただ“治せばいい”なんて思ってない」
「――……少し昔話をしようか、鞍智くん」
「え……!?」
名前の隣に腰を掛けながら、陵刀は話し始めた。
「まあ聞きなよ……今から20年以上昔の話かな……インターネットがあるわけでもなく、ペットを飼う側の知識が今より更に薄かった時代……飼い主の知識不足をいい事に、治療に法外な金額を請求する悪質な獣医が蔓延っていた。だが、そんな時代にも正義の男はいた。彼は無意味な検査や投薬で多額の治療費を支払わされる飼い主や患畜を救うべく……“新しい病院を作る!”そう決心したのだ。彼が数人の仲間と作ったその病院は……小さいながらも24時間診療、診療費の軽減、インフォームドコンセントの徹底等を実行し……たちまち獣病院界に革命を起こした。そして大量の患畜達がその病院を訪れるようになったある日の事……一人の資産家が現れ……患畜の為に、寝る間も惜しんで働く彼等に援助をしたいと申し出た。それが今の高宮院長であり、永田オーナー。二人の信念を守り貫いて、今存在(ある)のがR.E.D.なんだ」
「やっぱR.E.D.は凄いわ……あの院長がそんな人だったとはねぇ」
「ねェ鞍智君――」
陵刀は立ち上がりながら、呆然としている鞍智に話し掛けた。
「あの子は、今度あの猫が病気になったら絶対にウチに来ると思うよ。友人や知り合いにも勧めてくれるだろう。そうやって色んな人にR.E.D.を広めて貰えれば、一件一件は薄利でも充分病院は回っていけるんじゃないかと僕は思うんだ……確かに君の考えも間違ってはいない……でも獣医はね――患畜の体だけ治すんじゃダメなんだ。飼い主――そして動物……この二つの心を救って、初めて一人前なんだよ」
「心を……救って……」
「そういう事。今のアンタには“思いやりの心”がない。だから鉄生先生には敵うはずもない」
陵刀と名前に言われた一言で、鞍智は駆け出した。
「名前ちゃんも優しいね」
「優しい?どこが??」
「わざわざ鞍智君に答えを示してあげたじゃないか」
「……鉄生先生を悪く言われて気分が悪かっただけだよ」
「ふーん……君、鉄生君が好きなの?」
「?好きだよ。“人間”として尊敬してる。ウチには眩しすぎる人だけどね」
「へぇ。なら、僕は?」
「は?」
「僕の事は――好きかな?」
「……陵刀先生は“意味不明”ってトコかな」
「……ま、“嫌い”じゃないだけいいか」
「何か言った?」
「んー、何でもないよ」
そう言いながら、陵刀は窓の外を眺めた。
外では鞍智が岩城から患畜の猫を奪い取り、軽く言い争っている声が聞こえていた。
陵刀になおも食って掛かる鞍智は、やはり岩城のやり方に納得出来ていない事が明白だった。
「そーだねェ……どうせカレはそんなの請求しないんだろうし、ワイルドライフ主任の僕としては頭の痛い限りだよ」
「やはり僕は間違ってない!僕の考え方のが正しいんだ!あんないい加減な姿勢の奴では満足に仕事も――……」
「いい加減なのはどっちだよ、鞍智センセ」
「なっ!?君は関係者ではないだろ?!口を挟むな!!」
いつの間にかソファーに座り話を黙って聞いていた名前が、鞍智を睨みながら言った。
「鉄生先生はあぁ見えて、誰よりも患畜と飼い主を思って仕事をしてる。アンタみたいにただ“治せばいい”なんて思ってない」
「――……少し昔話をしようか、鞍智くん」
「え……!?」
名前の隣に腰を掛けながら、陵刀は話し始めた。
「まあ聞きなよ……今から20年以上昔の話かな……インターネットがあるわけでもなく、ペットを飼う側の知識が今より更に薄かった時代……飼い主の知識不足をいい事に、治療に法外な金額を請求する悪質な獣医が蔓延っていた。だが、そんな時代にも正義の男はいた。彼は無意味な検査や投薬で多額の治療費を支払わされる飼い主や患畜を救うべく……“新しい病院を作る!”そう決心したのだ。彼が数人の仲間と作ったその病院は……小さいながらも24時間診療、診療費の軽減、インフォームドコンセントの徹底等を実行し……たちまち獣病院界に革命を起こした。そして大量の患畜達がその病院を訪れるようになったある日の事……一人の資産家が現れ……患畜の為に、寝る間も惜しんで働く彼等に援助をしたいと申し出た。それが今の高宮院長であり、永田オーナー。二人の信念を守り貫いて、今存在(ある)のがR.E.D.なんだ」
「やっぱR.E.D.は凄いわ……あの院長がそんな人だったとはねぇ」
「ねェ鞍智君――」
陵刀は立ち上がりながら、呆然としている鞍智に話し掛けた。
「あの子は、今度あの猫が病気になったら絶対にウチに来ると思うよ。友人や知り合いにも勧めてくれるだろう。そうやって色んな人にR.E.D.を広めて貰えれば、一件一件は薄利でも充分病院は回っていけるんじゃないかと僕は思うんだ……確かに君の考えも間違ってはいない……でも獣医はね――患畜の体だけ治すんじゃダメなんだ。飼い主――そして動物……この二つの心を救って、初めて一人前なんだよ」
「心を……救って……」
「そういう事。今のアンタには“思いやりの心”がない。だから鉄生先生には敵うはずもない」
陵刀と名前に言われた一言で、鞍智は駆け出した。
「名前ちゃんも優しいね」
「優しい?どこが??」
「わざわざ鞍智君に答えを示してあげたじゃないか」
「……鉄生先生を悪く言われて気分が悪かっただけだよ」
「ふーん……君、鉄生君が好きなの?」
「?好きだよ。“人間”として尊敬してる。ウチには眩しすぎる人だけどね」
「へぇ。なら、僕は?」
「は?」
「僕の事は――好きかな?」
「……陵刀先生は“意味不明”ってトコかな」
「……ま、“嫌い”じゃないだけいいか」
「何か言った?」
「んー、何でもないよ」
そう言いながら、陵刀は窓の外を眺めた。
外では鞍智が岩城から患畜の猫を奪い取り、軽く言い争っている声が聞こえていた。