「【ごっこ遊び】……か」
ナマエの走り去っていった方を見つめ、イルミは呟いた。
「オレは本気なのにな」

イルミと別れて走る事十数分。ナマエの目の前には、ゴンのいる病院が見えてきていた。
「やっと……着いた……！」
肩で息をしながら、ナマエは病院の前で立ち止まった。
「「「ナマエ！？」」」
「間に……合った？」
「え？」
「キルアは……間に合ったの？！」
「ああ……ついさっき、病院内へ入って行った。」
「良かったぁ……」
呟きながら、ナマエはその場にへたり込んだ。
ナマエが到着した数分後、病院内から巨大なオーラが発せられた。
「これで……終わりじゃない……」
「え？」
ナマエの呟きに気付いたビスケは、何の事なのか確認しようとしていた。
しかし、病院内から出てきたゴンに気づき、そちらに気を取られてしまった。
「ゴン？！」
「良かった……ちゃんと間に合った」
安心して頬を緩ませるナマエを見て、ゴンは駆け寄ってきた。
「ナマエさん！？」
「ゴン！良かった、無事で！！」
駆け寄ってきたゴンを抱き止め、ナマエはその頭を優しく撫でた。
「レオリオがハンター協会の本部で待ってるよ！早く行ってあげな」
「レオリオが！？」
「うん」
微笑んだナマエを見て、ゴンはハンター協会本部へ向かって走りだしていた。
「ゴン！」
ナマエの呼び掛けに、ゴンは振り向いた。
「自分のやりたい事！忘れたら駄目だからね！！」
「うん！またね！！ナマエさん！！！」
元気に駆け出すゴンを見て、ナマエは病院を見た。
「ここからが本番――なのかな……」
「やっぱりここにいたんだ」
「イルミ……」
「何？」
ナマエは近づいて来たイルミの顔を認識すると、そのままイルミの頬を引っ叩いた。
「何で？」
「理由……解らないの？」
「うん」
「そう……それは残念だね」
「残念？何が？」
ナマエの言葉の真意が解らないイルミは、その瞳を細めてナマエを見つめていた。
「イルミとは解り合えない――これ以上一緒にいても良い事無いって言ってるんだよ」
「オレにとっては意味はあるよ」
イルミは引っ叩かれた頬を押さえることなく、ナマエを見据えていた。
「ナマエはオレにとって、意味のある存在なんだ」
「私には、もうイルミといる意味がない。一方通行の【擬似恋愛】は懲り懲りだよ……」
「【疑似恋愛】だったの？」
ナマエの言葉に、イルミは眉を動かした。
「私はイルミを【理解】しようとした。でも！イルミの事、【理解】出来ないよ……何で【弟】をモノみたいに扱えるの？ねぇ！？」
「何度も言ってるけど、【アレ】は【家族】じゃない」
「アルカだって、血の繋がった【家族】でしょ！？」
「違うね」
「違わない」
「ナマエに何と思われようと、オレ達は【アレ】を【家族】とは思ってない」
「……残念だったね――最後のチャンスだったのに」
「？」
ナマエの言葉の意味が解らず、イルミはその表情から真意を読み取ろうとした。
しかし、ナマエの表情から読み取れるのは【絶望】と【拒絶】の2つのみ。
「ナマエ」
「何？」
「何で……そんな顔をしているの？」
「【貴方】に幻滅したから――かな」
心底残念そうに呟いたナマエは、突然【わが臈たし悪の華（デビルフラミンゴ）】を発動した。
「オレと……殺り合う気？」
「それは【貴方】次第」
そう言うと、ナマエはモデルガンを構えた。
「――行くよっ！！」

あの後、ナマエはイルミと【死合】をした。結果は分かりきっていた。【イルミには勝てない】と。
しかし、ナマエは【死合】をせずにはいられなかった。【怒り】を静める為に。