（とりあえずはジンに連絡だよね……）
そう思い立つや否や、ナマエは携帯を片手にソファーへと沈み込む。数十秒ほど携帯を睨んでいたナマエだが、意を決してジンへと電話した。
数コールもしない内に、ジンはすぐに電話に出た。
「もしもし、ジン？」
『おー、ナマエか。どうした？』
「とりあえず、この前の依頼は無事完了したから」
『マジか？依頼人喜ぶぞ～！』
「喜んで貰えるなら、ハンター冥利に尽きるよ」
クスクス笑いながらジンと会話する。ジンとの会話は緊張感が無く、和めるのだ。
そこにイルミがバングル片手に戻ってきた。
「ただいま……って、電話中？」
イルミの問い掛けに頷くだけのナマエ。
『今、男の声で『ただいま』って聞こえたぞ？！』
「気のせいじゃない？」
『いーや、気のせいじゃない！！絶対に側に男がいるだろ！？』
視線を彷徨わせていると、イルミと目が合った。イルミは【念文字】で『誰？』と書いて見せ、それに対して『ジン』とだけ返した。
電話の向こうでは尚もジンがギャースカ叫んでいる。
『携帯貸して』というイルミの【念文字】に、『駄目』と返事をするとイルミに無理矢理携帯を奪われた。
「ちょっ！イルミ！？？」
「もしもし」
『お前誰だ？！』
電話口からジンの叫び声が聞こえる。
「イルミ＝ゾルディックって言えば判るんじゃないの？」
『お前か！？ナマエを誑かしたのは！！』
「誑かしてない。口説いただけ」
『どっちも同じだ！！いーからナマエに代われ！！！』
『代われって言われちゃった』とシュンとしながら携帯をナマエに返すイルミ。
「もしもし、ジン。怒鳴らないで」
『お前、まだ別れてなかったのか？！もしかして……もう結婚したとか言わないよな？？』
「それはないから落ち着いて。とにかく、イルミ連れて依頼品持って行くから。場所教えて」
子供を宥める様にジンに言い聞かせ、ナマエは場所を確認した。
ジンがいる場所はパドキアから飛行船で1週間、高速船を使えば3～4日程の場所にある。
「イルミ、ジンに会えるよ。良かったね」
嫌味雑じりにそう言うと、イルミは柔らかな笑みで『有難う』と返してくれた。