仮宿に着いたのは、天空闘技場を出て4日目の深夜だった。しかし、深夜にも関わらず集まっていた団員はナマエの姿を確認した途端に駆け寄ってきた。
「おっ？！やっと帰ってきたか！！」
「お帰りなさい、ナマエ」
「ただいま、ウボォーギン、パクノダ」
「遅かたね。まさか、負けたか？」
「勝ったよ、200階で1勝！」
「マジかよ？！」
「フィンクス、何その言い方……」
「悪ぃ！100階クラスで負け続けてると思――って危ねェ！！」
フィンクスが言葉を続ける前に、クロロのベンズナイフが飛んだ。
「悪いな、手が滑った」
「団長、目が笑ってないわね」
「ああ、ありゃー怒ってるな」
にこやかに言い放つクロロの目は、団長のソレだった。
「疲れたから寝たいー。部屋どこ？」
「ナマエの部屋は無いよ」
「は？！」
「急だったから、用意出来てないのよ」
『ごめんなさいね』と謝るパクノダに、ナマエは肩を落とした。
「じゃあ、用意出来るまでパクノダの――」
「オレの部屋を使えばいい」
「うん……って、何で！？」
「今、了承の返事をしたね？」
「今のはノーカン！！」
「皆、聞いたよな？」
クロロの無言の圧力に、団員は何も言えなかった。
「諦めなさい、ナマエ」
「諦めが肝心ね」
「さっさとくっついちまえば良いのによォ……」
「フィンクス、何か言った？」
ナマエがフィンクスを睨みつける。フィンクスはその視線に耐えられなくなったのか、そそくさとその場を後にした。
「ナマエに――」
「拒否権は無いんでしょ？」
「そうだ」
クロロは柔らかな笑みを湛えながら、ナマエの頭を撫でた。
「ったく……こんなんで好意を持てってのが無理な話だっての…………」
「何か言った？」
「いーえ、何も！」
「それよか、久々にナマエの作ったツマミが食いたいぜ！」
「お前、見事に餌付けされてるね」
「美味いんだからしょうがないだろ！？」
「確かに、ナマエの料理は美味しいものね」
「……食材は？」
「あ？」
「ツマミ作る食材はあるの？」
「！」
「あるなら適当に作るよ」
「あるぜ！！」
「そ。調理場何処？」
「こちね」
フェイタンに連れられ、ナマエはツマミを作る為にその場を去った。
「団長」
「何だ？パクノダ」
「ナマエの事、本気なんですか？」
「だとしたら、何だ？」
「大事にしてあげて下さいよ？あの子、もう家族みたいなモノですから」
「くくくっ。言われなくても分かってるさ」

「フェイタンってさー」
「何ね？」
「ちゃんと食べてる？」
調理場にある食材を確認しながら、ナマエはフェイタンに話しかけていた。
「……食べてるよ」
「嘘は良くないね」
「嘘じゃないね」
「なら、何でそんなに細っこいの？」
「お前と運動量が違うね」
「えー……天空闘技場でかなり動いたけど、私そんなに体重変わってないのにー」
「運動不足ね」
「酷いなぁ……フェイタンだけ高カロリーにするか？いや……ウボォーギンに取られかねないな……どうしよっかなぁ」
「何ぶつくさ言てる」
ナマエは1人、ブツブツ言いながら料理を作り始めていた。フェイタンは監視するかの如く、近くに腰を下ろしその様子を見ていた。
「見ててもつまらないでしょ？皆の所に行ってていいよ？」
「ワタシ、お前監視してる」
「監視？」
「お前、まだ信用出来ない」
「そっか。ま、それが普通だよねー」
「？」
「気が済むまで監視してくれていいよ」
「お前、変わてる……」
「うん。よく言われてた」
料理の手を休めること無くフェイタンと会話を続けていると、そこにクロロが現れた。
「何だ……随分仲が良さそうだね」
「コイツと仲良くなた覚えないね」
「何？嫉妬した？」