「そ。なら、私はもうアンタに用はない。煮るなり焼くなり、好きにしていいよ」
シャルナーク達旅団メンバーにそう言うと、ナマエはクラピカが乗っている車が去っていった方に走りだそうとした。
「ちょっと待てよ！」
ノブナガに呼び止められ、踏み出したその足を止める。訝しげにノブナガを見やると、ノブナガは面白そうに笑っていた。
「お前、団長が言ってた様に蜘蛛に入れ」
「嫌だね。誰が好き好んで蜘蛛に入るかよ！」
吐き捨てる様に言い捨てると、ナマエは走りだした。
あてもなく走り続けるナマエは、ふと思いついたように携帯電話を取り出してとある人物に電話をかけ始めた。

「そう、ありがとう。これで借りが一つ出来ちゃったね」
嫌そうに顔を歪めながら、ナマエは電話口に呟いた。
『そう嫌そうに言うなよ♦傷付くなァ♠』
クツクツと笑いながら、電話口の相手：ヒソカは続けた。
『お礼はキミからのキスでいいよ♥』
「それは御免被りたいね」
『酷いなァ♣』
「仮にも【恋人】がいるんでね……代わりに団長とのデート、間に合うように尽力してあげるよ」
そう言うないなや、ナマエは電話を切ってヒソカに言われた場所を目指して走りだした。

強大な2つのオーラを感じ取り、その場所目指して疾走するナマエ。
「間に合え……！！」
ナマエが呟いた直後、爆音と粉塵が辺りを包み始めた。
「彼処か！？」
目標を見つけ、更に加速する。

ナマエがソコに着いた頃には、ウボォーギンが【束縛する中指の鎖（チェーンジェイル）】に拘束されている状態だった。
「ギリギリセーフ……！」
肩で息をしながら、ナマエは2人を見つめた。
「…………実に不快だ。手に残る感触。耳障りな音。血の臭い。全てが神経に障る」
緋の眼になったクラピカが、不愉快そうに語った。
「なぜ貴様は何も考えず！！何も感じずにこんなマネが出来るんだ！！答えろ！！」
「殺せ」
ウボォーギンが呟いたと同時に、クラピカが動いた。
「そこまで！！」
突然の叫び声にクラピカの動きが止まる。
声の方向にクラピカだけではなく、ウヴォーギンも目をやった。
「ナマエ……何をしに来たんだ！？」
「あの時の女？！お前もコイツの仲間か！？」
「さっきぶり、クラピカ」
息を整えながら、ナマエは2人のいる場所へと岩の上から駆け下りた。
「それと、久しぶり。ウボォーギンさん」
「コイツの知り合いなのか？ナマエ！？」
「う～ん……知り合いってか、ヤり合った仲――かな？」
「ヤり合っただと？」
「うん。ちょっと前に依頼で蜘蛛とヤり合ったんだ」
平然と言ってのけるナマエに、クラピカは目を瞠った。
「それとウボォーギンさん。クラピカは大切な【友達】なの。これ以上危害を加えるようなら、容赦しないよ？」
綺麗に微笑みながら、ナマエはウボォーギンの目を見つめた。
「殺せよ！オレを！！」
「殺さないよ。つか、殺させもしないけどね？」
今度はクラピカを見つめながら、ナマエは微笑んだ。
「クラピカ、悪いけどそういう事だからウボォーギンさんは殺させる訳にはいかないんだ」
ナマエの言葉に、クラピカの緋の眼が更に色を濃くした。
「何故だ！？何故コイツを庇う！！」
「庇ってる訳じゃない。クラピカに無駄な殺しをして欲しくないだけ」
「無駄だと？ナマエに何が解かると言うんだ！？」
「何も解かんないね。復讐したがる気持ちを理解する気は更々無いし？つか、そんな事したって無意味だよ？？」
「黙れ！！」
クラピカはナマエに向かって唸るように叫ぶと、ウボォーギンに【律する小指の鎖（ジャッジメントチェーン）】を発動しようと狙いを定めた。