【円】で周囲を伺うと、自分のいる場所の遥か後方にクラピカの気配を感じ取った。
（う～ん……【陰獣】の警護までは頼まれてないし、とりあえずは様子見するかなぁ）
面倒臭そうに頭を掻きながら、ナマエは前方を見遣った。
【陰獣】が4人がかりでウボォーギンへと攻撃しようとしたまさにその時、ウボォーギンが【超破壊拳（ビックバンインパクト）】を地中の蚯蚓に向かって放った。その事で、ウボォーギンが蜘蛛の一人だと【陰獣】に知られてしまう。
【陰獣】の様子を遠くから見ていたクラピカだが、ウボォーギンの腰にある蜘蛛の刺青を見てオーラ量が増していた。
（あちゃ～……クラピカが怒ってるよ……やっぱ止めに入るべきだったかな）
ナマエが後悔していると、ウボォーギンが【陰獣】4人を始末し終え、他の旅団メンバーが岩壁の上から降りてきていた。
遠くからは、微かにフルートの音色が聞こえてくる。センリツがクラピカを宥めているのだろう。
「さて――と。どうしようかなぁ」
一人ゴチているナマエの横を、物凄い勢いで鎖が通り過ぎていった。
（クラピカ！？）
『ヤられた』と思った。思考に耽り過ぎて、ウボォーギンが攫われるのを見過ごしてしまった。
急いで後を追いかけるナマエ。クラピカ達は鎖で拘束したウボォーギンを車に乗せて逃走している。
「また車相手に走るのかよ！」
叫びながら、ナマエは足を止めずに走り続けた。

暫く走り続けていると、後ろから1台の車が猛スピードで走り抜けていった。チラリと車内に目を移すと、見知った顔の旅団員と目が合った。
（アレは――ノブナガとシャルナークにマチ……って事は、もうちょいで残りの【陰獣】と鉢合わせるのか）
溜息を吐きながらも、ナマエは走る事を止めなかった。
そのまま走ること約20分。【陰獣】の死体が転がる中で、ナマエは漸く足を止めた。
「やっぱりナマエだ」
「シャルも知り合いかい？」
「オレってよりも、団長の知り合いだよ。ね？ナマエ」
「そんな爽やかに言わないでくれる？それに、知り合いってよりも犬猿の仲だから！」
「団長の？どういう意味ね？」
「団長がスカウト中なんだよ」
「そういや、ヒソカとも知り合いだったね」
「お前も幻影旅団の一員か？」
【陰獣】の一人：梟に声をかけられ、ナマエは視線を梟へと向けた。
「んな訳あるか！こっちは【十老頭】からの【依頼】で動いているんだ。こいつらの【仲間】になった覚えはない！！」
シャルナーク達を指さしながら、全力で否定するナマエ。
「【十老頭】が？」
「アンタ等だけだと心許無いって所じゃないの？現に、アンタを残して【陰獣】は死んじゃってるし」
冷めた目で梟を見やりながら、ナマエは溜息を吐いた。
「何が言いたいんだ！？」
「雑魚は退いてろ」
「なっ……！？お前、【十老頭】が派遣したハンターだろ？？」
梟は目を見開いてナマエを見つめた。
「そうだけど……こいつ等は【陰獣】が敵う相手じゃないって、もう解ってるでしょ？マフィアの飼い犬が勝てる相手じゃないんだよ」
吐き捨てる様に言い捨てるナマエに、梟は項垂れるしか出来なかった。
「仲間割れ？」
シズクが不思議そうに2人を見ている。
「【仲間】？ハッ！馬鹿にしないでよ。こちとら【依頼】じゃなきゃ【陰獣】がどうなろうと関係ないんだよ！！」
「【依頼】……ねぇ」
マチは不信感タップリの目でナマエを見つめている。
そんな視線を物ともせず、ナマエはフェイタンに捕らわれている梟を見据えた。
「で、競売品は何処なの？」
「言えるかよ！！」